今日もキノコ日和

その43:晩秋キノコアンダーグラウンド

2016/11/26 00:47 投稿

コメント:8

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  • ガガンボ(東方手描き作者)
  • キノコ
  • 地下生菌

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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。

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 11月の二週目頃のこと。この頃になるとさすがに寒くなってきますね。しかし朝晩が冷え込む一方で昼間はやたら暖かかったりとなんとも落ち着かない天気です。私もコタツを出そうか出すまいかと思い悩んだ結果、キノコ狩りに行くことにしました。

 とりあえず困ったら山に行っとけみたいなところありますよね、こういう問題って。実際山に行って疲れて帰ってみた所、ここにコタツがあれば嬉しいなと実感するに至りました。出したその場で猫に半分とられたんですけど。

 さて今回のキノコ観察はずばり地下生菌探しです。先にあげた動画の中でも言及しましたが、最近購入した地下生菌図鑑の影響で自分でも探したくなってしまいました。我ながら新しいものにはすぐに飛びつくミーハーな性格です。

 ただ他にも地下生菌探しには理由がありまして、この時期はちょうどキノコの端境期でした。どうにもキノコって段階的に入れ替わっていくわけではないようです。梅雨キノコから夏キノコ、秋キノコから冬キノコと生える種類が変わるときには1~2週間ほどキノコが出ない期間が入ります。もちろん出遅れたものや先走ったやつが出ることもあるので全く見れないということもないのですが、こういう時期は歩き回ってもあまり収穫は期待できません。今のように寒くなってくると虫草の仲間も少なくなってしまいますしね。

 しかしそんな中で成熟期を迎えてくるのがこの地下生菌の仲間たちです。種類によってばらつきはあるものの、その多くは10月~11月に熟して胞子を作ります。他のキノコが不作の時期にちょうど地下生菌は旬を迎えるというわけです。キノコと虫草は発生時期がかぶっているのでどっちを探そうか迷うこともありましたが、これなら心置きなく地下生菌に専念することができますね。普通のキノコがないなら地下生菌を探せばいいじゃない。

≪ざっくり解説:地下生菌とは≫

 名前の通り地下~地表に生えるキノコのこと。有名なものでは海外のトリュフとか日本のショウロなどが含まれます。その最大の特徴は胞子を空中に散布しないということです。
 よく似た外見のニセショウロの仲間やホコリタケ、ツチグリなどは子実体内部に胞子を作り、破れた外皮から吹き出すことで外にばらまきます。しかし地下生菌と呼ばれるキノコはこのようなことはせず、他の生き物に食べられることで胞子を運んでもらいます。地下生菌の胞子は頑丈にできており、食べられても消化されず糞と一緒に排出されるのです。トリュフをはじめとする多くの地下生菌が持つ独特な臭いも掘り起こして食べてもらうためのものだと考えられています。
 そんなわけで地下生菌というのは系統的な分類ではなく、チャワンタケ型とかヒラタケ型みたいな形態による分類です。なので色んな科属のキノコが入り乱れているので、個別で見るとさらにさまざまな生態や特徴があります。



 さて地下生菌は上記の動画内(正確にはこれの後編)で説明した通り、クマデを使って落ち葉をかき分けて探します。地下に生えると書きますが、地表近くに顔を出していることも多いからです。地表に積もった落ち葉をどけることでそれらを探していこうというわけです。

 とはいえ知るとやるとでは大違いなのがキノコ狩り。切り通しの斜面の縁がいいとか、菌根を作る樹種の周りがいいとかいろいろポイントを教わってもなんかしっくりきません。どの程度の範囲をどのくらい時間をかけて探すものなのか。こういう部分は回数を重ねて身に付けて行くしかないでしょうね。



 探し始めてすぐに見つかったのはこれ。落ち葉の下の丸い塊。この感じは植物や石ではありませんね。こいつはさっそく来たか! 


