今日もキノコ日和

その64:2017年 夏キノコ

2017/08/18 05:22 投稿

コメント:3

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  • ガガンボ(東方手描き作者)
  • キノコ

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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。
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 どうも御無沙汰しております。先日ようやっと八丈島遠征の記事を書き終えたところでまた期間が空いてしまいました。もともとこのブロマガは動画編集よりもインスタントに報告ができるということで始めたのにこれでは本末転倒もいいところです。その八丈島の記事にしたって6月の遠征をまとめるのに2か月近くかかってるわ、伸ばしに伸ばしてなかなか完結しないわで、ご批判の声には返す言葉もございません。

 なので謝りません。

 嘘ですごめんなさい。更新頑張ります。
 そもそもなぜこのような体たらくになってしまったのか思い返してみると、一番の原因は私が7月中に予定をぶっこみすぎたことに尽きます。7月(正確には6月終わりから8月初め)はキノコにとっての最盛期の一つですので、あちらこちらで観察会や調査が実施されていました。過去の私は調子に乗って参加できるものすべてに顔を出し、結果として7月は毎週必ずどこかの山に出るということになっていました。
 そのせいで部屋にこもって作業する時間も減り、写真はたまって整理も追いつかず、あげく疲れがたまってやる気が起きないという有様でした。30超えると基礎体力よりも回復力のなさを実感しますね。とりあえず今後は身の丈にあった活動計画を立てていこうと思います。


≪2017年の夏キノコ≫
 というわけで言い訳はこのくらいで本題です。先述の通り、八丈島遠征以外にもこの夏は何度も山に出ており、当然それなりの収穫をしています。ただこれらをまた個別に記事にしていればいつ終わるのか見当もつかないので、今回は夏の間に見たキノコ・虫草の中で面白かったものや気になったものなどを抜粋してまとめてみたいとおもいます。今回はキノコ編です。





Alpova diplophloeus(アルポバ ディプロフロエウス)
 初っ端から和名なしのキノコ。地下生菌の仲間で外見的特徴と胞子の大きさ(長さ約6㎛×太さ2~3㎛)から判断。もともとアルポバ属の仲間だろうなとは思ってたんですけど、切断面を見て、(あれ? 変色性あるの?)と思い込んでからが長かった。

 図鑑には変色性なんて書いてないし、そもそも載ってるの一冊くらいしか持ってないしでこれは不明菌扱いかなと。そのあともう一度見に行って再度観察したところ、これは変色性というより汁が染み出してるだけだとわかりました。先入観って怖い。






アナアキアカダマタケ
 上の地下生菌と同日に見つけた別の地下生菌。初めはアカダマタケかホソミノアカダマタケのどちらかだろうと思っていたので持ち帰って胞子観察。

 アカダマタケなら胞子は長さ10~16㎛×太さ9~13㎛の広卵型
 ホソミノアカダマタケなら長さ5~8㎛×太さ3~4㎛の長楕円型
 ところが本種の胞子は長さ10㎛×太さ5㎛の紡錘形

 アカダマタケにしたら胞子が細いけどホソミノに比べたらでかいという特徴から上記のアナアキアカダマタケと判断しました。ただこのアナアキアカダマタケ、今までアカダマタケと混同されてた種でまだ学名もついていないキノコです。とりあえず新称として図鑑に載ってるのでそっちを採用しときました。




 

アオゾメクロツブタケ
 どうせなので最初は地下生菌でまとめてしまいましょう。名前の通り強い青変性のあるキノコです。元の色は真っ白ですがちょっと触るだけでも即座に青く変色していきます。

 こんななりをしていても実はイグチの仲間。アイゾメイグチの系統に近いんだそうです。言われてみれば青変性ってイグチの仲間に多い印象があります。ちなみにこの青い色自体も空気に触れていると次第に退色するので標本などに残すことはできないみたいです。






アケボノドクツルタケ
 今まで何度か紹介してるキノコで今更っちゃ今更なんですけど、個人的に可愛い写真が撮れたので乗っけておきます。かつてはドクツルタケの低地型とされていましたが現在は別種扱いでタマゴタケモドキの白色変種とされています。なので学名はAmanita subjunquillea var. alba。傘中央が色づくのとツバが黄色いのが特徴。よく似たのでニオイドクツルタケってのもいますがこいつは塩素みたいな臭いがします。この写真の個体は這いつくばって臭いを嗅いで確認したのでアケボノの方でいいでしょう。断定するには試薬がいるんですけど。




