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MMDデータの利用規約と著作権について考えてみる  (3)著作者人格権について

2021/01/20 12:00 投稿

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私が公開・配布しているMMDモーションに関して、モーションの利用規約に反した使用をしていた動画に対し、著作者人格権に基づく権利侵害として削除申請を先日行いました。
利用規約違反に頭を痛めているクリエイターの方々の参考になればと思い、このことに関するものをブロマガにまとめてみます。
今回は「著作者人格権」について簡単に触れていきます。
なお、私は著作権や法律関係は素人です。私の考えや解釈が正しくない可能性もあるので、その点はご承知おきください。

■「著作者人格権」とは
前回のブロマガでは「著作財産権」について書きました。これと「著作者人格権」とでは、大きく2つの異なる点があります。
1つは
  • 著作財産権は、財産的な利益を保護するもの
  • 著作者人格権は、人格的な利益を保護するもの
です。この「人格的な利益」という各権利については後で説明します。
もう1つ、
  • 著作財産権は、著作権者が持つ。
  • 著作者人格権は、著作者が持つ。
という点が異なります。
著作者が著作財産権を保有し続ければ「著作者=著作権者」であるので、同じ人が著作財産権と著作者人格権を持つことになります。
著作財産権を第三者に譲渡した場合は、著作財産権はその第三者が持ちます。しかし、著作者人格権は第三者に譲渡できないもので、著作者のみが保有できる権利です。このような場合は、著作財産権と著作者人格権をそれぞれ別の者が持つという状況になります。

著作者人格権を構成する各権利について、文化庁のwebサイトでは次のように説明されています。



いずれも著作物に対する著作者の感情やこだわりといったもの(人格的な利益)を保護する権利です。

これらとは別に、
著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。(著作権法第113条11項)
※施行日: 令和三年一月一日(令和二年法律第四十八号による改正)

という「名誉声望保持権」もあります。
「著作者の名誉声望を害する利用は、『公表権』『氏名表示権』『同一性保持権』を侵害していなくても、著作者人格権を侵害する行為とみなす」という規定で、「みなし侵害」と呼ばれています。
※資料によっては、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」の3つを「著作者人格権」とするものと、「名誉声望保持権」を加えて4つを「著作者人格権」としているものがあって少しややこしいのですが、ここでは文化庁のwebサイトや【はじめての著作権法(著者:池村聡、日経文庫)】に準じて書いていきます。
■MMDデータで著作者人格権を考えてみる
著作者人格権の説明については、次の2つのサイトがわかりやすくまとめていると思いますので、リンクで紹介しておきます。
◆◆
「公表権」は、MMDデータの利用規約として関わる機会はあまりないと思います。基本的にはモデルでもモーションでも、著作者本人が公開しているので、自分の好きなタイミングで公表しています。
もし何か例を考えるならば、利用規約ではないですが
  • モデラーが、ある企画者(例えばVTuberや歌ってみたの人)から楽曲発表に合わせてモデル制作を依頼された。楽曲に共感してそのイメージでモデルを制作したモデラーは、楽曲発表に合わせてモデル公開を望んでいたが、企画者が完成したモデルを大変気に入って、楽曲発表前の自分の誕生日にモデルを公開した。
というケースを考えることができるかもしれません。
ただ条件や例外があります。一例として、もしモデル公表前に著作財産権を企画者に譲渡していると、著作権法第18条第2項に
 著作者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる行為について同意したものと推定する。
 その著作物でまだ公表されていないものの著作権を譲渡した場合 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示すること。
というものがあり、「著作権を譲渡した時点で、公表されることに同意したとみなされる」ということになります。
◆◆
「氏名公表権」は、著作物に対する著作者名の表示(表示するかしないか、実名かペンネームか)の権利で、二次的著作物に対しても氏名表示権は及びます。利用規約においてクレジット表記などを求めるものが該当するでしょう。
ただこれにも例外があり、著作権法第19条3項には
 著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。
とあります。
「公正な慣行」の例として挙げられるのは「店内で音楽をBGMとして流す」という利用で、そのような場合に「楽曲の著作者名を表示したりアナウンスする」ということは必要ない、ということです。(やっていたら「この店にはDJでもいるのか」と思ってしまいそう。)
MMDでは、モデルやモーションの作者を表記する慣習はあるでしょうが、法的な判断となると何とも言えません。ただ、トラブルを避けるためにも、利用者は敬意を払った対応を、著作者(データ配布者)はわかりやすい意思表示をしておいた方がよいと思います。
◆◆
「同一性保持権」は、かなり重要になると思います。
著作権法第20条でも
著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
と書かれてています。パロディや替え歌などが事例として取り上げられるものです。
モデルについては、モデル改造されたことやその内容が、元となるモデルの作者の「意に反した」ものであれば、同一性保持権が侵害されたと考えることができるでしょう。
私としては、モデルやモーションを改変された場合に「複製権」「翻案権」「同一性保持権」と後で書く「名誉声望保持権」のどれを侵害されたことになるのか、というのがなかなか整理がつきません。
Webで著作権法講座の中ではいくつかの事例を交えて説明がされているので、参考になるかと思います。
◆◆
「名誉声望保持権」は、著作権関連の書籍やwebでの解説で次のようなたとえ話や事例が見られます。
  • 芸術作品である裸体画を複製してヌード劇場の立て看板に使う
  • ベジタリアンの作曲家が自分の楽曲をステーキ店のCMに使われる
  • イラストが政治的・思想的企画に利用される
  • 小説がテレビドラマ化される際に、創作意図と異なる内容に脚本が改変される
このような利用が著作者の名誉や声望を害するとして、著作者人格権の侵害とみなされるというものです。
モデルやモーションの利用規約で、
  • エログロ禁止
  • 政治的、宗教的な利用の禁止
などといったものは、著作者にとって「このような利用はされたくない」という意思表示であり、利用をされた場合は著作者の人格的な利益が侵害されたと考えることができます。
◇◇
余談ですが、先にも書いたように「著作者人格権」は著作者のみに認められた権利です。著作者が死亡した場合は遺族などにも相続されないと考えられていますが、著作者の死後も著作者の人格的利益は保護されており、著作者人格権の侵害は禁止されています。また、遺族が侵害者に差止請求ができるとされています(「差止請求権」が遺族に認められている)。
永久不変とも言える権利ではありますが、ビジネスのような場で契約書が交わされる時に「著作者人格権の不行使特約」という規定をクライアントからクリエイターに求める場合があるようです。
最近はモデラーにモデル制作を依頼する案件が多いようですし、ビジネス化してくるとこのような契約書を交わされることもあるのでしょう。
なお、このような場合でも「名誉声望保持権」については、「著作権法としては不行使特約が有効になるが、民法の規定では損害賠償請求が可能である」という解説もありました。


