今日もキノコ日和

その44:晩秋キノコムチン

2016/12/02 01:17 投稿

コメント:5

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  • ガガンボ(東方手描き作者)
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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。

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 11月の中頃。私は始発の新幹線に乗っていました。今回は以前ミミブサタケやカエンタケの観察でお世話になった青fungiさんのキノコ観察に同行させていただくことになっています。私同様に誘われてたosoさんと駅で待ち合わせ、一路北に向かいます。集合場所は駅から数時間かかる山の中。時間には余裕を持たせているので途中で朝マックに寄ったりしながら安全運転で進みます。季節はちょうど紅葉の真っ盛り、色めく山々は実に華やかです。

oso「何が見れますかねー。今の時期じゃもう虫草はクチキツトノミがもしかしたらまだ残ってるかもってくらいですけど」
私「ブナ林があるからブナ生は見れるでしょうね。今の時期ならムキタケとか」

 言いながら、さて他に目ぼしいものはいたっけかなと思案。ブナ林に生えるキノコには珍しいものも多くいて、見たいキノコも当然わんさかあります。ただ11月も半分過ぎたこの頃に見られるものとなると数は限られてきますね。ムキタケ、アカチシオタケ……あたりは私のフィールドでも目にするし、ツリガネタケやマメザヤタケなんかはもう見慣れたものです。まあこの手の合同観察って半分以上は仲間と集まってわいわい探すのを楽しむところがあるので、キノコに関してはこれが見たい! という希望はあまり持っていませんでした。なおosoさんは以前から探しているドングリキンカクキンがワンチャンあるのではと期待していらしたようです。

 私はもう見つけましたけどね。

 山道に入ればまわりはよさげなポイントばかりです。休憩がてらに外に出るとやたらでかいスギエダタケとか生えててテンションが上がります。今日はいい出会いがありそうな予感。

oso「道中も気が抜けないですね。自分はハンドルに集中するんでガガさんそっち探しといてください」
私「こっち崖しかないです」


 そうこうしていると集合場所に到着。予定より30分ほど早く着きました。携帯の電波は届かない場所なので、これで場所を間違えていたら完全に詰みです。何度も確認したし大丈夫なはずですが、やはり不安が残るので紛らわすためにそこら辺でキノコを探すことにしました。
 クチキツトノミタケ出てないかな~と沢沿いの倒木を探していると遠くからosoさんに呼ばれました。さてさて何を見つけたのかと思っていった先には道路に転がる倒木。



 こいつがいたか! ブナ生キノコの代表格、ナメコです。


 ほんとに道端に落ちてる倒木から出てました。見きれてるのはosoさん。


 っていうかこいつらこの時期に出るもんなんですね。以前見たときは10月に傘の開いた成菌になっていたのでもっと秋真っ盛りのキノコなんだと思ってました。osoさんは完全天然もののナメコは写真に撮っていないとのことで喜んで撮影してました。私も見たのは成長しきっていてトビムシにたかられてるものだったので幼菌が見れたのは嬉しい限りです。

oso「この画像を本に使いたかったなぁ」
私「あー」

 何の話かというとこちら、ただいま好評発売中のosoさんの著書『新版oso的キノコ擬人化図鑑』のことです。(amazonの通販ページはこちら)前作の『oso的キノコ擬人化図鑑』の第二版として情報の更新や修正に合わせて追加の描き下ろしも多数収録した珠玉の一冊。わあ、買わなくちゃ!
(よし、実に自然な流れだな)
 何を隠そう、この本に使われている写真はほとんどはosoさん本人が撮影したものなのです。もうちょっと出会いが早かったら図鑑に載っているのはここで見つけたナメコ達だったのかも。機を逸したな。

 ちなみにこの本に関してはまた別に紹介動画を作ろうと思っているのでここでの説明はこんなものにさせてください。温存しないとすぐネタが切れるんです。




 他に見つけたのはやけにでっかいマメザヤタケ。気持ち悪っ!