フカミドリヤマタケ(ヒスイガサ)
 草地に生える綺麗な緑色のキノコ。ヌメリガサの仲間で肉質がやや透明がかっているので翡翠のような美しさで、その色合いから以前はヒスイガサと呼ばれていました。ただ新種として登録された名前はフカミドリヤマタケ。この仲間にはアカヤマタケとかトガリベニヤマタケとかいるので色の部分だけ変えてこういう名前になったようです。

 名前の体系的にはまとまってるし、特徴も踏まえた名前ではあるのですが正直言うと私はヒスイガサの方が好きです。というかキノコ屋同士で話す時も「あのーほら、昔ヒスイガサって呼ばれてたやつ」といった具合でヒスイガサの方が通りがいいです。

 こういうのってキノコの中には結構あって他にもタマゴテングタケモドキなんかもアカハテングタケの方が通じやすかったりします。キノコの和名って実は学名のようなルールとか拘束力とかないのでヒスイガサを広めていって多数派にしちゃえば名前変わるんじゃないかなぁと密かに狙ってます。ヒスイガサヒスイガサヒスイガサヒスイガサヒスイガサ……。






ヤナギマツタケ
 どこら辺がマツタケなのか謎なキノコ。あやかり鯛的なもんだろうなと思ってます。本種はモエギタケ科フミヅキタケ属のキノコで全然マツタケとは関係ありません。傘表面のしわとフミヅキタケの仲間に見られる顕著なツバが特徴的で、よく自前の胞子を積もらせて暗褐色にしています。それは胞子飛ばす邪魔になってんじゃないの? ヤナギと名前にありますが樹種は広葉樹なら割と幅広く出るようで、公園の木や街路樹からも出ることがあります。梅雨時期から初夏にかけてはいろんなところで目にするキノコです。




 

ツエタケの仲間
 以前からツエタケは再分類が必要で色々検討されているとは聞いていましたが、最近購入した図鑑で細かく載っていたのでよっしゃじゃあこいつを特定してやろうと思い写真を撮りました。ところが帰って図鑑を見てみたところ判別には胞子観察が必要とのことで結局何なのかはわからずじまい。ヒマラヤツエタケかチェンマイツエタケのどっちかだと思います。




 

アカヤマドリ
 夏を代表する食用キノコ。今年は当たり年だったのか、タイミングが良かったのかあちこちで腐るほど生えてました。というか腐ってました。イグチの中でも本種は特に虫に食われやすいイメージです。そんな中運よく生き残ったまま成長したのがこの個体。傘径はおよそ23㎝という大物でした。まあ割ってみたら悲惨なことになってそうですけど。




 

コウラグロニガイグチ
 クロニガイグチにしては赤変性がないし、ウラグロニガイグチにしては管孔が大きいし色も明るいな。ということで調べてみたところ行き着いたのがコウラグロニガイグチ。ウラグロニガイグチの一変種という扱いらしいです。名前の通り小型のキノコで柄の根元が赤みを帯びるという特徴とも一致。やや珍しいらしく今回見つけたのが初めての相手でした。




アカダマキヌガサタケ
 動画にもしたキノコですね。左が成長初めで右が生長後。大体一時間くらいでこれだけ伸びます。実はもっと初期の段階から見つけていたんですがそれは写真に収めていませんでした。何故かというとイノシシに掘り返されて引っこ抜けてたから。そう、実はこの写真のアカダマキヌガサタケ、引っこ抜けてたのを私が植えたものなのです。

 このポイントでアカダマキヌガサタケを見つけた私は、一つ今にも割れそうな個体があることに気づきました。そこで翌日の朝方、意気揚々と同じポイントへ向かったわけです。ところがそこには前日にはなかったイノシシの食事跡が! 近くにあった既に伸びきっていたアカダマキヌガサタケの頭部が綺麗になくなっていたのでこれ狙いで掘り返していたようです。

 引っこ抜かれた個体は私の見込み通り先端が破れてこれから伸びるという状態でした。私はせめて胞子を飛ばしてくれとその個体を真っ直ぐ植え直し、他に生長し始めている個体がいないか探しまわりました。しかし20分ほど捜索しても見つかるのはまだ卵の状態の幼菌ばかりでこれはもうだめかと思い、荷物を置いた場所に戻ってきたら、
あれ、こいつ伸びてるじゃん……。

 完全に引っこ抜かれて菌糸もちぎれたはずのそいつは元気に伸び伸びしておりました。どうやらキヌガサタケって幼菌の卵を破ってからはバネ仕掛けのびっくり箱のように自動で伸びていくみたいです。そういえばカゴタケなんかも幼菌に切れ目入れたら勝手に開くって聞いたことがあったっけ。そうと知っていれば最初から撮影に入っていたものを……。無念。




