私たちはこの世に生を受けてから今の年齢になるまでに、親や教師、はたまた近所のオッサンや同級生などから、正しいことから間違ったことまで、様々なことを学んできました。しかし人生で最も必要なものはどこで学べるのでしょうか? 考えるまでもなく答えはそう、「ヘヴィメタル」からですよね。
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ウィー・ドンニーノー・エーデュケイショーン♪
歴史や人権、忍耐や哲学、宗教やセックスに至るまで、学校では教わらない知識の宝庫であるヘヴィ・メタル。中でも、これからご紹介する20曲は、いわば人生の教科書と言えるでしょう。
■歴史
イギリスのデスメタル・バンド、ボルト・スロワー(Bolt Thrower)による『The IVth Crusade』。1202年から始まった第4回東十字軍についての曲です。彼らはキリスト教国の東ローマ帝国を攻略し、コンスタンティノープル(現イスタンブル)を陥落させた際、略奪・殺戮の限りを尽くしたため、最も悪名の高い十字軍とも呼ばれています。
ジャケットはウジェーヌ・ドラクロワの作品で、ルーヴル美術館に収蔵されている名画。歴史だけでなく、美術のお勉強にも一役買っていますね。
■医学
「リヴァプールの残虐王・カーカスの『Foeticide』は「堕胎」という意味のタイトル(邦題は『堕児』)。産婦人科の分娩台に座った妊婦の胎内に器具を突っ込み、胎児を引っ張りだして電撃を与える様子が歌われています。
デス声でこの歌がコピーできれば、アナタも立派な助産婦さんになれることでしょう。
■人権
80年代のロック・シーンを語るなら、トゥイステッド・シスター抜きには語れません。この曲『We're Not Gonna Take It』では、「俺達は正しい、自由だ、だから戦う」と叫び、嫌なものにはNO! と突き返す勇気を与えてくれます。
ちなみに主演の少年は、ロックやメタルのカリスマMV監督として超有名人の、マーティ・カルナー監督の息子さん。七光りではなく、オーディションで唯一ウインドミル奏法が出来た子だったため採用されたのだとか。
■育児
スウェーディッシュ・ブラック・メタル、ヴァーテインの『The Child Must Die』。この曲では「炎の子供たちは自由になるために死ななければならない」と歌われています。
王権を継ぐ者の第一の子が新生児の時に、中東で崇拝された魔王モロクへの生贄として、燃やして捧げられたのが歌の由来となっているようです。古代のヨルダン東部に住んでいたアモン人達からは、豊作や利益を守る神として崇拝されていたという側面もありますが...少し解釈を変えてみると、既得権益の為に若者たちが犠牲になる現代社会を揶揄しているようにも捉えられます。
■自制心
大ベテランのデスメタルバンド、カニバル・コープスの『Addicted to Vaginal Skin』では、ヴードゥーの呪いによってゾンビになりつつある男が、衝動的に若い処女の首から肛門までをナイフで斬り裂き、女性器を食べる様子が歌われています。
物語の男はゾンビ化して自制が効かなくなっているのです。これは飽食の時代、どんなに締めのラーメンやガッツリと夜食を食べたくなっても、我慢しなければ人間性が保てなくなる、という警告であると解釈できます。何事もほどほどに節制しましょう。
■忍耐
フィンランドのメロディック・デスメタル・バンド、チルドレン・オブ・ボドムの『Are You Dead Yet?』は、「お前は作り話の中で目隠しをして生きている。暴露、自己嫌悪、お前は今回やり過ぎた」という復讐の歌です。
破壊衝動を抑えられなくなった人はこれを聴いて、少し心を落ち着ける忍耐力を身に付けましょう。
■倫理
ラム・オブ・ゴッドの『Now You've Got Something To Die For』は、「爆弾が人々を自由にする、金のなる木、終末の日を数える」といった歌詞の曲。
人類は欲のために戦争を起こし、そのために死ぬことも厭わない...というドツボにハマっていく醜い欲望について歌われています。そうならないための反面教師として、この曲を聴いて倫理観を養わなければいけません。
■哲学
伝説的グラインドコアバンド、ナパーム・デスの『You Suffer』は、たった1.316秒の曲にも関わらず、「お前は苦しむ、しかし何故だ?」という歌詞が歌われています。
ギネスブックに世界一短い曲として登録されており、テレビ番組『トリビアの泉』でも紹介されたことからも有名な曲です。ともあれ、そこに何を見出すのかは哲学の域。あまり考え込むと、何故苦しんでるの? と訊かれそう...。
■料理
モーターヘッドの代表曲の一つでもある『Eat the Rich』。「音楽は愛のための食材だ、キミは腹が減っているだろうか」と始まり、とにかく食いまくれ! とまくし立てます。
さらには、レストランで好きなモノを頼め、ハッシュブラウンやベーコン、シェットランド・ポニー(!?)にペパロニ追加で、あんたの娘さんも食っちまおうか? と貪欲に食事をする術を教えてくれる曲です。
■数学
ニュージャージー州出身のエクストリーム・ハードコア・バンド、デリンジャー・エスケイプ・プラン。街の書店で演奏された『43% Burnt』のライヴ映像ですが...