 残念、普通のキノコの幼菌でした。割ってみると傘や柄が内部で作られています。まだ生える前だというのに申し訳ないことをしてしまった。すまぬ……すまぬ……。



 途中でちょっとアケボノドクツルタケに浮気したり。



 で、最初に見つけたのはやっぱりというかなんというか、こいつ。チチショウロでした。画像でも既に3つほど顔を覗かせていますね。こんな感じでこの辺りでは梅雨時期と秋の年二回、当たり前のように見つかるキノコです。ほとんど地面から出ているのもいますが、これでも立派な地下生菌です。一つ持ち帰ってみることにしましょう。



 次に見つけたのはコナラとマツの混成林の根元。根っこを挟むように丸っこいのが二つ出ていますね。まず最初にツチグリの開いてないやつかな、と思いましたが……。


 いやいや、ツチグリにしては埋まりすぎだな。それにツチグリはもっと崖土の斜面とか露出した環境が好きなはず。近くにもう一つ生えていたので試にその場で割ってみることに。


 まず外皮がかなり固くて、この時点でやっぱツチグリかなと思いました。しかしその内部は褐色の粉状になっています。ツチグリやニセショウロの仲間は成熟すると内部は粉状になりますが、その色は黒色だったはず。かなり怪しいぞ、こいつ。ということで一個採取。



 その次に見つけたのはマツの木の根元。1.5cmほどの大きさです。白い菌糸束が伸びているのも見えるし、こいつも地下生菌かな。よし、採取採取。


 そんなこんなで採取した三種を家に持ち帰ってきました。とりあえず軽く水洗いして泥をおとします。虫草と違ってざばざば洗えるのがいいですね。一つ一つ細かく見ていきましょう。



 まずはチチショウロ。こいつはまあいいだろう、と思っていたのですが図鑑で調べるとよく似た仲間にスイチチショウロというのもいるみたいです。違いはどうやら外皮の形状で、チチショウロは無毛平滑、スイチチショウロは低くて細かいイボがあるとのこと。左の画像を見る限りややいぼいぼしている感じですね。他には成熟してくるとチチショウロは褐色に、スイチチショウロは赤褐色になるという違いもあるようです。ただこのスイチチショウロ自体まだ仮称段階で学名もついていない状態なのでこれ以上はよくわかりませんね。


 なんとか撮れた胞子写真がこちら。チチショウロはこう見えてチチタケとかハツタケと同じベニタケ科のキノコ、要するに担子菌類です。キノコは大きく二つに分けて担子菌類と子嚢菌類に分かれますが、担子菌類は子嚢菌類に比べて胞子が小さい傾向にあります。これで約10㎛くらいの大きさですね。自前の顕微鏡では見るのがやっとでした。




 で、お次のこいつです。洗ってびっくり、外皮表面は細かいイボで覆われていました。この時点で見当がつきます。お前ツチダンゴだな! ツチダンゴというのは幼稚園児が遊びで作ったものではなくて、そういう名前のキノコです。タンポタケやハナヤスリタケなどのキノコに寄生されることで知られていますね。


 ツチダンゴから生えるタンポタケ(左)とハナヤスリタケ(右)

 ツチダンゴの仲間は地下生菌の中でも特に地中深くに生えることが多いので上記のような菌寄生菌を探すか、他の動物が掘り起こした跡から見つけるような相手です。それが今回見つけたものはたまたま上の方に出てきていたようですね。ラッキーラッキー。


 ちなみにツチダンゴの仲間は以前動画内ではしゃいでいた珍菌コウボウフデと近縁なんだそうです。コウボウフデが縁を結んだのかな。



 さてツチダンゴの仲間と言っても色々います。こいつは一体なんなのか。改めて断面をよく見てみると外皮の部分に大理石のような模様が出ているのがわかります。この特徴からこいつはアミメツチダンゴという種だと判明しました。

 ところでこのアミメツチダンゴ、冒頭で紹介した図鑑ではワナグラツチダンゴという名前で載っていて小さく「=アミメツチダンゴ」と併記されています。一体どういうことかと調べたり詳しい人に聞いたりしてみたところ、もともとアミメもワナグラも別種としてそれぞれに学名が付けられていたのが、後にアミメの方がワナグラの変種もしくは同種ということになったのだそうです。結果としてアミメの方の学名はワナグラの学名に統合され、この図鑑では学名に対応した名前ということでワナグラツチダンゴを載せただけとのことでした。学名と違ってキノコの和名にはちゃんとしたルールが特にないので、現状アミメツチダンゴ=ワナグラツチダンゴで名前は決まってないってことみたいです。

 ただワナグラツチダンゴって名前は埼玉にある和名倉山で見つかったことに由来するんだそうです。既にどこかで言っているかと思いますが、キノコの名前に地名を使っちゃダメです。大体があとあとうっとおしいことになります。由来になった発見地より他の場所の方がよく見つかるなんてしょっちゅうです。それに比べたら外皮の形態を表したアミメツチダンゴのほうがよっぽどわかりやすいと思います。ということで今後うちで取り扱うときはアミメの方で統一してまいりますのでよろしくお願いいたします。


