少し前の話だ。たまには洋服でもプレゼントしようかな、と娘に聞いたことがあった。いや、そうじゃないな。そうそう、ホワイトデーのお返しだった。
「キュロットが欲しい」
 娘は言った。キュロット。にんじんじゃない。それはキャロットだ。キュロットとはスカートのように見えるが、良く見たら半ズボンという、騙し絵みたいな衣類だ。いや、フランス語で半ズボンのことをキュロットと言うのだからやっぱり半ズボンなのだろう。男のぼくからすると正直よくわからないアイテムだが、フランス革命のとき男子貴族が着用していたものが発祥だというから男性のぼくが知らないというのもおかしな話なのかもしれない。という説明はさておき。
 本題はなぜ娘がキャロット、ではなくキュロットを欲しがったか、にある。彼女の通う保育園では原則としてスカートは禁じられている。