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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添ってもらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。
さる6/27、私は自転車を走らせ近所の山へと向かっていました。
天気は曇り。梅雨の長雨の合間にできた空白はキノコ探しに持ってこいの日和です。
翌日の日曜日には妹の結婚披露宴とか控えていたりしますが、そんなことはひとまず置いておきましょう。どうせ男衆は大した手間もかかりません。以前従姉弟の結婚式に呼ばれたときは、前日ふらふら動きまわった挙句熱中症にかかり、当日参加できなかったということもありましたが、そういうのも全部置いておきましょう。
いつ拾うのかは定かではありませんがとりあえず置かせて下さい。
さて今日やってきたのはいつも通っている馴染みの自然公園ではなく、近所の山です。ここは広い竹林があるので運が良ければキヌガサタケに会えないかと淡い期待を抱いてきました。
しかし期待とは裏腹にキヌガサどころかまともなキノコも生えていません。雨に濡れてビチャビチャだったり、古くて虫に食われていたり。梅雨はキノコにとって興盛の時期ですが、それゆえにちょっと目をはなすと生長しきってしまいます。
こいつはちょっと望み薄かなぁ、と思いつつ歩を進めていくと
なかなかの大物、アカヤマドリの登場です。やったぜ!
傘表面のしわが生長と共にひび割れていくのが特徴です。
図鑑を見る限り優秀な食菌のようですが、ちょっと古そうなのでこれはスルー。夏のイグチはすぐに虫が湧くので、よほど新鮮なものでなければまず手が伸びません。
あと私の場合キノコを食べるのにはそれなりの覚悟がいるので、こういうちょっとした様子見のときは基本手を出さないです。
なかなかの出合いに気をよくして進んでいけば、倒木から何やら生えています。
近づいて見てみようとしたところ、
私「うわっちょっとっとい!」
突如耳元をかすめる重低音。眼前すれすれを通りすぎる黄色と黒のストライプ模様。
思わず素っ頓狂な声を上げ、尻もちをつくように後ずさりました。大きさとやや暗めな配色はオオスズメバチでしょう。通りすがり、というよりかは明確な意図があって威嚇しに来たような様子です。オオスズメバチは地中に巣を作ることが多いので、近くにあるのかもしれません。ここは大人しく遠ざかることにしましょう。
遠目にとった倒木。多分ヒメカバイロタケ辺りじゃないかなあ、と思います。
スズメバチに追い払われた後、別の倒木で見つけました。
やはりヒメカバイロタケですね。針葉樹の倒木や切り株から群生する小型のキノコです。
そう珍しいキノコでもないので、割と目にすることが多いと思います。
中央部がくぼんで、垂生する疎なヒダが特徴です。
ヒメカバイロタケの倒木の下にはチョウジチチタケも生えてました。
白色の乳液は変色せず、無味。この成菌は薄れていましたが、近くに生えていた幼菌では傘の環紋がはっきりわかります。乾燥すると丁子に似た臭いを出すそうです。
丁子ってなんでしょうね?
切り株の陰にヒメコンイロイッポンシメジ。
小さいですが色合いが綺麗なキノコですね。未亡人のような色香を感じます。
ついで見つけたイグチ。
ニガイグチの仲間っぽいなぁ、と思っていましたが図鑑に該当する種類はなし。
仕方なないのでグーグル先生の出番です。「ニガイグチ」で画像検索してひたすら似たキノコを探していきます。
途中関係ないキノコサイトに寄り道しつつ、それらしいのを見つけました。
アシボソニガイグチというキノコみたいです。見た感じの特徴は合致したので恐らくあってると思います。
傘裏。
うーわ、来たよ。よくわかんない系キノコ。
イッポンシメジ科の仲間かな。細かく見るためには齧って味を見たり、柄の中を見たりしないといけないのですが、面倒くさいのでやってません。今日は軽い気持ちの散策なので、軽く流していきましょう。
しばらく歩いて竹藪ゾーンに入りましたが、やはりというかキヌガサタケには会えませんでした。まあ初めからダメ元感はあったので落ち込みはしません。
代わりにたくさん生えていたのはアワタケの仲間です。
図鑑でも「広義」と注釈がつくほど類似種が多いキノコです。
主な特徴は細かくひび割れる傘と青変性でしょうか。
見つけた時に(あ、これ面倒くさい奴だ)と思ったキノコ。
案の定、帰って調べてもよくわからず。
成菌・幼菌両方に見られる傘表面のシワが特徴かな。
前回見つけたダイダイガサ。
なのですがこいつは真っ白です。雨で退色した、にしては傘表面の鱗片も残ってます。
白色変種とかいう奴でしょうか。
色味が違うだけでまるで印象が変わりますね。
奥の幼菌は色づいてるから、やっぱり色あせただけかな?