■ニコ動に申し立ててみた
今回私がニコ動に対して権利侵害を申し立てたのは、「名誉声望保持権」に基づいたものです。私が権利侵害を申し立てたものは、いわゆる”紳士動画”と呼ばれるもので、
  • 意図的にパンツを見せる
  • モデル改造などで全裸や半裸にして、胸や性器を露出する
  • モデルの性器、臀部、胸部に焦点を当てた意図的なカメラワーク
という表現がされています。これが、私が利用規約の中で禁止事項としている「性的、わいせつな表現や内容」に反しているとしたものです。

モーション自体はそのまま使われていただけなので、「複製権」や「同一性保持権」は当てはまらないと考えました。「翻案権」も、二次的著作物としての動画の作り方(性的なカメラや演出)が「翻案」という解釈もできそうでしたが、その時点では確証がありませんでした。
私としては「モーションを裸踊りに使われたくない」「パンツを見せるためにモーションが使われる必然性はない」という強い思いがありました。文字どおりの「名誉」や「声望」までは考えていませんが、人格的利益を侵されたということで、ニコ動に申し立てたものです。

結果として申し立てが通って動画が削除されたことは、一通りの主張が認められたということで大変良かったと考えてます。
ただ私自身気をつけたいと思っているのは、今回はニコ動によって主張が認められたが、これが違う動画(使われ方など)や、違うサイトや相手(YouTubeなど)で同じように通用するかどうかはわからない、ということです。

書籍やwebでの解説で多くの裁判判例などが紹介されていましたが、似たような事例なのに「権利侵害」と認められたものとそうではないものがありました。裁判のような場ではいろいろな角度で判断されるので、違う判断をされる場合があると思います。
  • そもそも、権利主張しているものが「著作物」であるか
  • 主張する権利が妥当であるか
  • 対象としているものがその権利を侵害しているか
特に「モデルやモーションが『著作物』であるか」という根本的なところで否定される可能性も残されている気がしています。



ここまで、私が調べて理解した範囲で著作権について書いてみました。
繰り返しになりますが、なにぶん素人が理解した範囲なので、間違っている解釈や情報があるかもしれません。また、個々の事例で判断されるものなので、何でも同じように通用する保証はありません。
著作権に関心のある方には、このブロマガを参考にしつつ、各自でさらにお調べいただければと思います。

次回のブロマガでは、実際に権利侵害の申し立てをする際にどのような準備や手続きが必要になるか、権利侵害を主張する上で重要になりそうなものを、私の経験に基づいて書いていきます。

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