映画の歩き方

『天気の子』の刑事は何故リーゼントか?『傷だらけの天使』との二重構造で楽しむ

2019/07/24 08:31 投稿

コメント:1

  • タグ:
  • アニメ
  • 聖地巡礼
  • ロケ地
  • 旅行
  • 天気の子
  • 新海誠
  • 映画
  • 傷だらけの天使
新海誠監督のアニメ作品『天気の子』を観た。久々に、私なりの見方を書きます。
この考え方だと、極論、登場した刑事がリーゼントだった理由も、小学生に対して「兄貴ぃー!」という放つ唐突な台詞も説明できる。私の極度な妄想だったら、ご愛嬌。ネタバレありです。

【Amazon.co.jp 限定】【プライムデー記念発売】『新海誠監督作品 天気の子 公式ビジュアルガイド』+高精細複製画1枚(A4/額装あり) 付限定版


■概要
『天気の子』は、テレビドラマ『傷だらけの天使(1974)』を意識している。そう捉えると、物語の構造が二重層になり、奇妙な演出も理解できるようになる。

■オマージュ3観点
A.場所
両作に登場する代々木会館の屋上が、物語の接点

B.人
『傷天』と同じ設定の登場人物2名が主人公を止めようとする
・妻と死別。残された子は妻の実家に預けていて中々会えず。アウトロー。と、設定がかなり一致
・もう一人は、リーゼント(笑)。役者は、のちに刑事役で活躍。

C.演出
深掘りすれば演出も似ている。
ジャンクフードの描写に時間かけるのも一緒。
唐突に出る「兄貴ぃー!」という台詞も合致。


▼Aの補足。下記Amazon画像は、同じビルの屋上という設定。
新海誠監督作品 天気の子 公式ビジュアルガイド 名作ドラマBDシリーズ 傷だらけの天使 Blu-ray-BOX(3枚組 全26話収録)

■まとめ
現実に敗れた『傷天』の人物達が、セカイよりも天と通じる少女を選択しようとする少年に対して「現実を見ろ」と迫るお話!場所は、『傷天』"天使"のビルが、が"天"への入り口となっている。
→こう考えながら観ると、謎のモヤモヤを抱えている人も、楽しめると思うのだ


以下、詳細知りたい人は下記で
-------

■オマージュ3観点詳細
A.場所:代々木会館
『天気の子』では天へと繋がる「代々木の雑居ビル」。
これは、先述の通り『傷だらけの天使』の事務所でもある。
後者の作品内の名称は「エンジェルビル」。
屋上は主人公が住んでいた場所でもある。
"天使"の住処が、そのまま、『天気の子』では天への入り口だったのだ。

f:id:kiyasu:20190723003754p:plain

正式名称は代々木会館。
監督は、「東京オリンピックまでに、良くも悪くも消えてしまう景色を作品に残したい」という旨の発言をパンフレットにしているが、まさに、この代々木会館が8月頭になくなる。聖地巡礼をする人は、すぐ訪れないと間に合わないロケ地である。

余談だが、筆者は『傷だらけの天使』のロケ地探訪でビデオ撮影などしていたのだが、
劇中に登場した、螺旋階段(外の階段ではなく建物内部)も偶然おさめていた。
今となっては、貴重な記録が撮れたと思う。

f:id:kiyasu:20190723004804p:plain


B.人:登場人物2名の設定
"天(気)"の入り口は、『傷だらけの"天使"』の事務所/家であった。
このビル内で、『天気の子』で終盤で主人公を止めようとする
須賀・高木刑事の2人も、『傷だらけの天使』の主要人物2名と設定が似ている。

a.須賀
特に帆高の恩人である須賀と、
『傷だらけの天使』側の主人公(ショーケン演じる木暮修)との合致度は異常だ。
出来すぎているほどに『傷だらけの天使』の主人公の設定を踏襲している!

⑴奥さんと死別している

⑵奥さんとの間の子供は、奥さんの実家にいる。そして、中々会えない
⑶新宿地区でアウトローな仕事をしている
偶然で、ここまで合致するだろうか?偶然の一致だったなら、恐ろしい。

※ただし、若い頃の家出という設定は、両親死別という『傷だらけの天使」側の設定と異なる。これは、『天気の子』の主人公が家出ありきの設定の為、合わせられなかったのであろう


当初は須賀の設定はAIの研究者だったっぽいし、ロケハンで『傷だらけの天使』の文脈に気づいた後、諸々味付けしたたんじゃないかなあ・・・と妄想。新海監督より若い筆者の年齢で言うのもなんだが、新海監督の年代では観ないと思うのだよね。