 アミメツチダンゴの胞子はこちら。ツチダンゴは子嚢菌なので担子菌のチチショウロより胞子が大きいです。目盛一つ分くらいなのでちょうど20㎛。チチショウロの二倍くらいあるので観察も容易でした。




 さあいよいよ最後の個体、と意気込んで割ってみたのはいいのですがこいつ虫に食われてました。断面をよく見てみようとマクロレンズの焦点を合わせたら5~6匹のウジがうねうねと。動画にとって投稿したらどうなるかなと思いついたのを思いやりの心でねじ伏せました。

 まあ食べられちゃったのはしょうがないとして残った部分を見ていくことにしましょう。まず外皮の色は黄色でところどころ赤褐色、表面を脈のように菌糸束が覆っています。こすってみても変色性はなし。内部はかろうじて大理石模様がわかります。これらのことからショウロの仲間であるアカショウロであろうと判断しました。さてショウロは食用のキノコですが、アカショウロは食べられるんでしょうか。いや、こいつは食べる気にならないんですけど。


 楕円形で淡い褐色を帯びるのがこの仲間の胞子の特徴。図鑑の記述によるとアカショウロの胞子にはくちばし状の突起があるとのことでしたが、それは確認できませんでした。というか一緒に載ってる図鑑の写真でもどれがその突起なのかよくわかりませんでした。倍率とかの問題なのか、染色しなきゃいけないのか。謎です。



 そんな感じで地下生菌探しの成果はチチショウロ(スイチチショウロ?)、アミメツチダンゴ、アカショウロの三種でした。これはいいのか悪いのか、まだ探し始めたばかりで実感が湧きませんね。チチショウロ自体は前々から見ていたので新規は二種類といったところです。個人的にはなかなか見つけにくいツチダンゴの仲間が見つかったのが嬉しいポイント。もしかしたらハナヤスリタケとか菌寄生型の虫草も出るんじゃないかと新たな期待も高まります。

 ただこの地下生菌たち、ちょっと難点というか困ったところがありまして。実は今回の観察では動画も撮っていて、【地下生菌を探そう】みたいなタイトルで投稿しようかと思っていたんです。それが実際に撮影してわかったこととして、こいつら現地での判断がつかない。
これはもちろん私の勉強不足というのもありますが、それを差し引いても地下生菌は顕微鏡観察が重要な相手です。なので動画の中では「よくわからないので持ち帰って検鏡してみましょう」ばっか言ってます。これは動画には向きませんね。今後見つけてもブロマガ中心になると思います。トリュフみたいなわかりやすいのが来たら、やりやすいんですけどねぇ。

コメント

青fungi
No.6 (2016/11/28 22:01)
 うぽです。
 俺も、カエンタケから出てくる蛆とかテンプレや写真が結構行方不明な作成中の動画よりお手軽かな~って気持ちを優しみの心で押しとどめました。
 地下生菌、見つける腕もあるんでしょうけど、同行者がいるとなかなか厳しいんですよね。あんまり待たせても悪いですし。
 トリュフ、今くらいからが最盛期ですね。期待してます。
ガガンボ (著者)
No.7 (2016/11/28 22:44)
>>青fungiさん
その節はどうもです! 虫系はキノコやってたらいくらでも見慣れるんですが、世間一般ではグロ対象なのも多いから気を使います。カエンタケのウジとかはキノコバエつえー!って感動を他の人にも味わってもらいたいものですが。
地下生菌と虫草は一か所にとどまることが多いんで最初からそれ目的で動いてるならまだしも多人数のキノコ狩りではやりにくいですね。気づくと置いていかれてたり。トリュフ探します!
アマニタ!
No.8 (2016/12/02 18:02)
虫草や地下生菌も興味深いですね。今年は受験なので2回しかキノコ狩りに行ってないですが来年は行きまくりたいです。
ブクリョウ(子実体ふくめ)など見てみたいです。
私もアケボノドクツルタケとかツルタケ以外のテングタケ科があったら目的忘れてテングタケ科狩りしちゃいそうで怖い
(だからかなぁ、私の動画のタグに毒物狩りっついたのはw)
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