「大変!」

 妻が叫んだのは午後6時を少し回った頃のことだ。娘と妻は夕食の最中で、僕は同じ席に坐るのもままならないくらい脚本の執筆に追われていた。週末から放送が始まれば書き溜めて来た脚本が定期預金を切り崩したかのように毎週一本ずつ減っていく。恐怖だった。一本でも増やしておきたい。登場人物の誰よりも僕自身が追い詰められていた。