土砂崩れ。
この山は山頂近くまで車道が続いているんですが、土砂崩れのため現在は封鎖中です。
キノコじゃなくて粘菌ですね。
クダホコリという奴みたいです。
私「よっしゃよっしゃ」
崖土に見つけた白い影。写真中央の白い小粒に注目です。
ゴミでもなければ鳥の糞でもありません。れっきとしたキノコです。
コナホコリタケという冬虫夏草ですね。
小型のガの蛹から発生しています。こういう崖土の露出したところに多く出るのだと教わって以来、ちょくちょく気にかけるようにしていたのが功を奏しましたね。
せっかくなので採取して帰るとしましょう。
コナホコリタケ採取後、そのまま下山しましたがまだ日も高いのでもう一か所まわることにしました。最近中古の安物でクロスバイクを買ったのでちょっとした移動も苦になりません。
ただ服装は山用の長袖装備なのでズボンのすそがしょっちゅう引っかかります。かといって短くすると藪の中でダニが怖い。悩みどころですね。
やってきたのは前回も記事にした自然公園です。
前に見たキノコの経過観察なども行っていきましょう。
おっと、こいつは前はいなかったな。
こげ茶色でビロード状の傘。管孔も黒に近い暗褐色。
コゲチャイロガワリというキノコです。
イロガワリの名前の通り傷つくと青く変色します。
ウラムラサキ。うーん、やっぱりきれいなキノコです。
この透明感のある紫色がとても高貴な雰囲気を醸し出しています。
なんか心霊写真見たく魔理沙が写り込んでしまった。
マンネンタケ。
なかなか縁起のいいものを見つけました。まあそれほど珍しいキノコでもないんですけど。
明日は結婚式を向かえる妹に持って帰ってやろうかと考えましたが、やめておきましょう。
落ち葉の下にいたせいかちょっと形も悪いですし、食えもしないキノコを渡しても荷物になるだけです。
詳しい解説は動画の方でしているのでそちらをご参照ください。
園内を進むと芝生の上に何やらコロコロしたものがありました。
前回の記事ではザラツキニセショウロというキノコを紹介しましたが様子が違います。
この手の腹菌類はとりあえず割ってみるに限ります。
というわけで真っ二つ。まずわかるのが真っ黒な断面図です。この時点でショウロではなくニセショウロの仲間とあたりがつきますね。成長につれて内部が黒い粉状になるのはニセショウロ科に見られる特徴です。
またグレバを覆う外皮が傷つくと淡く紅色に変色しているのがわかりますね。
これはニセショウロの特徴です。
ニセショウロ科ニセショウロ属ニセショウロ。今までこの公園では見た覚えがありませんし、図鑑によるとそこそこ珍しいキノコだそうです。今回ポイントを見つけたので来年以降も観察していこうと思います。
さらに見つけた腹菌類。
以前見かけたザラツキニセショウロかと思いましたが、ちょっと違いますね。これは同じニセショウロ科のキノコでヒメカタショウロのほうでしょう。
細かくひび割れる表皮が似ていますが、こちらは黄褐色と軽めの色合い。
近くに会ったヒメカタショウロ老菌。一部が破れ胞子塊が覗いています。
古くなると黄褐色から暗褐色になるのでザラツキニセショウロに似てきます。ただひび割れ方がヒメカタショウロのほうが細かくまばらになるような感じです。
こっちがザラツキニセショウロ。
なおニセショウロ、ヒメカタショウロ、ザラツキニセショウロは全てニセショウロ科のキノコでどれも毒キノコです。消化器系中毒、失神、知覚異常、痙攣などの症状が報告されています。いえい!
