私が公開・配布しているMMDモーションに関して、モーションの利用規約に反した使用をしていた動画に対し、著作者人格権に基づく権利侵害として削除申請を先日行いました。
利用規約違反に頭を痛めているクリエイターの方々の参考になればと思い、このことに関するものをブロマガにまとめてみます。
今回は、私が実際にニコ動に権利侵害の申立を行った経験から、申請に必要なこと、重要なことと思うものを書いていきます。
予めお断りしておくと、運営からは「申立の際に、どのような資料や情報が必要か」や「申立が通った場合に、どのような判断がなされたか」などは一切教えてはくれません。ですので、ここに書くことが「正解」であるとは限りません。また、いかなる場合のものでも同じように申立が通る保証はありません。あくまでも参考としてお読みください。
ニコ動に関して言えば、動画通報フォームに次のような文章が表示されます。

著作権に基づく権利侵害は権利者しか申請ができませんので、それが証明できないと「なりすまし」などと見なされる可能性があります。また、権利や侵害状況がきちんと説明できないと「見当違い」や「いいがかり」のように捉えられることもあるのでしょう。
正当な権利者であり、権利や侵害状況が間違いのないものであっても、それがしっかり証明できなければ申立は通りませんし、場合によっては申請者自身が不利益を被ることにもなりかねません。
まずは「どのような形式のものになるか」を書きます。
申立の流れとしては、動画の一番下にある「動画通報」のリンクから通報フォームに行きます。(他のサイトであれば同様に動画通報であったり、サイト全体の問い合わせフォームを使います。)
フォームに必要事項を入力して運営や担当に送信します。その後、フォームの情報だけでは判断や確認ができない場合など運営・担当から必要があればメールで問い合わせがあり、追加で必要な資料や情報を提示します。
※フォームだけで一発通過ということは、初めての申立であればまずないと思います。
このようにフォームやメールでのやり取りとなるので、形式としては主に
画像や動画は、モデルやモーションの権利侵害の状況を説明するにはわかりやすい方法と思われますが、これらは補助的なものとして、文章をメインに考えた方がよいと私は考えています。その理由は主に2つあります。
1つ目は、最初に利用する通報フォームが基本的には文字でのみの対応となるからです。
サイトによっては添付ファイルをフォームから送付できるものもありますし、後からメールで画像や動画を添付することで情報を補足することもできます。ですが、最初のフォームの中である程度具体的な説明ができていれば、後の手続きがスムーズになると思われます。
また、添付できるファイルの容量に制限がある場合もあります。一応これを回避する手段もありますが、画像や動画に頼り切ってしまうと、資料提示ができずに結局申立自体ができないというケースも考えられます。
2つ目は、言葉である程度説明できないと、説得力が弱くなる可能性が考えられます。
比較ができるような画像や動画を作ったとして、申立者が
「見てわかるように、私のデータが使われています!」
と力説しても、運営や担当から
「『見てわかる』と言われてもねぇ…」
「よく似ているけど、あなたのものという根拠は?」
「他の誰かが作ったものの可能性もありますよね。」
などと言われてしまっては、何も伝わっていないのと同じです。
「画像や動画を使わずに説明しなさい」ということではありません。運営や担当は皆がMMDや動画に精通しているとは限りません。例えばMMDを全く知らない人にも伝わるように、画像や動画の「どこをどう見れば」を説明し、権利侵害の状況を理解してもらわないと、その先には続かないと思います。
モデルでもモーションでも、作った本人だからこそ可能な説明ができれば説得力があります。
こういったことから、最初のフォームで送信する文章で理路整然と説明ができていることが理想かと思います。起承転結ではないですが、
「私はこのモデルの著作者です」
「利用規約で○○と定めています」
「この動画では△△といった使われ方をされています」
「これは利用規約の○○に反しており、@@権を侵害されています」
というように、冷静に順序立てて説明することがポイントになるかと思います。
そして、その後のメール問い合わせに対して、追加の情報や資料(画像や動画)を送ればよいです。
「アニメキャラのモデル化」や「踊ってみたのトレース」となると、キャラや振付けにそれぞれ著作者が存在します。モデルやモーションが完全にオリジナルではなく二次創作であれば、申立ができるのは「データ」としての部分のみとなります。
