今日もキノコ日和

その8:秋キノコダイナマイト(後編)

2015/09/19 00:13 投稿

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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添ってもらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。
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前日のキノコ狩りから一夜明けました。車の外に出るとちょうど朝日が登り始めたところです。まだ探すにはくらいでしょうから、朝ごはんを食べてから出発することにしましょう。

正直狭い車内でろくに眠ることができず、途中から開き直って念のため持ち込んだ図鑑読んだり同人誌の原稿描いてたりしましたが、不思議と晴れやかな気分です。この清涼な山の空気が淀んだ私の心身を洗い清めてくれているかのようです。まあ俗に言う徹夜明けのテンションという奴です。

さてこの日はどうするかというと昨日まわった山をまた歩きます。虫草を探すために時折足を止めていたせいか、まだまだ充分にまわれていないところが残っているからです。また見つけておいたタマゴタケをそのまま残しているので一日でどのくらい生長したのかも見てみたいと思います。
ただしレンタカーは15時までに返さなければいけないので時間には注意しましょう。



イヌセンボンタケ。
群生する小型のキノコです。センボンは群生・束生するキノコにつく接頭辞です。イヌについては食用価値のないものや似て非なるものを表していると言われています。食べることができないことから、食肉する習慣のなかった犬の名を冠しているのでしょう。
キノコ以外でも植物などにも見られる命名法と聞きましたが、具体的にどんな名前があるのかは知りません。各自調べておきましょう。



コケの間にサナギタケ。
小さなガのサナギから生える虫草です。以前一度見つけたことがあるのですが、その個体はクリーニング中に破損してしまいました。今度こそ綺麗な標本を作るぞ、と意気込んで採取。
綺麗な橙色のキノコですが、乾燥標本にすると色が抜けてしまうのが難点です。




 

ニッケイタケ。
崖土に生えるキノコで、土が露出した斜面を見ていれば割とよく見かけます。傘表面がビロード状の光沢に覆われていて、地味な見た目の中にどこか高貴さを持ち合わせていますね。



ニッケイタケ幼菌とサナギタケ。
サナギタケ表面の粒々は子嚢殻といって胞子を作る部分です。




 

クギタケ幼菌。


クギタケ成菌。




マツバハリタケ。
名前の通りマツ林に生えるキノコで、傘裏は針状の突起に覆われます。
臭いを嗅いでみると何と言うか、軽く鼻を突くような感覚があります。図鑑で見ればヒノキ板のような木の香りと書かれていました。キノコ図鑑書いてる人ってここら辺の表現力が素晴らしいですよね。


びっしりと生えた針。




キアミアシイグチ。




シメジ型のキノコ。
イッポンシメジの仲間かな。





 

アケボノアワタケ。
柄が特徴的なキノコで、白地に淡紅色の鱗辺をつけ根元が鮮やかな黄色になります。全体的に乙女チックな雰囲気の愛らしいキノコです。



 

それほど大きくもないのにやたら威圧感のあるキノコがいました。この威風堂々っぷりはマクロレンズだけのものではないでしょう。柄についた明瞭な網目とフェルト状の傘がヤマドリタケっぽいですね。
調べたところ恐らくキアシヤマドリタケというキノコみたいです。まだ正式名称ではなく仮称段階だそうです。



クロラッパタケとホウキタケ。



ホウキタケの仲間はよくわかんないですね。
色味的にヒメホウキタケかなぁ。



クロラッパタケ。
クロラッパタケの仲間は傘中央の穴が深く伸びるのが特徴です。




モミジタケとニオイワチチタケ。
全然違う仲間なのに近くに生えるのは、そこら辺がキノコ的な優良物件だからでしょうか。









不快臭がするキノコ。


こっちはカレー臭のするキノコ。




カバイロツルタケ。オッスオッス。




ヒメロクショウグサレキン。
ロクショウグサレキン、ロクショウグサレキンモドキに比べると色が薄いのが特徴です。




お、きれいなチチタケだ。
実は前から一度味見してみたいと思っていたキノコです。ただどうにもタイミングが合わず、老菌とか残骸ばかり見つかって今まで機会がありませんでした。ちょうどいいのでこれを貰っていくことにしましょう。

実は昨日見つけたムラサキヤマドリタケも採取しており、車の中に積んだクーラーボックスに保冷剤と一緒にしまっています。せっかくなので他にも食べられるキノコがあったら貰っていきましょう。


















