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第五話第二章 再会  

著:古樹佳夜
絵:花篠

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◆◆◆◆◆骨董闇市◆◆◆◆◆

吽野に案内されてやってきたのは大きな古い洋館だった。
町外れに建つそれは、近所の子供に『幽霊屋敷』と噂されるような場所だ。
モダンなアーチ窓に嵌っているガラスは割れ、
古い木の扉は塗装が剥げてボロボロだ。壁一面には蔦が這っている。
窓の内側は暗く、人の住んでいる気配はないようだった。
綺麗に手入れすれば立派であろうに……と阿文は心の中で思った。

阿文 「こんな場所で骨董市が開催されているのか?」
吽野 「そう。月一でね〜」
阿文 「個人の家のように見えるが」
吽野 「まあね。以前はある富豪が所有はしてたようだけど、ずいぶん前に亡くなってね。骨董闇市の主催者が仲が良くて、譲り受けたらしい。その人もここに住んでるわけじゃないから、手入れも最小限にしかしてないようだよ」
阿文 「なるほど。てっきり、公園とか、大きな通りで開催してるのかと……」
吽野 「普通の蚤の市と一緒にしない方がいい。なんせ、扱っている品には、『やばいブツ』もあるんだからね。日の下じゃとても扱えないよ」
阿文 「ミイラ以上のものもあるのか」
吽野 「ミイラなんて序の口だよ」

口元をニヤつかせた吽野とは対照的に、阿文は口をへの字に曲げた。

大きな鉄製の門を開け、中に入ろうとした時だった。
後ろで黒塗りのベンツが停まった。
中から現れた人物は毛皮を纏った太った婦人だった。
骨董闇市へ参加しようとしている客だろうか。

洋館の開け放たれた玄関の内側には、
黒い背広のガードマンがいる。
屈強な男を前にした吽野は一瞬立ち止まり、
後ろから来る太った婦人に順番を譲りがてら、阿文に耳打ちをした。

吽野 「阿文クン、連れてきた毛玉を懐に押し込んどいて」
阿文 「わかった」

阿文は強ばりながらも、吽野についていった。
吽野は着物の袂から会員証を取り出して、ガードマンに見せる。
ガードマンは頷き、目元を隠す仮面を二つ吽野に手渡した。

阿文 「仮面……? どうして」
吽野 「後で説明するよ。とりあえずこれ被っといて。じゃないと会場に入れないの」
阿文 「あ、ああ……」