もしも自分で作れたら、ゾンビにならず生き延びられるかもしれません。
アオカビの培養液から生まれ、1929年に偶然イギリスの細菌学者アレクサンダー・フレミング氏によって見つかった、世界初の抗生物質ペニシリン。
ウィキペディアによると、これは「20世紀における偉大な発見」のひとつとして数えられ、第二次世界大戦中に多くの負傷兵や戦傷者を感染症から救いました。今の医療現場はペニシリン無しではここまで発展しなかったんじゃないか? というくらい大事な物質であると言えましょう。
一方、ペニシリンはアオカビから生成されるくらいなので、皆さんの台所でも作れてしまう...という身近な存在(?)だったりするんです。ウッカリ数日間冷蔵庫に仕舞わずにいた食パンや、食べごろを過ぎたオレンジなどなど、カビ菌に冒された食品からどうやってペニシリンを作るのか、「io9」が紹介しています。
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ついついカビさせてしまった食べ物は、実は同時にペニシリンも生成しているというコトになります。フレミング先生が見つけた時は、ブドウ球菌の培養実験中に、偶然にも混ざってしまったアオカビの周りのバクテリアが死滅していった、というアクシデントからペニシリンが見つかりました。
というよりも、失敗だと思ってカビが生えるまで放ったらかしにしておいたバクテリアが、知らず知らずのうちにペニシリンを生成しており、汚かったはずのプレートはいつの間にか抗菌されていったというからフレミングさん...超ラッキーでしたね。
しかし、それから10年ほど、H.W.フローリー氏とE.B.チェイン氏によって、菌の培養及びペニシリンの抽出法が確立されるまで、フレミング氏の発見は埋もれたままになっていたのはまた別のお話。
さぁ歴史を学んだところでここからが本題です。ペニシリンはどのように作れば良いのでしょうか?
1929年、フレミング氏の皿で生えたアオカビは、実際ちょっと珍しいタイプのモノで、カンタロープ・メロンに発生したカビだったそうです。歴史をなぞりたいマニアな方は、少々お高くてもメロンをお手元にご用意ください。お手軽派の方々は、柑橘類の皮かパンの切れっ端でもOKです。
カビが発生しなければ話にならないので...イキナリですがしばらくの間、放置プレイ。せっかくなので、徐々にカビて行く過程を存分に観察してみましょう。
グレーっぽい色になってきても、青緑色になるまでまだまだそっとしておきます。そして鮮やかな色合いなってきたら、その食品を細かく切り刻み、殺菌したフラスコに移します。もしも殺菌されていない場合は、摂氏157度のオーブンに1時間突っ込んでおきましょう。そうしたら、摂氏21度ほどの環境で70日間に渡り培養します。
もし、もっと本格的に探求したい方々は、もう少し材料が必要です。それは、500mlの冷水に、44.0グラムのラクトース一水和物、25.0グラムのコーンスターチ、3.0グラムの硝酸ナトリウム、0.25グラムの硫酸マグネシウム、0.50グラムのリン酸二水素カリウム、2.75グラムのD‐グルコース、0.044グラムの硫酸亜鉛、同じく0.044グラムの硫酸マンガンを加えたもの。
さらにそこへ、全部で1リットルになるまで冷水を足します。次に塩酸を使用し、pH値を5.0から5.5になるよう調整します。今度はそれにカビた食品から胞子を加えて、7日間ほど培養すると、上の方にペニシリンが浮遊してきます。これを簡単に濾過して、それこそがペニシリンとなるのです。
とまぁ、理論上はこのように作られるのですが...やはり素人が自家培養したペニシリンを使用するのは、危険極まりない行為だったりします。
アオカビのみが発生していれば良いのですが、そうでないカビも一緒に生えてくる可能性も高く、そういった他のカビは人間にとって毒性の高いモノだったりするのです。
そもそも技術と経験、それに無菌状態で操作が行えるような環境と機材が必要で、精製後もどうやって保存するのかも考えると、やはりちゃんとした環境が揃っていないと成功は難しいのです。
まずは生化学や微生物学などを身につけ、機材の使い方もマスターできていれば、万が一この世が感染者だらけになった時に、自分と連れの女の子だけは助かるかもしれません。そう、いつものショッピング・モールではなく大病院に逃げ込められたら、ですけどね。
トップ画像:Wikipedia
[Via How to Do Things、University of Oxford. via io9]
(岡本玄介)
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