著:古樹佳夜
絵:花篠
■『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 連載詳細について
https://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2060929
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レストラン龍宮の扉が
少し軋んだ音を立てながら開いた。
店主「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
思ったよりも低い位置から声がする。
吽野が下を向くと、
車椅子に乗った男の姿があった。
黒の給仕制服を着ている。
そして、膝には紺の膝掛けを乗せている。
店主「店主の夕凪(ゆうなぎ)と申します」
店主は両手を丁寧に膝の上で揃えて、恭しく一礼した。
つられて吽野と阿文も礼を返す。
店主「さあ、お寒いでしょう。お入りください」
夕凪と名乗った店主は、上品な笑みを浮かべ、
二人を屋内に招き入れた。
吽野「へー。趣のある建物だな」
阿文「綺麗だ」
天井を仰ぎ見、阿文は唸った。そこには、
美しいガラスがいくつも連なった照明があった。
阿文は足を止めて、棒立ちして眺めている。
店主「イギリスから取り寄せたシャンデリアです」
店主は首だけで振り向き、阿文に応じた。
阿文「シャンデリア……」
あんな豪奢なもの、不思議堂ではお目にかかったことがない。
吽野「阿文クン、あれが気に入ったの?」
阿文「いや……蜘蛛の糸に水滴がついているみたいだなと」
吽野「おや、文学的な表現だね」
店主「ふふ……」
吽野と阿文のやりとりに店主は笑った。
店主「さあ、お食事のお部屋は奥でございます」
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