オリジナルであれば、より広い範囲で主張できるでしょう。
また、権利主張するデータが改変したものであれば、改変元のデータの著作者が存在し、改変後のデータは「著作物」ではないと判断されることもあります。権利主張や申立は、改変者ではなく改変元の作者でないとできない可能性があります。
ざっくり言えば「データを自分が『1』から作ったもの」でないと「著作物」の条件は満たせません。
※法的にはもっと厳密だと思いますが、各サイトの運営や担当から見ればそこが最低限の条件かと思います。
そういう点を踏まえて
「私は○○のMMDモデルを制作し、データを公開・配布しています。」
「私は△△さんの踊ってみた『@@』の振付けをモーショントレースし、データを公開しています。」
と切り出すことになります。
そして、自分が「正当な権利者」であること、つまり「著作者」であることを証明する情報を示します。次のようなものを提示するのがわかりやすいでしょう。
例としては、次のようなもののスクリーンショット画像などが考えられます。
最初のフォームで全文を載せることができればそれでも構わないでしょうが、文字数の制限もありますし、まずは必要な部分の抜粋だけでもよいと思います。運営や担当から後日情報提示の求めがあれば、データに同梱しているreadme.txtなどを添付したり、ブロマガなどweb上で掲載している場合はそのURLを伝えればよいでしょう。
それと、「どのような権利を侵害されたか」という判断が重要になってきます。
前回までのブロマガで、著作財産権と著作者人格権について書いてきました。まず大きく分けて、この2つのどちらが侵害されているのか、ということになります。
ニコ動の場合は、通報フォームで「侵害された権利の情報」を入力していく中で「権利の内容」を選択肢の中から選ぶことになります。ここで「著作権」(=著作財産権)と「著作者人格権」で分かれることになります。その後の「侵害の状況等」での説明内容と「権利の内容」の選択肢が一致しないと、申立が正当ではないと判断される可能性があります。
さらに細かいところで、複製権、翻案権、同一性保持権、名誉声望保持権など、どの権利(複数になる場合もある)が侵害されているのかについて、「侵害の状況等」について触れていくことになります。
ニコ動の場合で説明しましたが、他のサイトでも似たような手続きになると思います。
「そこで使われているのは間違いなく自分の『著作物(MMDデータ)』である」
という証明をしなければなりません。
もしそれが
「自分の○○式モデルだと思ったら、実は△△式モデルが使われていた。」
「自分のモーションだと思ったら、投稿者自身の自作モーションだった。」
となると「正当な権利行使」ではなくなってしまいます。
また、自分のモデルやモーションが間違いなく使われている場合でも、それが運営や担当に理解できなければ、侵害されているという判断や確認ができません。
次のような場合は確実だと思います。
※利用者(投稿者)が勘違いで、別データを利用していたのに登録しているような場合もありますが。
ただ、このようなケースは少ないと思います。特にエロ動画などはクレジットやコンテンツツリーは一切スルーすることが多いでしょう。
そうなると、申請者自身が資料を提示して説明する必要があります。
画像であれば添付ファイルの容量内に収まると思います。もし動画を提示したいのであれば、クラウドストレージなどに動画を置いておき(パスワードを設定するなどして限定公開が望ましい)、そこへのリンクをメールで伝える方法もあります。
比較すると一言で言っても、これは実は難しい作業だと思います。
モデルでもモーションでも、それが「自分が作ったものである」「それを利用者が使っている」という証明なので、
例えばモデルでは、初音ミクのようなVOCALOIDなどのモデルならば「○○式」「△△式」という括りで特徴があって、それで見分ける方法もなくはないと思います。ですが、MMDerならそれでわかるでしょうが、素人には何が違うかわかりません。アニメやゲームのキャラともなれば、「○○式」「△△式」といっても初音ミク以上に見分けがつかないことがほとんどだと思います。
モーションであればなおさらでしょう。
また、運営や担当からすれば
「そのモデルやモーションは、他の誰かが作って公開している別物ではないのか」
「通報された動画の投稿者自身が自作した未公開のモデルやモーションではないのか」
といったことまで想定して判断や確認をしていると思われます。