 まあこいつもいるよね、アカチシオタケ。好きなキノコだけど、今年はもう何回も見てるので写真はそんなに撮らなくていいかな。おっすおっす。


 その後は集合時刻に青fungiさんたちと無事合流しました。集合場所はあっていたようです。今回は青さんのお仲間のS女史とS君の二名がご一緒なのですが、S君とosoさんは面識があるとのことでした。聞けば富士山の観察会でたまたま一緒になったことがあるとかで、なんでそんなところで会うんだよと世間の狭さを実感した次第です。

 かくして山中に分け入る五人。しばらくは開けた道が続くのでわいわいと雑談しながら歩いていきます。私は性懲りもなくクマデを使って地下生菌を探していましたが、全然見つからないわ、気づいたら置いて行かれてるわだったので早々に切り上げました。

 道も変わり次第に森が深くなってくると特有の甘い香りがしてきました。さてさて何かいるかと探していくと皆が斜面の上を指差していました。

S女史「なんですかね、あれ」
青「マスタケの古くなった奴みたいですね」

 みな遠巻きに眺めていますが、斜面が急なことからそのまま通り過ぎるようです。そんな中で空気も読まずに登っていくのが私という人間なのです。ほぼ四つん這いになりながらザムザムと登っていけば、他の方(青fungiさん以外)も続いてきました。なんだ、やっぱりみんな気になってたんじゃないか。

 で、結局見つけたのは予想通りの古くなったマスタケ。まあこいつは写真撮らなくていいかなと思っていたら、S君とosoさんが何かを見つけました。少し横にそれた先にある立ち枯れの木に出ていたのはまたしてもナメコ。
 

 しかも実にいい個体です。このままスーパーの棚に並んでてもおかしくなさそうな状態。やはりナメコは可愛らしいキノコですね。これにはたまらず青fungiさんもやってきました。ちなみに横に出ているのはタヌキノチャブクロの老菌です。



 さらにすごいのが頭上の群生。傘も開いて立派な成菌がどっさりと生えています。なんでああいう見事な奴に限って手の届かないところに出るのか。手の届かないところに出るから、大きく成長できるだけなんですかね。

 さて、あとはこの斜面を下りるだけだな。できるだけ足場のしっかりしてそうなところを選んで下りていくと、S女史が滑り落ちていました。怪我がはなかったようなので何よりでしたが、こういうところでは降りるときにこそ注意をしなければなりません。……と言ってるそばから青fungiさんもこけてるし。やれやれみんな山道の危険性ってやつを、

足首「明日は我が身だ!」
私「ぐああああ!」

 油断した……。斜面を下りきって先に進もうとした矢先に足をぐねってしまいました。幸い以前のような深刻な捻挫でもなく、軽くひねった程度なので歩くのには支障なさそうですが、これは恥ずかしい。

oso「大丈夫ですか?」
私「大丈夫……男の子だから……」
青「まあこの場合成人男性の方が体重ある分、ひどくなりますけどね」

 ええ、よく知ってます。



 足首捻ろうがキノコ探しは続きます。続いて出たのは沢にかかる倒木から生えるクリタケでした。そういえばこいつも晩秋から生えるキノコでしたね。ここまで綺麗な状態で生えているのはなかなかお目にかかれません。


 赤みがかった褐色が特徴で傘表面には消失性の鱗片がついています。この鱗片が本当にとれやすいもので、こうして残っているのが見れると嬉しくなりますね。



 キノコを嗜むものとしてこういう物言いはよくないんでしょうけど、見るからに「食菌」って雰囲気のキノコです。食べられるぞオーラが半端ない。ただ近年では有毒成分が見つかったとかで海外では毒菌扱いなんだそうです。つっても少なくとも私の知る限りクリタケ食って中毒したって話は国内じゃ聞かないし、食べる人はもりもり食べてます。

 ふと見るとS女史が新鮮な個体を選んで採取していました。食べるには少ない量だと思っていたら持ち帰って絵を描くのだそうです。

S女史「描いていくのが覚えるのにいいって教わったもので」
私「あー、それはありますね」
oso「ですね、描くのが一番です」
S女史「お二人もイラストとか描かれるんですか?」
oso「ええ、描いてます」
私「…………」

 まあ、描いてはいるけど。あんまりキノコ関係ないしなぁ。



 

 ついで案内されたポイントで見つけたナメコの幼菌。傘表面がツブツブしているのがわかりますね。実はナメコもモエギタケ科のキノコだけあって傘表面に鱗片を作るのだそうです。しかしそれも生え始めたばかりのごく短い期間だけのことらしく、図鑑の写真でも見た覚えがないですね。これはいいものが見れました。

 

 個人的に今回一番お気に入りのナメコ。幼菌ももちろん可愛いのですが、ナメコといったらやはりゼラチン質のツバですよね。柄にツバをつけるキノコは数あれど、ゼラチン状のツバなんて持つのはナメコくらいのものです。傘が開いて、でもまだ虫にたかられていない。まさしくベストな個体だと思います。



