今日もキノコ日和

その42:秋キノコフレイム

2016/11/12 16:50 投稿

コメント:17

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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。

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 10月の始め、私は京都へ足を運んでいました。記事その30でもお世話になった青fungiさんからご連絡いただき、今回もキノコを案内してくださるというのです。さらには関西をフィールドにしている森屋さんも加わって、西日本の同志が揃いました。この三人が集まるのはいつかの京都御苑観察会以来ですね。
(森屋さんのブログ→http://kin0ko.exblog.jp/
(青fungiさんの動画→sm22271122


 さて京都のキノコと言ったら皆さんは何を思い浮かべますか?
 そう、カエンタケですね。
 そういうわけで今回は念願のカエンタケ観察会です。正直なところ地元でポイントを見つけたいという想いもありますが、いい加減ここいらで実物を見とかないと毒キノコ好きの体裁が保てません。それに発生環境を知ることは新しく発生地を探す手がかりにもなりますしね。

 当日は始発の電車で京都駅に到着し、車で来られた森屋さんと合流しました。駅での待ち合わせで毎回思うのは、出入り口の名前は東西南北で統一しといてほしいなってことです。「何とか通り口」と言われても、地方民にはその何とか通りがどういう位置にあるのかわかんないんですよ。大都会岡山の駅を見習ってほしいものです。

 まあそんなことはともかく、森屋さんの運転で集合場所へ到着。路駐が多いことで知られる京都も朝の早いうちはまだ動きやすいみたいです。青fungiさんとも合流し、朝の公園に中年男性三人が揃い踏みした形になりますね。キノコ狩り三銃士を連れてきたよ。



 青fungiさんの案内で入った遊歩道で最初のお目見えはアカヤマドリ。大きさといい、独特な外見といい、迫力のあるやつです。某自給自足の方の動画でも出ていたので知っている人も多いのではないでしょうか。


 他にもビロードツエタケとか。隣のはアセタケ科の何か。



 シロオニタケモドキなどなど、いい型のキノコが顔を見せてくれます。



私「クロラッパですかね?」
青「いや、傘裏が脈状になってるし、アクイロウスタケあたりですね」

 詳しい人がついてると心強い限りです。

青「最近はカエンタケも一時期に比べたら減ってきたんですよ」
私「ナラ枯れが落ち着いてきたんですか?」
青「いや、出そうな場所からは一通り出終わったって感じです」
私「はー。ああ、そういえばカエンタケって学名変わったんですよね」
青「変わりましたねぇ」
森「え、そうなんですか?」


 いつぞやの観察会では私とosoさん青fungiさんのキノコ談義に花が咲くあまり、森屋さんを置いてきたことに気付かなかったという失態を犯しましたが今回は大丈夫です。というか三人いて一人だけはぐれるようなら、それははぐれる方に問題があると思います。



 そのまま進んでミドリニガイグチを見つけた所で青fungiさんが道の横を指し示しました。

青「ここから斜面を下っていきます」

 毎回案内されて思うけど、この人割と道なき道を進むな。基本登山道や遊歩道から離れない私からしてみれば考えられない行為です。もちろん歩き慣れた山で地理に聡いというのもあるのでしょう。と、そんな感じのことを聞いてみたら、

青「まあここらは迷っても数時間歩けばどこかしらに出ますから」

 と笑顔で返ってきました。
 ないとは思いますが、くれぐれも迷わないでくださいね。


 一応私もちょっとした登山なら経験を持っていますので断崖絶壁ってほどでもないなら苦も無く下りることができます。適当な立ち枯れを見つけてはいの一番に見つけてやろうと先に進む青fungiさんたちの後ろでこそこそ探索。

青「あ、いましたね」
森「おー」

 そうこうしてるうちに先を越されました。


 

 やっと出会えました、これぞ最強の毒キノコ、カエンタケです!

 生えているのは苔むしたナラの立ち枯れの根元部分。しばらく雨は降っておらず、周りの土は乾いている状態でもコケのおかげで湿度を保てているようです。青fungiさんの話だと枯れて2~3年ほどたった木、朽ちているけど表皮が剥がれ落ちるほどではないあたりが狙い目なんだそうです。

おそらくこれには最近分かってきたカエンタケの生態が関係しているのだろうと思われます。実はこのカエンタケ、菌寄生菌らしいのです。要するにタケリタケとかヤグラタケのような他の菌類から栄養を奪って成長するキノコということです。

 ナラ枯れの原因にカシノナガキクイムシと呼ばれる害虫がいることはの動画でもご説明したと思います。このカシノナガキクイムシはある菌を持ち運ぶ習性を持っています。通称ナラ菌と呼ばれるこの菌(ナラタケとは違います)はカシノナガキクイムシによって樹木の内部に運ばれ、虫によって掘られた孔道に繁殖していきます。そしてカシノナガキクイムシはこの菌を餌にして増えていくのです。要するに自分で食料となる菌を運び、植え付け、育てているというわけです。

 なるほど、じゃあカエンタケはそのナラ菌に寄生しているのか。と早々に結論を出してはいけません。ナラ菌からカエンタケの間にもうワンクッションあります。それがトリコデルマ属の菌です。カエンタケはナラ菌に寄生するトリコデルマ属菌にさらに寄生しているのです。