傷だらけの天使 萩原健一 松田優作 ショーケン


b.高井刑事
少々飛躍しているのだが、高井刑事も、
『傷だらけの天使』の相方である乾と共通点がある。
それは、もう、
⑴髪型がリーゼント(笑)
こっちは合っているか確証度が低い共通点ではあるが、本ブロマガのタイトルの回収はここ。
乾を演じていたのは、後に相棒シリーズなどで刑事役が多くなる水谷豊さんなので、刑事の役割を割り振ったという推測もできる。

過去の新海作品では、見た目が個性的な登場人物は稀有。「なんだこのキャラは」と感情移入を避けてまで作風を変えたのか?そもそも、主人公にたちふさがるのは1名に絞った方が感情移入しやすかったのではないか?その理由は、こんなオマージュもあったのではないか?と考えると、心が落ち着く。

総じて、『天気の子』は、
『傷だらけの天使』の登城人物が、
彼らの事務所跡である天使のビルで、天と少女を天秤にかける主人公の壁となる話、と言う構造が成り立つ。bはちょっとドキドキの仮説であるが。

▼Amazonで良いリーゼント画像がなかったので、苦し紛れですが97年版の映画の画像を。。
傷だらけの天使 [レンタル落ち]

C.演出 ジャンクフードを例に
『傷だらけの天使』は、ジャンクフードを食べるオープニングが有名。『天気の子』のジャンクフード推しの演出のインスピレーションの源流の可能性がある。

新海監督自身は、パンフレットにて、「『君の名は。』はパンケーキに喜ぶ話で『天気の子』はジャンクフードに喜ぶ話」「今の時代が明確に貧し苦なってきていることが背景になっている」とも述べている。ただ、それだけにしては、たとえジブリのオマージュの理由が加わろうとも、時間をかけて描いていたなあと思う。



ちなみに、「兄貴ぃー!」というセリフも、合致。

■まとめ

X.セカイ系×新宿アウトローな世界
新海監督は、新宿・代々木近郊を作品に出し続けてきた。
『君の名は。』『言の葉の庭』『秒速5センチメートル』。
『天気の子』でも、過去作に出てきた建物のカメラ位置変更が複数ある。

ただ、今回新鮮だったのは、バニラの求人宣伝カーの演出に特化されるような、
新宿のアウトローな世界を描いたことであろう。

70年代。ヤクザとは言わないものの、そんなアウトローの世界で、
事務所を開いていた人間たちの物語が『傷だらけの天使(1974)』であった。
そして、詳細は省くがその物語の男たちは、現実≒セカイに敗れたと言える。
『天気の子』は、そんな亡霊たちが生き方を強要するも、振り払っていく物語だ。

傷だらけの天使 ORIGINAL COVER

Y.二重構造を楽しく見よう!(これが言いたい)
つまり、こうやってみると感慨深くなりませんか?

かつての『傷天』の登場人物が、天使のビル(エンジェルビル)の住処にて、天と通じる少女を選択しようとする主人公に対して、「現実を見ろ!このやろう!」と迫る話なのである!

もうちょっと細かく書くと、

新宿でアウトローな道を進みセカイに敗れた者たち(傷だらけの天使の登場人物達)が、
かつての住処であり、今は
天の入り口となっている天使のビルの屋上にて、天orセカイよりも少女(2解釈あるが、天使と捉えてもOK)を優先しようとする主人公に対して「現実を見ろ!このやろう!」と迫る
なのである!

そうすれば、『君の名は。』より感情移入しづらいという話は吹っ飛ぶはずだ。随分、マニアックだなーと思うけれども。

f:id:kiyasu:20190723004804p:plain

以上、KIYASUWALKERでした。

次回、スターウォーズEP7編 ?? もっと小編にするかもだが
f:id:kiyasu:20190724011833p:plain

-----
■書き手について
KIYASUWALKER(きやす・うぉおかあ)
映画の旅人。チュニジア・トルコ・ロシア・クロアチア・中国・ウクライナ・・・と世界30カ国くらいの映画ロケ地旅探訪をしている。黒澤明、宮崎駿、高畑勲、北野武、新海誠監督作品は、だいたいロケ地探訪クリア。

PICKUP記事
90年代アニメ『モンタナ・ジョーンズ』のロケ地 探訪(1)こちら
今敏監督『東京ゴッドファーザーズ』 新宿・築地など こちら
東映映画のタイトルでおなじみの「あの荒波」の撮影ロケ地に行ってきた こちら

コメント

A二郎 山口
No.3 (2019/08/03 01:47)
はじめまして!
なるほどなるほどですね。
須賀さんの事務所が半地下にあるのは、かつて天(屋上)にいたけど、そこを追われて天国から地獄へ…って意味があるのかな?と深読みしてしまいました。
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事