歌詞は「あの売女が俺を連れ戻す臭いがする、お前を馬から突き落としたい、全ては大丈夫だ、俺は自分にツバを吐く」という、あまり意味を成さない言葉の羅列。そうした言葉を計算した結果、43%の焼け焦げというタイトルになったのでしょう......か? 難しい数学です。
■宗教
メリーランド州出身のプログレッシブ・メタルバンド、ペリフェリーによる『Frak The Gods』。地上全ての命を一掃し、地球人が「家」と呼ぶその惑星を支配下に置く大いなる存在について歌われています。
人々はそれを「神」と呼ぶのかもしれませんね。ちなみに、筋肉少女帯の『僕の宗教へようこそ~Welcome to my religion~』も似たようなテーマの曲としてオススメです。
■不動心
ヘヴィメタルの始祖、ブラック・サバス8枚目のスタジオ・アルバム『Never Say Die』では、オジーさんが「死ぬなんて絶対に言うな」と強い調子で繰り返し訴えかけてきます。
人生の答えを探し、生きる理由を求めても何処へも行けない人間のもどかしさ。でも心配する必要はない、疑問に思う必要もないのだと語りかけてくるので、少しの事では揺るがない心が育つ曲です。
■恋愛
デトロイトで結成された、メロディック・デスメタルバンド、ザ・ブラック・ダリア・マーダーの『Deathmask Divine』は、愛する人の繰り抜いた目玉をホルムアルデヒド漬けにし、心臓を手に取り、血まみれの胸に顔を埋め、昆虫標本の如くベッドシーツに身体を貼り付け、アナタは永遠に私の物よ、と共に一夜を過ごす偏愛を歌っています。
ここまで愛してくれる人にはなかなか出逢えませんが、ここまで深い愛の形も在るのだということが学べる一曲です。
■セックス
ロサンゼルスのグラムメタルバンド、W.A.S.P.(ワスプ)のデビュー曲『Animal(Fuck Like A Beast)』は、出だしから「ハダカのオンナの写真をベッドに並べて、匂いを嗅いで引きつけを起こすぜ」と始まります。
「タダで人工の愛人を造り遠吠えをするのさ」と続き、「動物のようにファックするんだ」となります。途中からはちゃんと人間といたすようですが、「骨盤をグイグイと押し、汗はお前に刺さる」となり、まぁとにか激しくケモノのような交尾をするんだぜ、とワイルド・チャイルドっぷりをアピールするのです。もし、ここで子作りが上手く行ったら、上記の「育児」へ戻りましょう。
■業
RATT(ラット)の『Round And Round』では、路上で逢い引きし、一線を超えて充分に楽しむ男女の姿が歌われます。
ネオンが光る都会の出来事ですが、ふたりはまるで『ロミオとジュリエット』。この関係はカルマ...つまり「業」の成せるわざで、ふたりの因果や宿命、前世からの繋がりというものを説いてくれます。
■女権主義
ここはカタカナで「フェミニズム」と言った方が分かりやすいかもしれません。モトリー・クルーの代表曲のひとつ『Girls, Girls, Girls』は、男らしいハーレー・ダビッドソンを駆るメンバーがストリップ・バーに出かけるストーリーとなっています。
大きくなった悪ガキたちが、下半身から欲するセクシーな女性たちと、彼女たちにフラれてしまう姿が歌われる様子は、性を売り物にしてもオンナのハートは強いのよ、と訴えかけているような気がします。
■生物学
