右の膝に小さな傷跡がある。子どもの頃にアスファルトで転んで、肉が盛り上がったまま完治した薄茶色の傷跡だ。子どもの頃は膝の五分の一くらいを占めていた。1歳の頃にガラス片で切って10針縫合した左頬の傷跡と同じく、身体の中で唯一成長しても大きさが変わらない部分だった。成長して身体が大きくなるに従って、傷跡は目立たなくなっていった。小学生の頃に嫌というほどからかわれた頬の縫合痕も小さくなって髪の毛で隠れているし、右膝の傷跡も、今では小さなホクロにしか見えない。傷跡が小さくなったんじゃない。ぼくが大きくなっただけだ。