今日もキノコ日和

その61:梅雨八丈島アイランド(2日目-後編)

2017/07/28 23:03 投稿

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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。

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 文字通りヤブニッケイモチ病菌を味わったのでお次は場所を変えて虫草探しです。大場さんい案内されて沢沿いの林道にやってきました。特に迷う道でもないので案内はここまで。しっかりお礼を言ってから山道へ歩を進めます。
 さて今回の遠征の目標の一つは虫草の「コガネムシタケ」です。名前の通りコガネムシの成虫から発生する虫草で、甲虫の成虫から出るのはこいつとオサムシタケくらいのもので以前から見たいと思っている相手です。前回の遠征でセミ生はある程度見ることができたので、今回はもうこいつさえ見つかればというくらいの意気込みでした。

 しかしながら不安なのは空模様。先ほどから何とも嫌な暗雲が立ち込めてきています。こりゃのんびりもしてられないかなぁと既にのんきな考えを浮かべていると、開始早々に先を歩くosoさんが我々を呼びました。

oso「あれ、これ……虫草だね」
私「マジでー? どれどれ……あ、これもそうじゃない?」


 呼ばれて集まる最中にちらりと見えた黄色い影。子嚢殻も確認できて、虫草なのは間違いなさそうです。歩きながらの捜索で見つかられたのはosoさんの発見があったのと偶然の産物です。あと日ごろの行いでしょう。


 osoさんが見つけたのはこっち。さてはここらへんに固まって生えているのでは? ということで周囲を探す木下さんとアメさん。しかし近場で見つかったのはこの二つだけでした。とりあえず私とosoさんがそれぞれ見つけた個体を採取する間、お二人は先行して他の虫草を探すことに。しかしこいつ……なんとなく覚えがあるんですけど、まさか……。

oso「ガガさん……こいつってさ、マヤサンじゃね?」
私「……今思ってて口にしなかったことを言わんでくださいよ」


 薄々感づいていましたがあえて気づかぬふりをしていたというのに。そう、こいつはマヤサンエツキムシタケ。採取するのがクソ難しいことで有名な虫草屋泣かせの虫草です。私は一度見つけたことがあるのですが、その時は脇の小石を動かしただけでギロチンしました。ここであったが数年目、リベンジの糧になってもらうぞ!



私「なんかさー、こいつの周りに白い粒々落ちてるんだけど」
oso「あ、それこっちもある。分生子か何かかな」
私「一応これも一緒に採集しとくか」

 後に調べたところやはりこの周りに落ちている木くずのような白い塊はマヤサンエツキムシタケの分生子(クローン的な胞子)ということがわかりました。どうやらマヤサンエツキムシタケは二種類の胞子をそれぞれの役割ごとに使い分けているようです。

●子嚢胞子(減数分裂で作られる有性胞子):空気中に散布し新天地へ移動+遺伝子交配
●分生子(減数分裂しないクローン胞子):同じ場所に落ちて次代へ引き継ぎ

 このような繁殖はヒメクチキタンポタケやセミタケにも見られるもので、風任せの胞子運搬のリスクに備えているのではないかと思われます。


 さて、それで肝心の採取の方がどうなったかというと、


 見事にギロチンしました。クソが。
 というか、ホントなんだこいつ。地下部が細いとか脆いとかそういうレベルじゃないんですけど!? 完全に菌糸状態、もはやただのカビじゃねえか! どう掘れっていうんだこんなの!

 これが採取難易度トップクラスの実力か……。さすがにベテラン勢をして「あれは運」と言わしめるだけのことはある。こいつを綺麗に掘り出そうと思ったら、まず採取に適した個体にあたらなければ話にならないようです。まあ宿主は掘り出せたから、前回よりかは善戦したということで良しとしましょうか。ちなみにosoさんは宿主と繋がったまま掘り出すのに成功しましたが、途中で一番型のいい結実部が落ちてしまったらしく悔しがってました。

 そのまま拭いきれぬ敗北感を抱えながら先を行く二人と合流。途中沢に下りて葉っぱの裏を見たり、倒木を調べたりしましたが特に虫草は見つかりませんでした。まだ二回程度しか行ってないので確かなことは言えませんが、八丈島って気生型や朽木生型の虫草はそんなにいないような気がします。



 途中の沢筋で見つけた子嚢菌。ピンタケの仲間?

 そこからしばらくはこれといった成果もなし。私はもう一度マヤサンエツキムシタケを見つけたら今度こそリベンジしてやる。でも見つけたらもう一回あれの相手をしなきゃいけないのか……。と揺れ動く乙女心のような心持で探索を続けていました。見つかってほしいような、見つかってほしくないような。そんな折に声を上げたのはまたもosoさんでした。

oso「ツブノセミタケですね」
私「あー、ツブノ。ああ、こっちにもいるわ」

 言われてみればポツポツとツブノセミタケが生えています。幼菌の段階では色味が白く、暗い森の中では目立つ存在です。ただ若い段階だと子嚢殻が成熟しておらず、胞子観察なども行えないという問題もあります。自分のフィールドであれば幼金段階で発見しておいて、その後定点観察を続けるというのが一番でしょう。