簡単ににまとめると
①カシノナガキクイムシが木にナラ菌を植え付ける
②ナラ菌が繁殖して木が枯れる(カシノナガキクイムシは次の木へ)
③トリコデルマ属菌がナラ菌を食べて生長
④カエンタケがトリコデルマ属菌を食べて生長


 という流れのようです。枯れてすぐの木にカエンタケが出ないのもナラ菌やトリコデルマ属菌の繁殖を待っているからと考えられます。なんでそんなややこしい生態になったんだ。



 指で軽くつついてみました。中身が詰まってしっかりとした弾力です。
 華奢なベニナギナタタケとは全然違いますね。

 さてこうなったら自分で見つけたくなるのがキノコ屋の性です。教えられた環境を探しながらあちこち覗き込んで回ります。初めのものとは別に青funngiさんが見つけるのを横目に、私が見つけだしたのは


私「なんか変な虫がいた。コガネムシ」
森「オオセンチコガネですかね」
青「オオセンチですね。シカの糞についてるんでしょう」

 なんだお前、綺麗な見かけの癖にうんこ食ってんのか。早く言えよ。
 ……ちょっと触っちゃったじゃないか。


 こっそりウェットティッシュで指をぬぐいながら先を歩く二人に続いて移動します。念願かなってカエンタケが見れたのはいいのですが、これで満足とは言えません。まだ自分一人でで見つけられていないし、やはりカエンタケというからには見事に分岐した火焔型の個体に出会いたいものです。

森「ここ、生えてますね」


 言ってるそばから森屋さんが見つけました。これぞカエンタケと言うべき見事な個体です。不規則に分かれた姿はまさしく炎。図鑑などで見る手の指状という表現にもしっくりきます。



 しかも周りには大小さまざまなカエンタケがもきもきと生えています。今回一番の当たりポイントです。


 青funngiさんの話だと京都で見るのはこのような棒状の物が多いそうで、先のようなきれいな火焔型は珍しいのだとか。日ごろの行いの成果ですね。誰のとは言いませんが。



 今までのポイントを見るにどうやらこの硬質菌が出ている立ち枯れが狙い目のようです。次からこいつが出ているかどうかを確認しながら探していきましょう。



 せっかくなのでカエンタケの皮膚刺激性も確認しておくことにしました。危険だと思われるかもしれませんが、汁がついたところで最悪かぶれるだけです。体内に入れてしまわない限りはあの悪魔のような中毒症状は出ません。
※でもなんかあったら面倒なので真似しないでください。※



【東方毒キノコ講座】カエンタケに触ってみた【番外編】

 その時の録画をもとに動画も作ってみました。ただ遊び半分や動画の再生数欲しさにこのような動画を投稿したわけではありません。上記の動画内でも説明しているとおり、昨今のカエンタケ、ひいては毒キノコ全般に対する風当たりに思うことあってのことです。
 なおそれらに関しては動画の方で語っていますのでここでは割愛させていただきます。動画に誘導して再生数稼ごうとか全然そんなのじゃないです。本当です。信じてください。
 過去の自分を反省しつつ、これから何ができるかなぁと考える毎日です。



 

 ケロウジ。傘表面のささくれ状の鱗片と柄の基部が青みがかった黒色になるのが特徴。クロカワやコウタケなどと同じマツバハリタケ科のキノコです。ただこいつは肉が硬くて苦いらしく、図鑑では不食の扱いでした。美味い苦味とまずい苦味があるのです。


 その後一度駐車場に戻り、どこかで昼食をとろうということになりました。昼食中はカメラに残した画像や青fungiさんが持ってきた図鑑を眺めながらのキノコ談義。

森「最近インスタグラムにキノコ写真のっけてるんですよ。こんな風に」
私「おー、すげえ」
森「ただカエンタケはあんまり人気ないですね。なんでか知らないですけど一番反応よかったのはカレハオチバタケでした」
私「そこら辺で見れるのに、デザイン的なものですかねぇ。向こうじゃ確かカレハオチバタケのランプとかあるそうですし」

青「これがこの間、名古屋で見たソライロタ。あ、これは失敗した奴」
私「なんですか、今の?」
青「チチタケの乳液からゴム作ろうとしたんですけど失敗しちゃって」

 相変わらず挑戦してるレベルが違うな……。




 昼食の後に場所移動です。私は森屋さんの車で、青fungiさんは自転車で。着いた場所は高級住宅街のすぐそばにある山でした。軽く歩いただけで環境の良さがわかります。ここなら冬虫夏草の仲間も生えてそうです。夏場にじっくり探したいですね。

青「大阪の○○公園なんかもいいところです」
森「いいですよね。よく行きますよ、その公園」
私「○○公園……○○公園……」

 青fungiさんと森屋さんは関西を中心に動いているためか知っているフィールドも重なるようです。あまり地元から出ない、出るときは遠出する私は後ろの方で会話を盗み聞きしながら出てきた地名をメモってました。来年いっちゃろ。