サンディエゴ出身のゴアグラインドバンド、Cattle Decapitation(キャトル・デキャピテイション)による『Forced Gender ReAssignment』のPVは、生きた人間を拷問し、内臓を引きずり出したり、肛門にドリルを突っ込んだりなどの残酷極まりないものなので、確かに生物学が習得できます。
歌詞もPVとほぼ同じで、男性を強制的に性転換させるといった内容。Cattle Decapitationは、主に動物虐待や環境破壊への反対を歌詞のテーマにしており、現/旧メンバー全員が菜食主義者とのことです。
■化学
メタルにはロマンティックなバラードが数多くありますが、中でもガンズ・アンド・ローゼスの『November Rain』は名曲中の名曲でしょう。
PVの冒頭ではアクセルが薬を飲み、深い眠りの中で幸せな結婚、そして新婦が11月の雨に打たれて他界してしまうという、突然襲う不幸の夢にうなされます。
危険ドラッグを摂取すると、そんな化学反応に見舞われることを教えてくれる貴重な映像でもあるのです。しかし、スーパーモデルのステファニー・シーモアさんの脚線美を見て、鼓動が早まってしまう現象こそが化学反応なのかもしれません。
■ブランディング
ビジネスをする上で欠かせないのが、ヴァン・ヘイレン。彼らの黄金時代は、抜群のカリスマ性を誇るダイアモンド・デイヴと、ライトハンド奏法でギター・ヒーローとなったエディーの二人が、2本の大黒柱となり、これぞアメリカのハード・ロックだ! と誰もが疑問に思うことがないほどに成長しました。
後にヴォーカルが交代してサミー・ヘイガーが加入。彼の功績により、スタジオ・アルバム4枚が「ビルボード 200」の1位に輝きます。当時流行ったドリル奏法と、サミーさんのアイディアで作られた『Poundcake』がこちら。セクシー姉ちゃんテンコ盛りなのもブランディングの一つと言えましょう。
1996年にはサミーが抜け、デイヴが戻るものの、『グレイテスト・ヒッツ』の新曲だけ録って一瞬で再び脱退。元エクストリームのゲイリー・シェローンさんがヴォーカルとして加入します。
ヴォーカルの代わった第3期ということで『Van Halen III』と名付けられたアルバムに収録された一曲が、『Fire in The Hole』です。これ以降ゲイリーが脱退し、デイヴが戻りと慌ただしいですが、フロントマンの変更がいかにブランドの命運を左右するのかを学べる良い例でしょう。
■リズム感
メタリカのドラマー、ラーズ・ウルリッヒさんが史上最低のドラマーだと言われる、ドイヒー映像がこちら。しかし、20年やってきた「METALLICA」の綴りすら間違う始末なので、もうこれは本気なのかジョークなのか...頭を抱えてしまいますね。
ともかく、これを反面教師として、リズム感をしっかり養う教訓としましょう、
ということで以上、「Metalsucks」で紹介されていたこれら20曲。私たちが今後の人生を過ごす上で、役に立つことばかりでした。
これらは何千、何万もあるメタルの楽曲のホンの一握りですが、専門的なことも学術的なことも、こんなに役立つ知識が得られるヘヴィメタルはやはり素晴らしい! 死ぬまでメタルを聴き続け、日々是精進してまいりましょう。
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Everything I Need to Know I Learned from Heavy Metal[Metalsucks]
(岡本玄介)
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