日に日に冷えてゆく海水が窓辺に冷気を連れてくる季節になった。夕闇迫る小径を足早に抜けて保育園に娘を迎えにいくだけで身体が芯まで冷える。凍えた身体を白い湯気が立つ湯船に浸ける。思わず「あーっ」という声が漏れる。娘がその声を聞くたびにケラケラと笑う。縮こまっていた血管が開き血の巡りがよくなるのがわかる。細胞の代謝に欠かせない酸素と栄養が隅々にまで行き渡るのが実感できる。額に汗が滲んで、老廃物が流れだしていく。
「しあわせって案外簡単に手に入るものなのかもしれない」
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