今日もキノコ日和

その53:春虫草ハイパー

2017/03/30 19:19 投稿

コメント:7

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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。

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 春もうららか温かくなってきた、と思ったらまた寒くなったり落ち着かないこの頃です。自室のコタツにはもう少し頑張ってもらいましょう。さてそんな日和ですが、各地からは既に春キノコの報告が続々と上がっているようです。こいつは負けてらんねぇな、と私も原稿の合間にちょっと山へ向かうことにしました。

 今回出向いた先はいつも言ってるフィールドとは別の山でした。地元の有志から「良さそうな山を見つけた」との一報を受け取り、地元で近かったこともあり様子を見に行くことにしました。情報をくれた方自身はまだ軽く見て回った程度でしたが、虫草が出ていそうな雰囲気もあるとのことで、内心春生の虫草を期待して向かいます。

 できればタンポタケ、ハナヤスリタケ、オオセミタケあたりが見たいですね。前回全部見たじゃねーかよ、と思われるかもしれませんが、あれは案内された坪でのことです。確かに実際に見つけたのは私ですが、それも出る場所と時期があらかじめ分かっていたからできたこと。ほぼ全て案内してくださったどろんこさんの功績と言っても過言ではないのです。
 実際に見つけたのは私ですけど。

 ということで今回は地力での坪発見を目標に動いています。地元で見つけることができたら定点観察なども行えますし、春型のハナヤスリに関してはその51の記事でまとめたとおり、サンプルを採取してもっと詳しく調べたいというのもあります。虫草以外だと春キノコの代名詞たるアミガサ辺りにも出会いたいところです。

 さてそんな淡い期待を胸に抱きつつ自転車をこぎだしたのはいいのですが、思わぬアクシデントが起こりました。ちょうど山を登りはじめてあと10分もあれば着くかな、というところで自転車が壊れました。後輪の変速機とフレームを繋ぐところの金具が金属疲労か何かでもげたようです。チェーンが外れた程度ならまだしも、これはさすがに手におえません。やむなく残りの道程は自転車を押しながら上がっていきました。幸いなことにタイヤは回りますし、帰りは下り斜面なので位置エネルギーで走ることはできそうです。



 道中で見つけたクロコバンタケ。何気に載っている図鑑が少ないキノコです。別に珍しいわけでなく、単にマイナーなだけでしょうけど。osoさんのキノコ擬人化図鑑には載ってます。



 写真のように古い朽木などの材に発生して、上の画像のように表皮を破って顔を出すというキノコです。一見すると木のウロや偽菌核プレートのようにも思えますが、近づいてみると表面にツブツブした子嚢殻が確認できます。


 表面アップ。この粒々一つ一つが胞子を作る器官である子嚢殻ですね。菌糸を伸ばして表面に子実体を作るのではなく、表皮を破って出てくるというのが剛毅な奴です。


 クロコバンタケに出会ってからしばらく歩き回りましたが、これといって面白い出会いはありませんでした。干からびたクロハナビラニカワタケやクロチャワンタケを見つけて、今日は黒いのばっかだなと思ったくらい。その他は名前もわからないような幼菌しかいませんでした。

 うーむ、これは不作かな。狙った奴らには一つも出会えず、自転車を壊してまで来た甲斐はなかったか。と半ばあきらめかけたとき、視界の端に黒い影を捉えました。



 こいつは、アリだ! アリの死体。しかしこの死に方には覚えがありますよ。荷物を降ろして周りの木を探していくと……。



 やったー! やっぱりイトヒキミジンアリタケだー! 以前osoさんに坪を案内していただき、見たことはありましたが自力での坪発見は初めてです。超嬉しい。

 イトヒキミジンアリタケは名前の通りアリに寄生する虫草です。よく似た種にタイワンアリタケというものがいますが、こちらに比べると子実体(ひょろっと伸びてる部分)が名前の通り糸を引くように細長く、結実部(黒いコブ状になってるとこ。子嚢殻ができる部分)が平べったいという違いがあります。またタイワンアリタケは主にチクシトゲアリというアリに寄生し、空中湿度の高い環境を好むのに対し、イトヒキミジンアリタケはアリなら割と何でもよく、ある程度乾燥にも強いみたいです。ストライクゾーンが広いんですかね。


 不稔個体(結実部を作らない個体。種なし)ですが、こんなに長く伸びてました。まさしくイトヒキの名に恥じない姿ですね。この場所では20mほどの範囲に不稔個体を含め10以上のイトヒキミジンアリタケを見つけることができました。坪と呼んでも差し支えないでしょう。ただ今あるのはどれも去年出た古い個体ばかりのようです。
 いや待てよ? 古いイトヒキミジンがいるということはもしかして……。


 こいつをマクロレンズでよーく見てみると……。


 いるじゃねーか!
 水色の矢印で示した先に黒褐色の突起が見えますね。これはアリの身体の一部ではなく、虫草の子嚢殻です。その名もアリノミジンツブタケ。古くなったイトヒキミジンアリタケに寄生する重複寄生菌です。アリ→イトヒキミジンアリタケ→アリノミジンツブタケ、という流れですね。こいつもosoさんに教わって知ってはいましたが、自力発見は初です。というか地元にいたのか。早く言ってくれ。ダメだよ、そういうのもっと自分から声出していかないと。

 と、そんな感じでこの日のキノコ狩りは終了。日が陰って肌寒くなってきたのでさっさと帰ることにしました。お目当てのキノコには会えませんでしたが、思いがけない収穫ににんまりです。壊れた自転車にまたがって、斜面を下って帰りました。

 ちなみに自転車の修理費用は3000円くらいかかるそうです。
 まあ、そんなもんかと思いました。


コメント

青fungi
No.5 (2017/03/31 20:58)
乙です。
 坪発見、おめでとうございます。自分で見つけると、教えてもらったのとはまた違った嬉しさがありますよね。

 クロコバンタケは樹皮の無くなった材から発生すると、ゴムタケのような形状になって、しばらく分からなかったので印象に残ってるキノコです。
 それまではコウヤクタケみたいな不定形なイメージだったんですけど、。

 こちらではトガリアミガサタケorアシボソアミガサタケが最盛期をむかえています。雨量もあるのでなかなか当たり年みたいですよ。
錦田
No.6 (2017/03/31 21:52)
位置エネルギー車・・・コマンドーかな?

こちらだとイトヒキ~は結構どこにでもいますが、アリノ~は川沿いでしか見た事がありませんでした。山のほうにも出るんですね。
ガガンボ (著者)
No.7 (2017/04/01 17:25)
>>茄子のんきさん
あいつらはどうにも積極性がないんですよね。前に出ようとする気概がないというか。今の時代それじゃ他のキノコに埋もれちゃいますよ。これからはもっと自分をアピールしなきゃ。探してる方の身にもなってほしいものです。

>>アルさん
あのおっさんぐらい自己主張してくれたら助かるんですけど、キノコは基本動かないし鳴きませんからね。種によってたまに胞子飛ばす音が聞こえるくらい。そう考えると夜光る発光菌たちはかなり有情な存在なのかもしれません。夜の山とか怖くて入れませんけど。

>>nekomo
帰りの斜面でスピード出てるときとかだったら危なかったかもですね。無事に済んだの痛いのは余計な出費だけです。今は代車のクロスバイクに乗ってますが借りものはどうにも気を遣うんで参ります。気軽に山行けないし。

>>るねこさん
アリノミジンツブタケが出るのは古いイトヒキミジンからですし、時期的に... 全文表示
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