そのため「自分のものが使われている」ことが間違いないとしても、申請者自身が「このキャラは自分しか作っていない」「この振付けは自分のもの以外は見たことがない」というだけで、「自分のものが使われている」と言い切ってしまうのは危険です。
そのようなことから「自分のデータの特徴」を明確にすることが重要になります。
そして、画像や動画で比較しようとすると、動画であれば動きがあり、カメラによって視点が変わり、時にはエフェクトで色調などが変わり、モーションであればモデルによって動きの変化が生じたり、そのような中で運営・担当に分かるように伝えないといけません。
そうして
「改変されたモデルですが、私のモデルの特徴がこの部分に残っています」
「ここの動きは私のモーションの特徴であり、この動画でも確認することができます」
などと証明していきます。
このように、画像や動画で比較して伝えることは、簡単なようであって実は難しいものを含んでいると思います。そこで、先に書いたように「文章で説明できる」ということが大切になってくるのです。
作った者だからこそ分かること、知っていること(それは時として「細かすぎて伝わらない」というもの)を表現し伝えることになります。
例えば
少し具体的に書けば
その上で、どのような権利を侵害されているのかを訴えることになります。
ここまでいろいろと書いてきました。申立にはこれらが全て必要であるかというと、そうでもないかもしれません。決定的で確実な証拠があれば、そこに絞って簡潔明確に証明することもできるでしょう。
どの著作物について、どのように使われて、どのような権利を侵害されているか、それによって必要な資料や情報は変わってくると思いますし、私が書いたもの以外に適切な方法があるかもしれません。
冒頭にも書いたように、参考ということでお役に立てることができれば幸いです。
利用規約違反に頭を痛めているクリエイターの方々の参考になればと思い、このことに関するものをブロマガにまとめてみます。
今回は、私が実際にニコ動に権利侵害の申立を行った経験から、申請に必要なこと、重要なことと思うものを書いていきます。
予めお断りしておくと、運営からは「申立の際に、どのような資料や情報が必要か」や「申立が通った場合に、どのような判断がなされたか」などは一切教えてはくれません。ですので、ここに書くことが「正解」であるとは限りません。また、いかなる場合のものでも同じように申立が通る保証はありません。あくまでも参考としてお読みください。
■申立の際に証明すべきこと
権利侵害の申立をする際には、3つのことをきちんと証明することが重要になると思います。- 権利主張しているものが「著作物」であり、申請者が正当な権利者であるか
- どのような権利を主張するか
- 対象としているものがその権利を侵害しているか
ニコ動に関して言えば、動画通報フォームに次のような文章が表示されます。

著作権に基づく権利侵害は権利者しか申請ができませんので、それが証明できないと「なりすまし」などと見なされる可能性があります。また、権利や侵害状況がきちんと説明できないと「見当違い」や「いいがかり」のように捉えられることもあるのでしょう。
正当な権利者であり、権利や侵害状況が間違いのないものであっても、それがしっかり証明できなければ申立は通りませんし、場合によっては申請者自身が不利益を被ることにもなりかねません。
■どのように証明するか
申立をする資料や情報の「中身」についてはもう少し後で触れます。まずは「どのような形式のものになるか」を書きます。
申立の流れとしては、動画の一番下にある「動画通報」のリンクから通報フォームに行きます。(他のサイトであれば同様に動画通報であったり、サイト全体の問い合わせフォームを使います。)
フォームに必要事項を入力して運営や担当に送信します。その後、フォームの情報だけでは判断や確認ができない場合など運営・担当から必要があればメールで問い合わせがあり、追加で必要な資料や情報を提示します。
※フォームだけで一発通過ということは、初めての申立であればまずないと思います。
このようにフォームやメールでのやり取りとなるので、形式としては主に
- 文章
- 画像
- 動画
画像や動画は、モデルやモーションの権利侵害の状況を説明するにはわかりやすい方法と思われますが、これらは補助的なものとして、文章をメインに考えた方がよいと私は考えています。その理由は主に2つあります。
1つ目は、最初に利用する通報フォームが基本的には文字でのみの対応となるからです。
サイトによっては添付ファイルをフォームから送付できるものもありますし、後からメールで画像や動画を添付することで情報を補足することもできます。ですが、最初のフォームの中である程度具体的な説明ができていれば、後の手続きがスムーズになると思われます。