 ブナ生といえばシラウオタケもそうですね。こいつもブナの倒木にしか生えず、藻類と共生している地衣類という側面を持つ面白いキノコです。キノコとしては珍しいほうですし、かつて見つけたときは大はしゃぎしたものですが、何分この後いくらでも出てきまして、ちょっと食傷気味です。おっすおっす。



 青いヤスデ。

 その後はムキタケのポイントを巡って典型的なムキタケ(オソムキタケじゃないほう)を撮れたとosoさんがご満悦だったり、青fungiさんが足元のクリタケ蹴っ飛ばしてブーイングされたりしてました。一方、私はというとムキタケは岡山のフィールドでも見れるので撮影を譲って、一人で別のものを探していました。狙うは一つ、クチキツトノミタケです。

 クチキツトノミタケはブナの朽木に生える虫草の仲間で、他の虫草に比べると秋の遅くに出る傾向があります。現にこのフィールドでも見つかったという話を聞いて、密かに探し続けていたのです。

oso「クチキツトノミならこういう倒木から……あ、あった」

 あっさり見つけられました。やめてくださいよ、あなたはもう何度も見てるでしょうが!
 これ以上先を越されてはならんとosoさんの見つけた材を私も調べていきます。クチキツトノミは同じ材から複数出ることがあるので、二匹目のドジョウが狙える相手なのです。



私「あった!」

 やったー! ついに見つけたぞクチキツトノミタケ! 希少種でもないのに私が探す時だけ姿隠しやがって! ざまーみろ!
 しかしこのクチキツトノミタケがまたえらい急斜面の途中から出ていました。足元の土は崩れやすいし、命綱ほしいレベル。そんな状態で必死に作業して掘り出していくと、

私「ギロった……」
oso「あー」

 もう宿主も見えて、あと一息というところで無念のギロチン。osoさんの話ではクチキツトノミはもともとギロチンしやすい上、ここの個体はかなり古くなっていたとのことでした。それにしたってこれで虫草採取のギロチンは4連続です。さすがに凹んできました。
 しかも時間的にはそろそろ帰らなければならない頃合いです。リベンジを挑むこともできずにこのまますごすごと帰るしかないのか。無念。

私「あ、もう一個いた」
oso「もう帰るよ」

 帰り際に未練がましく倒木を見て行ったらぎりぎりで一つ見つけることができました。しかしこれを採取したり撮影していたら時間が無くなってしまうので、やむなく周りの材ごと採取して家でクリーニングすることにしました。

 

 クリーニングしたものはこちら。右がギロチンしてしまった方で、左が最後に見つけた個体です。見てわかると思いますが、左の個体、結実部(ぽっこり膨らんでる部分)が妙に小さいです。右のギロチンしたものが典型的な個体なので、おそらく結実部を作り始めた途中で何らかの事情で成熟が止まってしまったようです。
 ……うん、これはもやっとするな。また来年探そう。


 結構な時間を歩いたと思ったのに、帰り道はあっという間に戻ることができました。単純にいいキノコが見つかるから時間がかかっていただけで、距離はそれほど歩いていなかったようです。駐車場で青fungiさんたちに感謝とお別れをして、私たちも山を下りました。
 青fungiさん、S女史、S君、本当にありがとうございました。
 また機会があったらよろしくお願いします。


コメント

ガガンボ (著者)
No.3 (2016/12/04 20:28)
>>アマニタ!さん
この時は採取しませんでしたね。やはり案内された場所というのは少し遠慮してしまいます。自分のフィールドで見つけたら採取するかもしれません。ただ自分のよく行くフィールドでは今のところ見てないですね。ブナ林でも大きな倒木があるような場所じゃないとだめなのかもしれません。

>>osoさん
綺麗に採れたのがよりにもよってこっちっていう。これが逆ならどんなによかったことか。クチキツトノミも来年の課題ですね。今いくつあるんだろう、課題。
青fungi
No.4 (2016/12/04 20:31)
うぽです。
 ナメコ傘表面のつぶつぶは俺も始めて観察した時感動しました。ああいう発見が図鑑だけでは味わえないフィールドワークの醍醐味のひとつですよね。
 そういえばまた近所のクヌギ林でシラウオタケの群生見つかりました。...もしかしたらブナ生じゃなくて他に条件があるのかも。
アマニタ!
No.5 (2016/12/05 18:06)
それにしても足は大丈夫だったんですか?
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