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その時映画が変わった。『ジュラシック・パーク』制作秘話

2014/06/15 21:30 投稿

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皆さんは、『ジュラシック・パーク』を初めて見たときの衝撃と感動を覚えていますか? 最近の若い人たちにとっては、CGIで作られた動物やクリーチャーが画面狭しと動き回り、人間同様に演技をするのは極当たり前で、何も驚く事ではないかもしれません。
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しかし、あの映画が出た1992年当時、恐竜映画と言えばマペットを使ったストップ・モーションやゴー・モーション、アニマトロニクスを使うのが主流で、CGIで作るなんて(一部の野心あふれるアーティストを除いて)映画関係者でさえ考えられないことでした。

そんな時代だったので、劇場で本当に生きているかのように滑らかに動く迫力満点の恐竜を目にした観客は、あんぐりと口を開けて呆然と成り行きを見つめるくらいしか出来ないほど驚いたのです。

しかも、驚いたのは観客だけではありませんでした。『ジュラシック・パーク』の関係者たちも、テスト映像を見た時には度肝を抜かれたのです。今日はSploidが取り上げた、後の映画を大きく変えるきっかけとなった『ジュラシック・パーク』のCGIテスト映像を紹介したいと思います。


『ジュラシック・パーク』の登場はセンセーショナルでした。人々はこぞって映画館に足を運び、誰もが、本当に生きているかのように動く恐竜を作り出した技術に興味津々でした。

ストップモーション・アニメーターであり特殊効果スタッフのフィル・ティペットは、自分たちの時代が終わったと悟り、特殊メイクやスペシャルエフェクトで有名なスタン・ウィンストンは、技術がアニマトロニクスを侵害する瞬間を目の当たりにしました。『ジュラシック・パーク』は、誰の目にも、明らかに新たなる映画の幕開けを感じさせたのです。

『ジュラシック・パーク』よりも前に制作された『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』や『アビス』、『ターミネーター2』でもCGIは使用されていましたが、それはあくまでも部分的なものでした。CGIの可能性は認められていたものの、それがメインになる日はまだ先だと考えられていたのです。


ストップモーションとアニマトロニクス

当初はCGIを使う予定はありませんでした。


なので、スティーブン・スピルバーグ監督が『ジュラシック・パーク』のメガホンを取る事が決定した時も、恐竜はCGIではなく、従来のやり方通りストップモーションとゴー・モーション、そしてアニマトロニクスで撮影するつもりでした。

しかし、ILMのCGIアニメーターであるスティーブ・スパッツ・ウィリアムス、デニス・ミューレン、マーク・ディッペ、そしてステファン・ファングマイヤーの4人は、人形を動かしては撮影、また動かしては撮影...を延々と繰り返さなくてはならないストップモーションよりも、CGIの可能性に賭けるべきだと考えていました。

そこで、CGIの恐竜を提案してみたのですが、冷たく却下されてしまったのです。それもそのはず、フィル・ティペットのストップ・モーションや、スタン・ウィンストンのアニマトロニクスが作り出す生を感じさせる恐竜を、コンピューターグラフィックで作り出せる保証は無く、また当時そんなことが出来るとは誰も考えもしなかったのです。

ここで諦める4人ではありません。「ここでやらなければ男が廃る」と鼻息を荒くし、既にストップ・モーションの撮影は始まっていたにも関わらず、密かに恐竜の骨のアニメーションを作り始めたのです。


恐竜の骨が動く動画

骨アニメーション


まず、彼らは骨が動くアニメーション動画を作りました。そして遂に、1991年11月のある月曜日、スティーブ・スパッツ・ウィリアムスは、プロデューサーのキャスリーン・ケネディらに、その動画を披露したのです。

ケネディは当時を振り返って、滑らかに動く骨に目を見張り、CGIの持つ可能性の高さに衝撃を受けたと語っています。また、「この技術を使えば、ストップ・モーションで撮影するよりも、遥かに多くの事を再現できるようになると感じた」とも話しています。これをきっかけに、ウィリアムズら4人は新たな挑戦に立ち向かうこととなりました。

それが、リアルな皮膚が付いた恐竜の再現でした。皮膚が完成した暁には、固定したカメラで恐竜の全体を入れるような難しいショットをCGIで再現すべきだと意気込みを見せ、数週間の悪戦苦闘の後、本物と見まごうくらいリアルな恐竜の皮膚を完成させたのです。


恐竜のスキンテスト

この先の映画が変わった瞬間


デニス・ミューレンが持ち込んだ「Dinosaur Skin Test」と名付けられた恐竜が歩く動画を見せられたケネディやスタン・ウィンストン、その他のメンバーは、自分たちが目にしている映像が信じられず思わず身を乗り出しました。ウィンストンに至っては、映像を見るや否や部屋を飛び出し30分ほど戻って来なかったと言います。

この映像をきっかけに、『ジュラシック・パーク』はストップ・モーションではなく、CGIの恐竜が起用されることとなりました。CGIを使うショット数は当初の予定よりも増え、ラストも、2匹のラプトルがTレックスに襲いかかり、派手に返り討ちにあう様子を、クローズアップやパンダウン、全景で映す迫力満載のシーンに書き換えられました。それは、テスト映像を見る前なら考える事も出来ないような事だったのです。

後は皆さんもご存じの通りです。今や、人間は仮想現実に飛び込み、トラと一艘のボートで漂流し、至近距離の竜巻に追われます。あの『ジュラシック・パーク』のテスト映像がきっかけで映画界をここまで変えたのです。


[via Sploid

中川真知子

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