これも古くなると内部が黒く粉塊状になるのがわかりやすい特徴です。
ザラツキニセショウロの近くに何やら妙なものが生えていました。
一瞬イシクラゲか何かかと思いましたが、確かに感じるキノコの気配。
しわくちゃな頭部に柄もやたらぐちゃぐちゃしています。どうやらノボリリュウタケの仲間みたいですね。色合いからしてクロノボリリュウでしょうか。
背が低くて妙に不規則な柄がちょっと気になります。
おっと、これはいいのがいましたよ。アカマツの根元に生えていたのはアカハツです。名前の通り赤みの強いハツタケみたいなやつで、鮮やかな橙色が特徴です。
ハツタケ同様に傷つくと橙色の乳液を出し、傷ついた箇所は青緑色になります。
前回見つけたフサタケ。奥にワカクサタケ、手前の左側にツチグリが生えています。
ワカクサタケ。
キソウメンタケ、なのかなぁ?
前回よくわからなかったのでもう一度見に来たのですが、相変わらず何とも言えない感じです。軽く下を掘ってみましたが、材が埋まっている様子はなし。元気のないナギナタタケとか?
まあわからないのは置いといて歩を進めましょう。
わからないものをわからないままにしておくというのも大切なことです。
少し歩けば今度はテングタケ科がお目見えです。
左が幼菌、右が成菌。
柄についたツバと膜状のツボがわかりますね。
傘周辺に溝線があり、ヒダは白色。ツルタケダマシというキノコです。名前の通りツルタケによく似ていますが、柄にツバがついているので見分けがつきます。これでヒダが淡い紅色を帯びていればタマゴテングタケモドキというキノコです。
ただこのタマゴテングタケモドキは名前の割にタマゴテングタケに似ていないし、この仲間は似た名前が多いので別称のアカハテングタケと呼んだ方がわかりやすかったりします。
イノシシ用の柵の向こうにキイボカサタケ。
柵が邪魔で近づけないので魔理沙はなしです。
かろうじて傘頭頂部のイボが確認できます。
地面からにょろにょろと出ているのはシロソウメンタケ。
まとまって生えるのでなかなかインパクトがあります。
しばらく進んでいくと小川沿いの苔むした地面が見えてきました。
以前オオセミタケを似たような環境で見つけたので、ここにも出ていないかとしゃがみこんで探してみます。あいにく目当てのものはありませんでしたが、代わりに変なものを見つけました。
コケを割って顔を覗かせる赤褐色の塊です。
ちなみに左下のはキイロアセタケとかそこら辺のキノコです。
よくにたキノコにタマアセタケとかいますけど、どうせ胞子見ないとよくわかんないし、今回は飛ばしていきましょう。
それよりこの赤褐色のキノコが気になります。
掘りだしてみればしわくちゃで、色といい形といいクルミのような見た目をしています。
割ってみるとしわくちゃな迷路状。この時私の脳裏によぎったのはある一つのキノコでした。
私(ジャガイモタケだ……!) ※違います。
何をとち狂っているのか、全然違うキノコを想定して変色とか見てます。
(ジャガイモタケは傷つけると青から黒~褐色に変色します)
おいおい、何臭いを嗅いでいるんだ? ヨードホルム臭がするはずだって?