また、添付できるファイルの容量に制限がある場合もあります。一応これを回避する手段もありますが、画像や動画に頼り切ってしまうと、資料提示ができずに結局申立自体ができないというケースも考えられます。
2つ目は、言葉である程度説明できないと、説得力が弱くなる可能性が考えられます。
比較ができるような画像や動画を作ったとして、申立者が
「見てわかるように、私のデータが使われています!」
と力説しても、運営や担当から
「『見てわかる』と言われてもねぇ…」
「よく似ているけど、あなたのものという根拠は?」
「他の誰かが作ったものの可能性もありますよね。」
などと言われてしまっては、何も伝わっていないのと同じです。
「画像や動画を使わずに説明しなさい」ということではありません。運営や担当は皆がMMDや動画に精通しているとは限りません。例えばMMDを全く知らない人にも伝わるように、画像や動画の「どこをどう見れば」を説明し、権利侵害の状況を理解してもらわないと、その先には続かないと思います。
モデルでもモーションでも、作った本人だからこそ可能な説明ができれば説得力があります。
こういったことから、最初のフォームで送信する文章で理路整然と説明ができていることが理想かと思います。起承転結ではないですが、
「私はこのモデルの著作者です」
「利用規約で○○と定めています」
「この動画では△△といった使われ方をされています」
「これは利用規約の○○に反しており、@@権を侵害されています」
というように、冷静に順序立てて説明することがポイントになるかと思います。
そして、その後のメール問い合わせに対して、追加の情報や資料(画像や動画)を送ればよいです。
■どのような資料や情報を提示するか
最初に書いた「3つのこと」について、どのような資料や情報があるとよいかや注意点を書いていきます。1. 権利主張しているものが「著作物」であり、申請者が正当な権利者であるか
MMDデータの場合、まず「著作物」として主張するのは「データ」という点であることに気をつけてください。「アニメキャラのモデル化」や「踊ってみたのトレース」となると、キャラや振付けにそれぞれ著作者が存在します。モデルやモーションが完全にオリジナルではなく二次創作であれば、申立ができるのは「データ」としての部分のみとなります。
オリジナルであれば、より広い範囲で主張できるでしょう。
また、権利主張するデータが改変したものであれば、改変元のデータの著作者が存在し、改変後のデータは「著作物」ではないと判断されることもあります。権利主張や申立は、改変者ではなく改変元の作者でないとできない可能性があります。
ざっくり言えば「データを自分が『1』から作ったもの」でないと「著作物」の条件は満たせません。
※法的にはもっと厳密だと思いますが、各サイトの運営や担当から見ればそこが最低限の条件かと思います。
そういう点を踏まえて
「私は○○のMMDモデルを制作し、データを公開・配布しています。」
「私は△△さんの踊ってみた『@@』の振付けをモーショントレースし、データを公開しています。」
と切り出すことになります。
そして、自分が「正当な権利者」であること、つまり「著作者」であることを証明する情報を示します。次のようなものを提示するのがわかりやすいでしょう。
- データ配布のために最初に投稿した動画や静画のURL(または動画番号、静画番号など)
- 自分がデータ公開しているサイト(BowlRollなど)のURL
例としては、次のようなもののスクリーンショット画像などが考えられます。
- 動画投稿サイトやデータ公開先の投稿者管理画面
- モデルであれば、pmd/pmx化する前の3Dモデル(メタセコやBlenderなど)のファイル情報
- モーションであれば、配布用vmdの元となるpmmのファイル情報
原盤(3Dモデルやpmm)のファイル情報は、Windowsのエクスプローラーのものでも、プロパティでもよいと思います。できればファイルの「更新日時」がわかると、配布データの日時と原盤の日時の前後関係から著作者とわかる(原盤の方が古ければ、著作者でなければ持ち得ない)かと思います。
※データ公開後に上書き保存してしまうと使えない方法ですけど。
モデルならば、メタセコやBlenderなどでの表示をスクショで提示するのも資料になるかもしれません。また、Twitterなどで進捗を投稿していた人であれば、その投稿画像や日時がわかるスクショ(閲覧可能であればツイート自体のURL)を使う手もあるでしょう。
2. どのような権利を主張するか