青「そういえばこの間の日本菌学会に参加したんですよ」
私「マジですか! てか参加できるんですか?」
青「京都開催だったので。自転車ですいーっといって参加費払えば入れました」
私「あー、そういう感じなんだ。来年は覗いてみよう」
青「来年の開催場所は宮城ですけどね」


 遠い……。来年は虫草祭も東北開催なんですよね。さすがに遠いし、行けるかなぁ。こんなこと言ってるうちは行くんでしょうけど。まあ来年のことは来年考えましょう。

青「色々面白い話聞けましたよ。菌根の研究してる人でラン型菌根も本当は一方的な寄生じゃないんじゃないか調べてたり」
私「あー、人間にはわからないだけでキノコ側にもメリットがあるってことですか」
青「そうそう」
私「そういやラン型菌根作る菌もそれとは別に外生菌根作って栄養のやり取りしてますもんね。わざわざラン型菌根作る理由があるのかも」
青「っていうのを調べてるらしいです」

 ふい~、あぶねえあぶねえ。何とか話についていけた。ついこないだまで外生菌根と内生菌根くらいしか知らなかったけどたまたま菌根についてまとめたウェブサイトに目を通しといてよかったぜ。こうやって受け売りの知識を披露するのに一切の躊躇をしないのが私です。


 そんな具合にキノコ話に熱が入っていると、森屋さんの気配がありません。あれ、またはぐれてしまったのか!? と思ったら少し離れたところで斜面の上の方を見上げていました。何かキノコが生えていたのでしょうか。

森「あれってそうじゃないですか?」
私「どれ……はあ!?」


 これまた珍しい、倒木の上から生えるカエンタケです。こんな状態でも出るのかこいつら。青funngiさんの話で木のウロに出ることもあるとは聞いていましたが、このパターンは想像していなかった。完全に材上生じゃないか!


 

 材から生えるカエンタケ。どうやら立ち枯れの倒木が台風の影響で倒れたらしく、掘り返された根元よりこっちの方がいいと菌糸を伸ばしたようです。なかなか面白い画が撮れました。

 ただ急斜面の上にいるため、撮影するのにも一苦労です。美味いことバランスをとりつつ、カメラを構えていると何やら右手にムズムズとした違和感が。


私「うおおお! ヒルだ!」
青「あー、ヒル」
森「いましたか」
私「やったあああああ!」

 思わず歓声が飛び出ました。実はヤマビルって見たことなかったんですよ。うざいきもいとは耳にしていましたが、出会ったことがないのでむしろ見てみたいと思ってました。
 なるほど、これは確かに気持ち悪い! 

 森屋さんは過去に被害にあったことがあるそうで、苦笑いを浮かべていました。私の場合は手の上でまだ移動中だったので気づくことができたようです。これが歩いている最中のズボンの内側とかならまず気づかずに吸血されていたことでしょう。



 とりあえず実害もなかったのでそのままお帰りいただきました。一回見ることができたのでもう満足です。二度と現れるなよ。



 

 そこからしばらく歩くとこれまた面白いキノコを見つけました。カサヒダタケというキノコです。ウラベニガサ科の仲間で傘表面のしわが特徴。ウラベニガサの仲間はまだ分類が進んでおらず、正確に同定しようと思ったら傘表面の組織構造を顕微鏡で見たりしなければなりません。その点でカサヒダタケは外見的特徴で判断がつくとても優しいキノコです。ただ発生は少し珍しく、なかなか狙って会うことはできないやつですが。




 カサヒダタケを見て少し進んだところでこれ以上行ってもカエンタケは出ないだろうということで引き上げることになりました。結局見つかったカエンタケは全て青fungiさんか森屋さんに見つけられてしまい自力発見はできませんでしたが、憧れのカエンタケに出会うことができました。また発生環境を知ることができたのは大きな収穫です。来年以降は地元でも探してまわり、自分のフィールドを見つけていきたいところです。
 また今回案内された場所は先述の通り虫草にも向いた良ポイントです。梅雨時期や夏場に来れば面白いものが見れるんじゃないでしょうか。その時はまた人目を集めてじっくり探してみたいですね。ただosoさんは多分無理だろうなぁ……。

 あの人、ヒルが大嫌いだから。

コメント

haniwa0120
No.15 (2016/11/13 21:36)
はじめまして。毎回楽しみに見させてもらっています。カエンタケは鯉が窪湿原で発生しましたね。自分でも探していますが、岡山ではまだ県北でしか発生していないようです。南部の人間としては早く降りてきてほしいところです。
ガガンボ (著者)
No.16 (2016/11/13 22:24)
>>haniwa0120さん
新見市に出たんですね。新見……新見か。真庭の辺りはちょくちょく行くのですが、あまり西の方へは行かないのですよね。環境さえ合えば出ているとは思うのですが。岡山はどうにも県南と県北でキノコ格差があるので南の方でもいいのが出ないかいつも探してます。最近探し始めた地下生菌は今のところ南の方でよく見つかっているので期待が持てるかもしれません。
るねこ
No.17 (2016/11/14 22:33)
ヤマビルは絶滅しろよ。
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