フリーランスのアメコミアーティスト、ディーン・トリップさんが自身の受けた性的虐待のトラウマ、「性的虐待は連鎖する」という被害者に対する偏見、そして常に彼のそばに居て支えてくれたヒーローついて描いたコミック『Something Terrible』が公開されました。
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6歳の時、父親が失踪し、さらに10代の青年に銃で脅され性的暴行(性的虐待)を受けたディーンさん。後に犯人は逮捕。ディーンさんは復学します。そしてある日、授業で見た映画版で、同じく幼少期にトラウマを持ちながらもヒーローになったバットマン誕生のストーリーを知り、「自分に起こったことが自分がどんな人物になるかを決めるのではなく、自分がどうなるかは自分で決めるんだ」ということに気付いたそうです。
しかし、彼が成長し、刑事ドラマで「被害者が加害者になる。性的虐待の連鎖は止まらない」というセリフが何度も出てくるのを見ているうちに、彼の心は再び破壊されてしまい、負の連鎖を止めるために、いつしか自殺を考えるように。
それでもコミックの世界が大好きなディーンさんは、大人になってコミック作家として活動を開始したのですが、自殺を考えることをやめられず、自分に息子が出来た時も「自分も性的暴行をしてしまうのではないか」という恐怖に駆られ、最愛の息子を風呂に入れてあげることさえも出来ないほどでした。
数年前に、バットマンが(ドクター・フーのターディスに乗って)6歳の頃の自分を助けにきて、ヒーローの世界に連れて行ってくれるというイラストを描いていたディーンさん。
そして、彼はその日にWikipediaで「性的虐待の被害者のほとんどは加害者にはならず、加害者の大半は被害者ではない」という研究結果が発表されいるという事を知り、遂に子供の頃から頭に突きつけ続けてきた自殺願望を下ろすことができるように。銃を使うことを嫌うバットマンが「銃は無しだ」というセリフが涙を誘います。
こうしてコミックを書き上げたディーンさん。彼はハフィントン・ポストに寄稿した記事の中でこのように語っています。
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「(大人になった性的虐待の被害者に対し)あなたの中にあるものは『恐ろしいなにか(something terrible)』ではないということを伝えるためにこのコミックを描いた」
「僕の母の名前はサラ・トリップ。彼女は自分が会ったことのある中で一番強い人だ。そして私の義理の父、チャールトン・トリップは常に私を支えて信じてくれた。僕の人生を救ってくれた本当のヒーローは僕の両親。バットマンは、子供に理解させるための良い方法だったんだ。(中略)そして、バットマンをコミックを通じて自分たちの世界に連れてくることで、僕は自分自身のストーリーを大きく変えたんだ」
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先日のお話と同様に、コミックの中のヒーローの持つ力と、現実の世界にいる本当のヒーローの力を感じさせられるお話でした。
ちなみに、今回ご紹介したのは『Something Terrible』の要約版。完全版(電子書籍)はこちらのページで99セントで販売中です。
It's Hard To Speak About These Things In Public. So He Drew This Instead.[Upworthy]
It Wasn't Escapism. I Was Rescued.[Huffington Post]
Something Terrible[Dean Trippe]
(傭兵ペンギン)
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