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【将棋ウォーズ】電脳少女シロ・加藤一二三九段 戦 棋譜解説【初心者向け】

2019/03/30 15:47 投稿

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3月17日に生放送されたレオス・キャピタルワークス杯 第7期将棋ウォーズ棋神戦。
https://www.tv-asahi.co.jp/ch/contents/variety/0339/

番組中のエキシビションマッチとして、電脳少女シロ vs 加藤一二三九段の将棋ウォーズ対局が行なわれました。
twitter実況タグをさかのぼってみると将棋未経験の人も見ていたようで、いち将棋ファンとしてうれしく思います。
シロちゃんをきっかけに興味を持った初心者へ向けて、簡単な解説記事を書きました。
将棋を理解する一助になれば幸いです。

棋譜はこちらから見れます。
https://kif-pona.heroz.jp/games/Kato_Hifumi-SiroChannel-20190317_140844

開始日時:2019/03/17
持ち時間:10分
先手:Kato_Hifumi 十段
後手:SiroChannel 十段

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △3三角 ▲2五歩 △4四歩
▲4八銀 △4二飛 ▲6八玉 △6二玉 ▲7八玉 △7二玉
▲5六歩 △3二銀 ▲6八銀 △4三銀 ▲3六歩(1図) △4五歩(2図)
▲3三角不成△同 桂 ▲2四歩(3図) △同 歩 ▲同 飛 △2二歩
▲2三歩 △3一角 ▲2二歩成 △同 飛 ▲2三歩 △2一飛
▲2二角(4図) △3二銀 ▲1一角成 △2二飛 ▲同歩成 △4二角
▲3二と △同 金 ▲2一飛成(5図) △5四歩 ▲3二龍 △6二銀
▲4二龍 △5一金(6図) ▲同 龍 △同 銀 ▲3三馬(7図) △6二銀
▲4三馬 △7一飛 ▲5二金(8図) △8四歩 ▲6二金 △同 玉
▲4二飛(9図) △5二金 ▲同飛成
まで57手で先手の勝ち

・数の攻め 2四の戦い


まずは2四のマス目に注目。
このマスに利いている駒の数は、先手が「飛・歩」、後手が「角・歩」で「2対2」の互角。
将棋では普通、利いている駒の数が同じ場合先に踏み込んだ方が負けるので、拮抗状態となります。

しかし後手の△4五歩が悪手でした。
この歩を突くと、1図では封じられていた角の利きが通るようになります。
つまり相手の角を取れるということです。

すかさず▲3三角不成△同桂と角交換。(不成はただの操作ミス。普通は成る)
これにより2四のマスを守っていた後手の角が盤上から消え、「飛・歩」vs「歩」の「2対1」となりました。
よって▲2四歩の攻めが成立するという仕組みです。

将棋の基本原理は「数の攻め」です。
拮抗した状況を「守り駒を減らす」または「攻め駒を増やす」のどちらかの手段で打開するわけです。

・数の攻め 2二の戦い


ここからは2二のマス目に注目。
後手は2四のマスを突破されたものの、防衛ラインを下げればまだ持ちこたえることは可能です。

形勢不利を察した後手シロちゃんはここで「棋神」を使用。
「棋神」とはものすごく強い将棋AIが5手の間、プレイヤーに代わって指してくれるヒント機能です。
棋神は△3一角・△2二同飛~△2一飛と2二のマス目に駒を利かせて、ここを死守。
先手も負けじと「飛・歩・角」の全戦力を投入して突破を狙います。

棋神の効果が終わった4図からシロちゃんは△3二銀としましたが、ここは△3二金が正解でした。
銀と金の違いは2二に利くかどうか。
△3二銀だと▲1一角成△同飛と進んだ時に▲2二歩成(A図)がありますが、△3二金ならば▲1一角成△同飛(B図)の局面で、2二に利いている駒の数が「2対2」となるので、ぎりぎり受かっていました。

