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 ある月夜のことだ。娘を後部座席に乗せて車を走らせていた。海沿いの134号線は街灯もなく、ヘッドライトだけが頼りだ。波飛沫が上がるたびに仄かな月明かりで蛍みたいに発光する海面。ミラー越しに覗くとその光の明滅を見つめている娘の横顔があった。その無言の横顔に子どもの頃、父親が運転する車にひとりで乗っていたときの記憶が込み上げてきた。