「一年に一度、かささぎさんが橋になって織り姫と彦星を会わせてあげるんだって」
 娘が暮れゆく空を見上げながら、保育園で聞いた七夕の伝説をそんな風に話してくれた。かささぎが橋になるなんて初めて聞いたような気がした。いや、子どもの頃に聞いたのかもしれないけど、とうの昔に忘れてしまったのかもしれない。なんせ、七夕伝説のディティールなんて目の前に広がっている現実とは何の関係もなかったから。