△3二金を逃した時点でほぼ勝負ありです。
本譜は操作ミス(△2二飛)により飛車をタダで取られてしまいましたが、大勢に影響はなかったでしょう。

・勝ちへの道筋 駒を取って戦力増強


ここからは先手が勝ち切るまでの手順となります。
実力が近いプレイヤー同士の場合、「有利」から「勝ち」までの間にも駆け引きの要素がありますが、シロちゃんと加藤九段ではさすがに大差。
5図から▲3二龍~▲4二龍と先手がどんどん駒得していきます。

将棋における守りの基本は「取られても取り返せるようにしておくこと」です。
例えば6図の△5一金は、▲同龍と取ると6二銀によって△同銀と取り返されます。
これを将棋用語では「紐をつける」と言います。
5図の3二金・4二角には紐がついていなかったので、先手にタダで取られてしまったわけです。

……と、解説しておきながら▲5一同龍と食いちぎりました。
▲1二龍などと一旦逃げてから仕切り直す手もありますが、後手玉の守り駒は残り2枚(金・銀)と少ないので、ここで一気に決めにいく手も成立します。
一種の上級テクニックです。

先手の持ち駒はかなり豊富になりました。
持ち駒はFPSにおける物資、格闘ゲームにおける必殺技ゲージのようなもの。
4図の▲2二角もそうでしたが、持ち駒があって初めて使える戦術というものが将棋では無数に出現します。
「勝利」という最終目標の前に「戦力増強」という中間目標が存在すると考えると、一局の流れがわかりやすくなるでしょう。

・勝ちへの道筋 持ち駒を使って総攻撃


馬を後手玉に近づけてから、満を持して持ち駒の金を投入。
「数の攻め」で後手玉最後の守り駒を突破しにいきます。
ここまで来ると特別な事をせず、単純に▲4四角や▲4二飛などと攻め駒を足していくだけでも押し切れます。

この飛車打ちで決着。
本譜は△5二金と合駒しましたが、攻め駒「飛・馬」vs 守り駒「玉」の「2対1」なので、受け切れません。
最後まで「数の攻め」の基本原則に忠実な攻めで、加藤一二三九段の勝利となりました。

・補足


ここからはやや上級者向けの補足。
4図から△3二金には▲1一角成よりも▲3一角成のほうが勝りますが、以下△3一同金▲2二角に△4二金(C図)という手があって受かっています。
守り駒を足すのではなく逆に遠ざけるという、基本から外れた綱渡りのような受けではあるものの、互角を保っているようです。
なお先手は手順中▲2二角に代えて▲3七桂とするほうが勝ります。


本局は2図の△4五歩が失敗でした。
代えて△8二玉~△7二銀のように、玉の囲いを進めて穏やかな展開にすれば互角の将棋でした。
この場合、加藤九段は間違いなく得意戦法である「棒銀」を使うので、十中八九D図のように進んだでしょう。
D図はこれからの勝負です。

また、本局では失敗したものの△4五歩と角交換を挑むタイプの棒銀対策も存在します。
ただしそれは△4三銀と上がらない3二銀型で行なうのが正しい。
▲3三角成を△同桂でなく△同銀と取り返せば、2四の利きを「2対2」で維持できます(E図)。

シロちゃんはD図、E図のどちらかを予習していたものと推測します。
これらの展開も見てみたかったですね。


今回使用したアプリ「将棋ウォーズ」にはハンディキャップ機能が無いため、ハンディ無しの「平手」となったものと思われますが、流石に平手では厳しかった……というより平手で加藤九段に勝つのは、それこそ同じプロ棋士でなければ不可能でしょう。
見た感じ「駒落ち」でハンディを付けるならば八~九枚落ちぐらいが適正だと思いました。

将棋ブームと言われるようになって久しいながらも、将棋界から将棋に詳しくない一般層へ向けてのアプローチはまだまだ手探り段階です。
今回のように新規層が多く触れるであろう企画は応援していきたく思います。


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