アメ「これがツブノセミタケですか。こんな感じなんですね」
私「それはまだ幼菌ですね。こっちはちょっと成熟して子嚢殻ができてる」

 興味津々で観察するアメさんたち。そういえば今回私とosoさんは二回目の八丈島なわけです。ガイドというのはおこがましいですが、それでも経験者として二人を案内して回るのが役目というもの。せっかく来た遠征なんですから思い出深いものにしなければいけませんよね。

私「じゃあ掘ってみましょうか」

 ということで完全無欠の100%の善意からツブノセミタケをお二人に採取してもらうことにしました。ツブノセミタケは個体によっては非情に地下部が長くなることで有名で、マヤサンエツキムシタケとは別の意味で採取が難しいと知られる虫草です。当然そんな個体に行き会った日には疲れるは精神をすり減らすはでろくなことにはなりませんが、それも含めていい経験になることでしょう。これも経験者からの心配りというものです。私はもう採取したことがあるので二度と掘りません。

私「じゃあアメさんはosoさんが見つけた奴で、木下さんはこっちの私が見つけた奴。なあに簡単ですよ。私も掘ったことありますけど10分かからず採れましたから。楽勝楽勝」

 後ろの方でosoさんの舌打ちが聞こえた気がしますが、きっと気のせいでしょう。

 なおツブノセミタケの結果はアメさんが採取成功、木下さんが失敗となりました。全体の戦績で見るとosoさん一勝、私一敗、木下さん一敗、アメさん一勝で二勝二敗という形です。いいですね。何がいいって負けたのが私だけじゃないのがいいです。

 それから進んでいくとぽつぽつと雨粒がこぼれてきました。山に入るころから暗雲は立ち込めてきましたが、いよいよ天気が崩れてきたようです。雨具の準備は当然しているものの、あまり本降りになられると探し回るのにも差し支えます。しかしそんな悪条件でも見つけるのが真に実力ある虫草屋というものです。

oso「うわ、ここすごい生えてる!」
私「ツブノセミタケだらけだ」
 
 見つけたのはosoさんですけど。言われて目を向けるとそこかしこから顔を出すツブノセミタケ。道に沿って足の踏み場もないほどに群生しています。その合間から数は少ないもののヤクシマセミタケもいくつか出ていて、この道一帯がセミ生虫草の群生地のようです。 



 ツブノセミタケ。完全に成熟して子嚢殻がびっしりとついています。横にあるのは目印に置いた男梅です。


 こっちはヤクシマセミタケ。まだ子嚢殻もできていない未成熟な段階で、見つけた当初はエニワセミタケじゃないかと思ってました。

 あまりにたくさんの発生に四人揃って大はしゃぎ。それぞれ採取に臨んだり、拾った蝉の幼虫の死骸を押し付けたり(私がアメさんに)して楽しみました。しかしここで本格的に雨が降ってきたのでやむなく引き上げです。雨さえなければもっとセミ生ロードを探索したり、マヤサン発生地を調べなおしたりできたものを。残念無念。


 山を下りてからは一度宿に戻って乾いた服に着替え、濡れた装備を乾かしました。ここでカメラの三脚を物干しに使うという私の天才的な発想がきらめき、皆から絶賛されました。これ特許採れるんじゃないでしょうか。

 夕食はお昼にお世話になった大場さんとしょうどんさんと再度合流し、前回も利用した「通(みち)」という居酒屋へ向かいました。一人で食べるにはあまりに多いジャンボかき揚げを一人一個頼んで辟易したりもしましたが、大満足の夕食でした。
 ちなみにこの時大場さんから某アウトドア動画で有名な投稿者さんがちょうど私たちの乗ってきた飛行機に乗って八丈島を立ったと聞きました。前々から動画を拝見している身としてはもしかしたら会えるかも、なんて思っていたりもしましたが変なところで縁があるんだかないんだか。どの道活動範囲がまるで違うのですりあう袖もなかったでしょうけどね。


 八丈島の島寿司。漬けになっていて美味。青唐辛子の聞いた醤油で食べるのが八丈島流らしいです。左端にある海苔の寿司がまた美味しいんですよ。


 刺身盛り合わせ。さすが海の幸は豊富ですね。サーモンはまあ、違うと思いますけど。

 その後は唯一酒が飲める木下さん(しょうどんさん達は運転、他メンバーは下戸)が無理やり飲まされたり、osoさんが著書にサインをねだられたりと楽しいひとときを送りました。ただ少し気になったのはしょうどんさんのお話でしたね。非常に話し上手で聞いていて面白いのですけど、ちょいちょい話を盛るところがあるようです。途中から9割がたホラ話だろうと思われるような話になっていました。

 私みたいに正直で誠実な人間にはとても真似できないなぁと思いました。

コメント

錦田
No.3 (2017/07/29 15:01)
この写真のようなマヤサンエツキムシタケを掘るのに、良い方法はあるのでしょうか…。
osoさんがギロチンせずに掘り出せた勝因が気になります。
α-amanitin
No.4 (2017/07/31 20:34)
手前が太い根で切断不可、奥が岩で断面作成ができなかったのが勝因でした。
本種はギロチン覚悟で断面を作る時以外は周囲の土ごと掘り取るのが吉ですね。

どろ●こさんもそんな事おっしゃってました。
青fungi
No.5 (2017/08/01 18:20)
 かこつです。
 osoさんの動画と合わせてみるとどんな風だかわかって面白いですね。
 マヤサン、そこまで脆いとクリーニングをきれいに済ませるのも大変そう…
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