久し振りの畑だった。

 秋からの五ヶ月は正直娘に掛かりきりで、ほとんど畑に手が回っていなかった。ようやく時間を見つけて夏野菜の種採りと冬野菜のちょっとした収穫、そして春の畑の準備をすることにした。

 誰もいない里山の畑はいつもながら静けさに包まれ、頭上の空をゆっくりと漂う雲が切れるぷつんという音さえ耳に届く。菜の花の上を嬉しそうに飛び回る虫たち(ファーブル的に言えば忙しいのかもしれない)。周囲を囲む山の深い緑の間には桃色の春花が顔を覗かせている。