所用で近くまで来た折、思い立って大和市まで足を伸ばしていた。18歳まで暮らした街だ。桜ヶ丘から国道467号線を上和田方面に向かった。平日の正午前。白い社用車やトラックで遅々として進まない国道を左に折れて曲がりくねった坂道を下っていく。通学路の表示の向こうに色褪せた校舎が見えた。大和市立上和田小学校。ぼくの母校だ。開校は昭和47年。薄橙色だった校舎も今は白く塗り替えられ、当時の面影は微塵もなかった。周囲に建っていた家々もひとつ残らず建て変わっていた。道がとても狭く感じられた。登校のたびに息が上がっていた坂道もあの頃よりずっと緩やかに感じた。坂を下り切ると団地群が見えてきた。公団住宅上和田団地。ぼくが18歳まで暮らしていたマンモス団地だ。子どもの頃はコンクリートの森のようだった団地が、2階建ての寂れたアパートみたいに小さく見窄らしく感じられた。団地を左手に見ながら再び国道に出る道を走る。ここでも道があの頃よりずっと狭く感じられた。子どもの頃コロッケを買い食いした精肉店も駄菓子や漫画を買った文房具店も通り沿いの店はどこもシャッターを降ろしていて、もはやどれがどの店だったか判別すらできなかった。
「寂寞の季節」
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