沢の枝から出たキノコ。ニカワチャワンタケかな。
※追記:キイロヒメボタンタケの少し色の抜けたやつみたいです。




おお! これは美しい。
思わずため息が漏れました。ムラサキアブラシメジモドキですね。著しい粘液に覆われた紫色の綺麗なキノコなのですが、ここまで青みが強いのは初めて見たかも。



ぬめりのおかげで光沢ができて磨かれた宝玉のようです。たくさん生えてるし、これもいくつか採っていくことにしました。




一日経ったタマゴタケ。
傘の丸まった状態から見事に花開きました。実にカッコいいですね。近くにはまだいくつも卵が残っており、これからも生えてくることでしょう。
というわけで、この一本は採集させていただきます。失礼しまっす。



タマタマ。



ただこのタマゴタケ、やっぱり絵にダンダラが無いですね。前日見たときは生長してできるのかと思いましたが、これだけ開いてもこの状態です。しかしセイヨウタマゴタケ、というわけでもないでしょう。

タマゴタケにはもともとAmanita hemibaphaの学名があてられていましたが、現在では遺伝子研究に基づきAmanita caesareoidesとするのが主流だそうです。
これに対してセイヨウタマゴタケ(Amanita caesarea)というのもいて両者の区別としては
①タマゴタケにはだんだら模様がある
②タマゴタケのツボの内側は黄色味を帯びる
③セイヨウタマゴタケは傘がオレンジ色で傘周辺の溝線が短め
といった違いがあるようです。

で、このキノコを見てみるとだんだら模様はないし、坪の内側は白い。しかし傘は真っ赤で溝線も長い、という感じです。どうにもA.
caesareoidesとされているものの中にもだんだら模様のないものがあり、別種の可能性もあるのだとか。ネットで見たところその個体は針葉樹林帯で見られるらしいんですが、ここはそんなに高くないはず。ふむ……・

わかりませんね。まあタマゴタケの仲間です。




タマゴタケの近くに生えてたアミタケ。たくさんあるからこれもついでに貰っていきます。




サンコタケ。
前日に見たときは一つだけだったんですが、今回来てみたら一つ増えてる。生長の早いキノコです。臭い。




 

変な花。角笛のようなやつです。




キソウメンタケ。




暗がりに生えるキツネノハナガサ。可憐なキノコです。




ナラタケモドキ。おっすおっす!




おっと、また何やら団子状のキノコを見つけました。やっぱり今年は地下生菌に縁があるな。
以前も書いたかもしれませんが、この手の奴は割ってみるに限ります。ずぱっと割れば大体見当がつくものです。



誰だお前。
いやいやいや。てっきり黒い粉状でも覗かせて「またニセショウロかー」とかそんな流れになると思いましたが、何だこれ。細かな小室に分かれている上に、その内部にとろりとした液体(グレバか?)が入っています。臭いを嗅いでみますが、なんともはや。

で、色々調べ回ったところどうやらコクロツブタケというキノコの仲間みたいです。数種類のキノコがまとめて呼ばれているため、広義の名前ということになります。図鑑などでも見たことが無いので細かいところは謎ですね。謎。

しかし昔は「ネットは古いのとか虚の情報混じってるからできるだけ図鑑主体で行くぜー」とか気取ってたんですが、最近は何かあるとすぐ検索しちゃいますね。これがネット依存症という奴でしょうか。一応言い訳させていただくと、最近どうにも図鑑だけだと追いつかなくなってきちゃったんですよね。最新の研究とか仮称段階のキノコはまず既刊には載ってませんし、マイナーなキノコを調べようと思ったらネットを渡り歩く方がまだ可能性があります。聞いた話ではキノコに関するwikipediaなんかはガチの研究者が書いてたりすることも多いのだとか。まあ要は信用のおけるサイトやブログを見つけていかに活用するか、ということでしょう。大切なのはリテラシーです。




 

クリゲノチャヒラタケ。
名前の通り栗色の毛が生えた茶色いヒラタケ型のキノコ。まんまですね。名前にヒラタケとありますがヒラタケとはまた別の仲間です。こういう真横に傘が張る生え方を側生というのですが、この手のキノコは代表的なヒラタケの名前にあやかって命名されることが多いです。キヒラタケとかもそうですね。
食用ではないそうなので表面の産毛をもそもそと撫でてお別れしました。



ここいらで時間は13時ごろ。バスの時間を考えればまだ時間はありますが、ちょっとやりたいことがあるので帰り支度です。二日に渡ってお世話になった山に別れを告げ、来た道を戻ります。20分ほどで普段よく登る櫃ヶ山が見えてきました。

以前訪れた際、ここの麓の沢でオオゴムタケを見つけていました。そのときはまだ幼菌なのでほっておいたのですが、今ならちょうどいい頃合いでしょう。今回は食用キノコのお土産が沢山なので、ついでにオオゴムタケも収穫することにしました。
途中カメムシタケやセミノハリセンボンを見つけたのでついでに拾いつつ、沢に入ります。




 

以前見つけたベニチャワンタケも立派になってました。
しかし外側まで赤いのと外側が白いのがいたけど、これは同じ種なんだろうか?