まず権利を主張するのにわかりやすいのは- 利用規約
最初のフォームで全文を載せることができればそれでも構わないでしょうが、文字数の制限もありますし、まずは必要な部分の抜粋だけでもよいと思います。運営や担当から後日情報提示の求めがあれば、データに同梱しているreadme.txtなどを添付したり、ブロマガなどweb上で掲載している場合はそのURLを伝えればよいでしょう。
それと、「どのような権利を侵害されたか」という判断が重要になってきます。
前回までのブロマガで、著作財産権と著作者人格権について書いてきました。まず大きく分けて、この2つのどちらが侵害されているのか、ということになります。
ニコ動の場合は、通報フォームで「侵害された権利の情報」を入力していく中で「権利の内容」を選択肢の中から選ぶことになります。ここで「著作権」(=著作財産権)と「著作者人格権」で分かれることになります。その後の「侵害の状況等」での説明内容と「権利の内容」の選択肢が一致しないと、申立が正当ではないと判断される可能性があります。
さらに細かいところで、複製権、翻案権、同一性保持権、名誉声望保持権など、どの権利(複数になる場合もある)が侵害されているのかについて、「侵害の状況等」について触れていくことになります。
ニコ動の場合で説明しましたが、他のサイトでも似たような手続きになると思います。
これは個人的な考えになりますが、ニコ動などの動画投稿サイトでMMDデータの権利侵害を主張できるのは、基本的には「著作者人格権」だけになるように思います。
MMDデータにとっての「著作権(著作財産権)」の明確な侵害例としては、「データの無断転載」や「無断で改変して配布」というものかと思います。
一方で、ニコ動で投稿されているのは動画・静画・ニコニ立体になりますが、データそのものを扱うのはニコニ立体のみで、そこでモデルデータが無断で投稿されているような場合は明らかに「著作権」の侵害(複製権、譲渡権、翻案権)になります。
しかし動画や静画の場合は、データ公開がされていたとしてもニコ動以外の場所であることがほとんどであり、動画や静画が削除されても権利侵害の状況が解消するものではありません。データ公開そのものがされていない(動画や静画で使われただけ)のであればなおさらで、ニコ動などの運営からしてみれば
「『著作財産権』の侵害が発生している場所はウチではなく、配布サイトや配布者本人でしょ。」
という立場になるかも、と思うからです。
そのように考えると、動画や静画を対象とした場合は「著作者人格権」特に「名誉声望保持権」や「同一性保持権」で主張するケースが多いかも、と思います。
ただ、何でもこれに当てはめればよいとは思わないでください。
「『著作財産権』では主張できない」と言っているわけでもありません。
例えば「VRチャットのようなものでニコ生を配信する場合」に、モデルを使用したのが利用規約に抵触するというケースでは、「公衆送信権」や「翻案権」の侵害として見ることもできるかもしれません。
モデルの改変などについては前にも書いたように、権利侵害が「複製権」「翻案権」「同一性保持権」「著作者人格権」のどれになるのか(また、侵害された権利が単独なのか複数なのか)は、使われ方などにもよるのでケース・バイ・ケースになるでしょう。
何が侵害されているかは、申請者自身がよく考えて判断してみてください。
また、最終的な判断は各サイトの運営や担当によるものなので、ここに書いたものは私の一意見に過ぎないということはご承知おきください。
3. 対象としているものがその権利を侵害しているか
a) 「自分のデータが使われている」という証明
ここでまず大事なのは「そこで使われているのは間違いなく自分の『著作物(MMDデータ)』である」
という証明をしなければなりません。
もしそれが
「自分の○○式モデルだと思ったら、実は△△式モデルが使われていた。」
「自分のモーションだと思ったら、投稿者自身の自作モーションだった。」
となると「正当な権利行使」ではなくなってしまいます。
また、自分のモデルやモーションが間違いなく使われている場合でも、それが運営や担当に理解できなければ、侵害されているという判断や確認ができません。
次のような場合は確実だと思います。
- 「お借りしたもの」として動画説明文やクレジットに記載されている
- コンテンツツリーにモデルやモーションが親登録されている
※利用者(投稿者)が勘違いで、別データを利用していたのに登録しているような場合もありますが。
ただ、このようなケースは少ないと思います。特にエロ動画などはクレジットやコンテンツツリーは一切スルーすることが多いでしょう。