ヌメリコウジタケ
 傘表面の大人しい色合いとは裏腹に管孔の鮮やかさが美しいキノコ。ひっくり返してみてはっとさせてくれる、こう言う奴らは嫌いじゃないです。ていうか好き。コウジタケというキノコがいて、それの粘性がある版みたいなのが名前の由来でしょうけど言うほどコウジタケとは似てないです。別属のキノコですしね。




 

アメリカウラベニイロガワリ
 分布は日本と北アメリカ。アメリカにも広く分布してるのでこういう名前になりました。クラピのキノコはこいつでいいか。色変わりの名の通り強い青変性があります。どこ触ってもすぐ変色しちゃうので取扱いには気を遣う相手です。




タマゴタケ
 言わずと知れたメジャーどころですね。夏のキノコですけど真っ盛りの盛夏には生えず、初夏か晩夏あたりに生えてきます。こいつは梅雨の終わりに見つけた奴らで、同じポイントでは去年の秋にもタマゴタケを見つけています。(記事:その37を参照

 ただその時に見つけたタマゴタケは柄のだんだら模様が薄い個体でした。以前からこの近辺で秋に見つけるタマゴタケは柄の模様がなかったり薄かったりするものばかり。しかし今回見つけた初夏のタマゴタケは柄に綺麗な模様が出ていますね。となるとこの模様の有無って成長速度による違いなんじゃないでしょうか。初夏の暑くなってくる時期は柄の生長に表皮がついていけずに破れて模様を作り、秋に向かって涼しくなっていく時期だと破れずに一緒に伸びていくとか。まあ詳しくはよくわかりませんけど。
 



ハチスタケ
 蜂の巣みたいなのが名前の由来。ハチノスタケというキノコもいますがそれとは全く別のキノコです。生えているのはウサギの糞。ウンコです。ウンコウンコウンコ! どうにもこのハチスタケ、かなりウサギに依存した生態をしているようです。
●ハチスタケが胞子を飛ばす
→周囲の草に付く
→ウサギが胞子ごと草を食べる
→糞をする
→生える

 というサイクルのようで、むしろウサギに食われることで胞子が活性を得ているのではという説もあったりなかったり。そんなウサギと密接なキノコなので学名はPodosordaria jugoyasan(ポドソルダリア ジュウゴヤサン)。十五夜満月と兎をかけた実に素敵な学名です。ロマンティックね(←のんき)

 もともとはかなり発生の限られた珍キノコだったようですが、最近はそこそこ見つかってるらしいです。海岸沿いの砂地などに多いのだとか。これ見つけたのは山の中にある公園内ですけどね。数人がかりでウンコを探し回って見つけました。いえーい、ウンコー!





 

コガネヤマドリ
 実はあんまり自信ないやつです。後ろに(?)つけてもいいくらい。とりあえずはコガネヤマドリでいいとは思うんですけどね。図鑑見ると傘裏の管孔が離生するっていうんですよ。ここら辺は結構揺れる部分なので個体差のうちでいいと思います。いいんじゃないかな。いいってことにしておいてください。





 




 

不明菌
 よくわからなかった奴。本当はもっとたくさんあるけど全部貼ってたら切りがないので適当に代表として。どっちもイグチ科というところまでは特定しました。頑張ったでしょ?

コメント

ガガンボ (著者)
No.1 (2017/08/18 05:26)
イグチは再分類されたのでまたややこしいことになってますね。新しい図鑑を読んでいて置いてけぼりをくらってしまいました。ただこの件に関して一つだけ私が有利な点は元の分類もろくに覚えていないから混乱が少ないということでしょう。
いぼがえる
No.2 (2017/08/18 10:46)
ハチスタケのハチスは蓮かな。

真夏って山仕事はオフシーズンだから、雑草低木が繁茂して、その辺の里山は分け入るのが大変そうですね。
農家のおっちゃんも、夏の食菌はぜんぜん知らなくてワロタ。
キノコのシーズンは秋と思われていたのって、これが原因か。
ガガンボ (著者)
No.3 (2017/08/18 13:11)
>>いぼがえるさん
確かに言われてみれば蜂の巣そのものよりかは蓮の実に似ていますね。しかしこの場合ハチの巣に似ていることから蓮のことをハチスと呼んでいるというわけで比喩に比喩が重なってしまうというややこしい事態に。
食用キノコのシーズンとして秋ばかり有名なのには「夏のキノコの足が速い」というのがあると思います。今回紹介したアカヤマドリをはじめ夏キノコはどれも腐りやすくて、早いものだと朝採って夕方には溶けてたりします。ナメクジやキノコに感染するカビも活発になっているので食菌採取ならやはり秋の方がいいのでしょう。
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