オオゴムタケ。
うむ、立派になってましたね。この他にも5~6生えてたので、型のいい奴を幾らかもらっていきました。さあ、これで目的は果たした。後は帰るだけですね。

後部座席に散らかった荷物をまとめ、忘れ物がないかチェック。
……。
…………。


忘れ物が無いか、チェック。
………………。
……………………。






原稿が無い。
は、え? いや、うん? なんで?
もしかしたら夜暇かもしんないし、ちょっとでも進めときたいから持っていこー、というノリで荷物に忍ばせた同人誌の原稿が、ない。何故だ!?

どこかで落としたのか? いや、そもそも昨日の夜にいじってからはコンビニくらいしか寄っていない。外に出す理由もない。
待てよ、もしかしてリュックを車から引っ張り出すとき下に置いてあったのを引っかけて落としたのでは? いやいや、流石に気付くだろう。
ではもしかして泥棒? いやいやいや、何がしたいんだよそいつは。嫌がらせか!

頭の中で思考がぐるぐるとまわり、目下混乱中です。まだネームの下書き段階とはいえ、少し進めた作業が無に帰すのはつらい。何より、まかり間違えて人目に触れようものなら恥ずかしいなんてものじゃない。
焦りは正常な判断力を奪います。切羽詰まった私はわずかな可能性にかけて、ここ二日車を止めた場所をまわることにしました。半分進んだ帰り道をまた戻り、本日二度目の駐車場。私が駐車していた場所にはすでに別の車が止まっています。ちょうど近くに昨日見たノウタケが生えているので、「へーこんなところにキノコが生えているんだ―、なんだろー」という体で近づき周囲を探しまわります。
しかし見つかりません。いよいよ追い詰められた私は、もう一度車の中を徹底的に探すことに。何度見たかもわかりませんが、荷物を全て引っ張り出しどこかにまぎれていないか確認します。
そしてようやく気付きました。
荷室の下が、二重底!
どうやら後部座席を倒してフラットにするため上げ底がされていたようです。後ろの座席の隙間から落ちた原稿は、運転中の慣性でちょうどその下に潜り込んでいたと。ああ、もうくっそどうでもいいことで寿命が縮みました。
けれどこれで一安心。心おきなく帰ることができます。作業は無駄にならず、恥をかくこともありませんでした。車も遅れることなく返却できましたし、終わりよければすべてよしというものです。

まあ強いて問題を上げるとしたら、余計なことに時間を使ったせいで乗る予定だったバスに乗り遅れて、
三時間ほど待つはめになったことでしょうか。



※教訓
山では落ち着いて行動しましょう。

コメント

錦田
No.9 (2015/09/19 23:22)
記事乙です。地下生菌きてますねー。
採取したキノコのその後が気になります。食レポ・培養レポ期待!
ガガンボ (著者)
No.10 (2015/09/24 04:59)
>>青さん
あれはもう乾燥標本にしちゃいました。追培養は温度と湿度の管理がなかなか大変だそうでして。
一度寒い温度に入れてから温かい温度にするとスイッチが入って発生するとか、色々難しいそうです。
セミノハリセンボンもテレオモルフだといくつかに分かれるそうですね。結果が出れば是非教えてください。
森屋@すみぞめ
No.11 (2015/09/24 15:29)
記事乙です。なんと見事なムラサキアブラシメジモドキ、うらやましい限り。赤紫色の花はツリフネソウ、園芸植物として有名なホウセンカの仲間です。イヌがつく植物は、樹木に多い気がします。利用価値の高い木本・草本に似た種(前者より劣る)に、イヌと名付けている場合が多いかと。役に立たないとして「無い木」と書かれるブナですが、イヌブナとかどんだけ役立たずなんだと。それにしても、9月のキノコは元気ですね。今月は一度もキノコ狩り行けてないので、ガガンボさんの記事見てキノコ成分を補給しております。
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