そうなると、申請者自身が資料を提示して説明する必要があります。
- 動画や静画を比較する
画像であれば添付ファイルの容量内に収まると思います。もし動画を提示したいのであれば、クラウドストレージなどに動画を置いておき(パスワードを設定するなどして限定公開が望ましい)、そこへのリンクをメールで伝える方法もあります。
比較すると一言で言っても、これは実は難しい作業だと思います。
モデルでもモーションでも、それが「自分が作ったものである」「それを利用者が使っている」という証明なので、
- 自分のデータの特徴
- 自分のデータと、相手が使っているデータの共通点
例えばモデルでは、初音ミクのようなVOCALOIDなどのモデルならば「○○式」「△△式」という括りで特徴があって、それで見分ける方法もなくはないと思います。ですが、MMDerならそれでわかるでしょうが、素人には何が違うかわかりません。アニメやゲームのキャラともなれば、「○○式」「△△式」といっても初音ミク以上に見分けがつかないことがほとんどだと思います。
モーションであればなおさらでしょう。
また、運営や担当からすれば
「そのモデルやモーションは、他の誰かが作って公開している別物ではないのか」
「通報された動画の投稿者自身が自作した未公開のモデルやモーションではないのか」
といったことまで想定して判断や確認をしていると思われます。
そのため「自分のものが使われている」ことが間違いないとしても、申請者自身が「このキャラは自分しか作っていない」「この振付けは自分のもの以外は見たことがない」というだけで、「自分のものが使われている」と言い切ってしまうのは危険です。
そのようなことから「自分のデータの特徴」を明確にすることが重要になります。
そして、画像や動画で比較しようとすると、動画であれば動きがあり、カメラによって視点が変わり、時にはエフェクトで色調などが変わり、モーションであればモデルによって動きの変化が生じたり、そのような中で運営・担当に分かるように伝えないといけません。
そうして
「改変されたモデルですが、私のモデルの特徴がこの部分に残っています」
「ここの動きは私のモーションの特徴であり、この動画でも確認することができます」
などと証明していきます。
このように、画像や動画で比較して伝えることは、簡単なようであって実は難しいものを含んでいると思います。そこで、先に書いたように「文章で説明できる」ということが大切になってくるのです。
作った者だからこそ分かること、知っていること(それは時として「細かすぎて伝わらない」というもの)を表現し伝えることになります。
b) どのように使われて権利侵害されているか
動画や静画の中での使われ方から、権利侵害の状況を説明します。例えば
- 動画であれば、対象となるのが再生時間全体なのか一部なのか
- 複数のモデルやモーションが登場するものであれば、どれが該当するのか
- どのような演出や表現がされているのか(権利侵害にあたる内容など)
少し具体的に書けば
- ○分○秒~△分△秒の部分で、@@モデルが踊っているのが私のモーションです。
- 登場するモデルのうち、○○の衣装を着ているのが私のモデルです。
- ○分○秒以降で衣装がなくなって全裸となり、性的な演出がされています。
- 下半身やスカートの中をアップする意図的なカメラワークでわいせつな表現がされている。
その上で、どのような権利を侵害されているのかを訴えることになります。
ここまでいろいろと書いてきました。申立にはこれらが全て必要であるかというと、そうでもないかもしれません。決定的で確実な証拠があれば、そこに絞って簡潔明確に証明することもできるでしょう。
どの著作物について、どのように使われて、どのような権利を侵害されているか、それによって必要な資料や情報は変わってくると思いますし、私が書いたもの以外に適切な方法があるかもしれません。
冒頭にも書いたように、参考ということでお役に立てることができれば幸いです。
-
MMDデータの利用規約と著作権について考えてみる (3)著作者人格権について
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コメント

No.3
(2021/03/01 08:10)
>>2
あー、たしかにダンスや振り付け自体に著作権を認められるなら、元ネタあるやつは完全オリジナルではないですね
見落としてました
そういえばマイケルジャクソンのゼロ・グラビティなんかは特許があると聞いた事がありますね