しねーよ、違うんだから。
うろ覚えの知識ならない方がましです。もっと直感に従えばよかったんです。
これは見たまんまのキノコ、その名もクルミタケです。
フクロシトネタケ科のキノコで名前の通りクルミのような外見で、内部が迷路状に仕切られているのが特徴。若いうちはもっときれいな球形をしているようです。
この公園では初めて見るキノコです。梅雨時期に発生するそうですが、他には見当たらずこの一個だけでした。こうなると俄然不安になるのが小心者の私です。
(これが最後の一個だったらどうしよう)
(唯一の発生個体だったら残しておいた方が良かったんじゃないか)
妙な罪悪感に駆られ、気を紛らわすために他に個体がないか探しまわります。もっと勉強して、いちいち割らなくても特定できるようになればこんな心配をすることもないのでしょうが、まだまだ先は長そうです。
クロハツ老菌。
ヤグラタケが出てないかと期待しましたが、生えてませんでした。
前回見つけた不明種。
しばらく時間をおいて見たら淡い紅色に色づいています。前回色がついているように思ったのはやはり偶然ではなく、胞子の色だったようです。
胞子の色とヒダの感じからしてイッポンシメジ科のキノコみたいですね。ただ小型で白色のイッポンシメジ科となるとキヌモミウラタケくらいしか思いつきません。キヌモミウラタケにしては傘表面の絹糸様光沢が見られなかったし、やっぱり謎です。
前回わからなかった謎チチタケ。
アシボソチチタケに似ていますが傘表面がオリーブ色がかっている点と、傘の周囲に粗毛を有していない点からススケアシボソチチタケというキノコだと判断しました。
ただ名前は付いていますがまだ仮称の段階で、細かい生態なども不明。アシボソチチタケが生えるような環境に出るのだそうです。青木図版とも呼ばれる日本きのこ図版に載っているのだとか。
ススケアシボソチチタケの脇に生えるムラサキホウキタケモドキ。
さあ本日二回目のキノコ探しです。皆さん今度はわかりますね。
魔理沙の右下に生えるのはアカシミヒメチチタケ。
そして右側に生えているのが上でも出たコナサナギタケです。
掘りだしてみました。まゆで囲まれた中に小さなさなぎが入っています。
最後に二つ目のコナサナギタケを採取したところで本日は終了です。
標本のクリーニングと写真の整理、同定作業に勤しみましょう。最初に見えた不作の気配とは裏腹になかなかの収穫です。これなら他の場所でも色々見えそうですね。
明日、披露宴じゃなかったらなぁ……。
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2014年のキノコ狩り動画更新しました。音やコメントと一緒に楽しみたい方はどうぞ。
コメント

No.7
(2015/07/10 08:58)
記事面白かったです(小並感)
丁子はウスターソースやとんかつソースの香りの主成分です。ご自宅にあれば、ぜひ嗅いでみてください。
以前チョウジチチタケを乾燥させたら、確かに似た香りだった記憶があります。
丁子はウスターソースやとんかつソースの香りの主成分です。ご自宅にあれば、ぜひ嗅いでみてください。
以前チョウジチチタケを乾燥させたら、確かに似た香りだった記憶があります。

No.8
(2015/07/11 09:12)
皆さん丁子のこと知ってるんですな。機会があれば嗅いでみます。
色んなポイント教えていただくのはとても助かります。すぐには難しいと思いますが参考にさせていただきますね。
四国は一度マッコウのところへ遊びに行くついでに四国カルストという場所を歩いたことがあります。
ただ当日の天気が悪く、遊歩道には行って50mもせずに退散してしまいました。こちらもまた再挑戦したいところです。
色んなポイント教えていただくのはとても助かります。すぐには難しいと思いますが参考にさせていただきますね。
四国は一度マッコウのところへ遊びに行くついでに四国カルストという場所を歩いたことがあります。
ただ当日の天気が悪く、遊歩道には行って50mもせずに退散してしまいました。こちらもまた再挑戦したいところです。

No.9
(2015/07/12 22:09)
キノコ話&写真楽しませて頂きました。
長ズボンの裾は自転車用のバンド(自転車屋に売ってます)を付けると、クロスバイクでも引っかからず、楽ですよ。
長ズボンの裾は自転車用のバンド(自転車屋に売ってます)を付けると、クロスバイクでも引っかからず、楽ですよ。
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アカヤマドリは、キノコはじめた頃汁物にしてあまりの味の濃さに途中で気持ち悪くなった思い出が。
さっと湯通しして、氷で締めて食べると美味しいキノコですね。味も特徴的ですし。
あと、地下生菌とったんならいっそ、地下生菌のスペシャリスト目指すのはいかがでしょう?冬虫夏草をぶっちぎるほどのマニアックさですよ。
昔、地下生菌のガチの人の持ちネタで
「君は地下生菌をはじめたら日本のベスト10に入る人材だ!地下生菌研究やらないか?(研究してる人が10人もいないから)」
て新入生に言っていたくらいです。(今はもうちょっと増えてるらしいですが。)
丁子=クローブって、肉の臭みとるのに良く使いますけど、料理しないと単品で嗅ぐ機会あんまりないかもしれませんね。