テレビでモノマネしてる人が言ってて「おいおい、それってモノマネが無許可なら堂々と”私は権利侵害してますよ”ってテレビで言ってる事になるじゃん・・・」と思った覚えがあります
許可を取ってあるなら別ですけど(テレビくらいになると包括契約とかありそうですし)、そうじゃないならテレビという公共の電波に携わる人達でさえその程度の意識という事になります
MMD界隈だけじゃなくて日本全体としてまだ無形物の権利への理解自体が進んでいないのかもしれませんね(私も含めて)
あとは二次... 全文表示
あー、たしかにダンスや振り付け自体に著作権を認められるなら、元ネタあるやつは完全オリジナルではないですね
見落としてました
そういえばマイケルジャクソンのゼロ・グラビティなんかは特許があると聞いた事がありますね
テレビでモノマネしてる人が言ってて「おいおい、それってモノマネが無許可なら堂々と”私は権利侵害してますよ”ってテレビで言ってる事になるじゃん・・・」と思った覚えがあります
許可を取ってあるなら別ですけど(テレビくらいになると包括契約とかありそうですし)、そうじゃないならテレビという公共の電波に携わる人達でさえその程度の意識という事になります
MMD界隈だけじゃなくて日本全体としてまだ無形物の権利への理解自体が進んでいないのかもしれませんね(私も含めて)
あとは二次... 全文表示

No.4
(2021/03/05 21:59)
>>3
振付けは楽曲と違って、権利関係が外から分かりづらいのが難しいところです。
今でこそPVやアニメEDに振付師のクレジットを見かけることもありますが、ほとんどは誰が振付師なのかわからないです(昔の楽曲やアニメは特に)。そして、JASRACのように権利を管理する組織があるわけでもなく、権利が振付師にあるままなのか、レーベル側などにあるのかもわかりません。なので許諾を取ろうにも取りづらいように思います。
かと言って、許諾が取れないから仕方ないと諦めて自由にしていいわけでもなく、相応の配慮や注意は必要でしょう。
振付けや楽曲に限らず、権利関係は本当に注意が必要です。日本の一次創作の権利者は「黙認(暗黙のうちに許可する)」ではなく「静観(成行きを静かに見守る)」しているのだと、私は思っています... 全文表示
振付けは楽曲と違って、権利関係が外から分かりづらいのが難しいところです。
今でこそPVやアニメEDに振付師のクレジットを見かけることもありますが、ほとんどは誰が振付師なのかわからないです(昔の楽曲やアニメは特に)。そして、JASRACのように権利を管理する組織があるわけでもなく、権利が振付師にあるままなのか、レーベル側などにあるのかもわかりません。なので許諾を取ろうにも取りづらいように思います。
かと言って、許諾が取れないから仕方ないと諦めて自由にしていいわけでもなく、相応の配慮や注意は必要でしょう。
振付けや楽曲に限らず、権利関係は本当に注意が必要です。日本の一次創作の権利者は「黙認(暗黙のうちに許可する)」ではなく「静観(成行きを静かに見守る)」しているのだと、私は思っています... 全文表示

No.5
(2021/03/08 08:04)
>黙認ではなく静観
的確な表現だと思います、長年どう言っていいか分からずもやもやしてたものがハッキリと言語化されてより認識が正しいものに近づいた気がします
どちらも表面上は同じに見えますからね、どうしても自分に都合よく解釈してしまいがちです
この言葉は二次創作する者全員が肝に銘じて活動するべきだと思います
的確な表現だと思います、長年どう言っていいか分からずもやもやしてたものがハッキリと言語化されてより認識が正しいものに近づいた気がします
どちらも表面上は同じに見えますからね、どうしても自分に都合よく解釈してしまいがちです
この言葉は二次創作する者全員が肝に銘じて活動するべきだと思います
コメントを書き込むにはログインしてください。
今回はオリジナルのモーションだった分まだわかりやすかったですが
版権モノのモデルなんかで利用規約違反とかだとややこしい部分や、モデラーの後ろめたい部分なんかで複雑になりそうですね
あまり著作権侵害を大きな声で主張すると「じゃああなたがモデリングしたキャラクターの大元の権利は?」となりますからね
一応権利侵害についてはそれぞれ個別に判断されるでしょうけど、大ごとになれば締め付けが強くなる事は十分に考えられますし
逆に言えばだからこそ「版権モノはオリジナルよりももっと慎重に規約を遵守して扱うべき」とも言えると思います
公式からのお目溢しを期待してひっそりとやって行くには無用のトラブル自体を避けるべきで、そういった認識が界隈全体に広がれば良いと願います