今日もキノコ日和

その34:晩夏のキノコ狩り(虫草編)

2016/09/01 09:48 投稿

コメント:7

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  • ガガンボ(東方手描き作者)
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  • ハダニベニイロツブタケ

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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。

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 夏の気配も薄れ始め、朝晩はずいぶんと冷え込むようになって来ました。それでもまだまだ日中の日差しは強く、残暑の厳しさを伝えます。なのでキノコ狩りに出ることにしました。

 やってきたのは例によって県北にある行きつけの山です。できればキノコも虫草も見たいところですが、岡山は8月に入ってろくに雨が降っていません。(台風10号でちょっと降ったくらいですが、この日はそれより前の話になります)

 なので道すがらは軽く流す程度で虫草ポイントへ向かうことにしました。虫草の生える場所は雨が降らなくても湿っていることが常なので、必然ほかのキノコも見つけやすくなるでしょう。今回も虫草を見つけたら動画を撮ってやろうと画策しています。



 サナギタケ……と思われるもの。掘ってる最中にギロチンしてしまいました。なので100%サナギタケと断定はできないんですが、まあサナギタケってことにしておいてください。それほど珍しくなく、どころかよく見かける種なのですが、地下部の菌糸が切れやすかったり宿主のサナギがもろくなってたりと取り扱いの難しい奴です。

 このサナギタケ、色々と人工栽培の技術が研究されており実際にいくつかは実を結んでいるようです。身近なところだと焼酎の「金霧島」という商品に使われています。ただこれ、サイトなどを見ると『人工栽培の冬虫夏草を使った冬虫夏草酒』みたいなフレーズしかなく、ミスリードなんじゃないかと思ったり。以前あげた動画の説明部分で軽く触れましたが、日本で使われる冬虫夏草には二つの意味があります。

①狭義の冬虫夏草:オフィオコルジセプス・シネンシス(とその近縁種)
・元来の冬虫夏草はこれのみを指す。
・チベットなどに生え、日本での発生は確認されてない。
・高級漢方薬。めちゃくちゃ高い。

②広義の冬虫夏草:虫などに寄生するキノコとその仲間
・虫から生えるの全部。(クモタケもアリタケもセミタケもオサムシタケも)
・菌寄生菌=キノコに生えるキノコも含む。(タンポタケやハナヤスリタケなど)
・重複寄生菌=他の虫草にさらに寄生する菌も含む。(マユダマタケなど)
・普通種から希少種まで十把一絡げ。

 こういったことは一般にはあまり広まってないようなので、冬虫夏草といったら漢方を知っている人なら①の高級なやつと思ってしまうんじゃないかという懸念がありますね。私自身漢方には明るくないので、見当違いな心配かもしれませんが。まあサナギタケは広義の意味では冬虫夏草なので別に嘘はついてないし、サナギタケの名前を出したところで知らない人には通じないというのもあるのでしょう。
 このような混乱を避けるために最近は①の方をシネンシストウチュウカソウと呼んで、の方を虫草と呼ぶようにしています。虫草の知名度と合わせてこれらの使い分けも広めていきたいところです。

 ……まあベテランの人ほどあんまり使ってなかったりするんですけどね、この呼称。慣れた人は個別の種を指すときは学名か和名を使うのでそもそも混乱しないんです。



 帰り際に見つけた何か。何かはわかりません。虫草と思って写真を撮りましたが、実は全然関係ないかも。場所を覚えてしばらく置いてからまた観察に行きましょう。

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 車中泊をした翌日。いい加減車で寝るのも慣れてきました。夜になると涼しいのもあって睡眠時間はばっちり。逆に寝すぎて眠いくらいです。


 朝一で向かったのは渓谷沿いの道。岩壁にアカンソマイセス・ノボギネンシスが出ていました。小型のクモから発生する虫草でこのポイントではいくらでも見ることができます。



 中にはこんなやつも。宙ぶらりんの状態から発生したので菌糸が四方八方に伸びています。花火みたいでかっこいいですね。


 よく見たら菌糸の間にクモの足が伸びています。




 コナサナギかと思ってマクロレンズで除いてみると、どうにも色が違いました。緑色の分生子をつけたアナモルフ。聞くところによるとこれ、以前osoさんが見つけたハチの繭からでる虫草の不完全世代なのだそうです。その他詳しいことは一切わかりません。まだベテラン勢の間でも色々意見が分かれている奴です。


 ハスノミクモタケ。前回記事にした虫草祭で他人が見つけたものを見せてもらい、いつか自分でも見つけたいなと思っていたら思いのほかあっさりと叶いました。上で紹介しているノボギネンシスの出る環境にはこのハスノミクモタケも出やすいのだそうです。かといって別にノボギネンシスの完全世代というわけではないのだとか。まあ近いっちゃ近いらしいので発生環境も似てくるのでしょう。
 しかしこのハスノミクモタケ、薄暗い日陰のしかも高い場所に生えているので写真が撮りづらくて仕方ありません。そのくせ岩肌にくっついてるので採取もできないし。クモは外骨格が柔らかいので剥ぎ取ろうとすれば宿主が壊れてしまうでしょう。採取は見送りですね。


 目いっぱいがんばったマクロ写真。蓮の実状の結実部(子嚢殻を作る部分)がなんとかわかりますかね。三脚伸ばしてシャッター開いてどうにか撮れました。


 ハスノミクモタケを見た後は渓谷を抜け出して沢沿いの道、イヌガヤの群生を見つけたので葉っぱの裏をめくっていきます。以前osoさんに案内してもらったカイガラムシキイロツブタケとかもこういう場所に出るんですが、何かいないかなぁ~と探していくと、


 来ました! ハダニベニイロツブタケです! 初見虫草ヤッター!
 ハダニと名前にありますが、宿主はカイガラムシの仲間かな。極小の小ささですが派手な色合いのおかげで見逃さずに済みました。



 マクロで目いっぱい拡大したのがこちら。お灸のような赤い粒が見えますね。この葉っぱ以外にも複数の場所で発生を確認したので、この場所はハダニベニイロツブタケの発生地といって問題ないと思います。今までいくつか虫草は見つけてきましたが、再現性のない一期一会のものばかりでした。こうしてしっかり定着した発生地(こういうところを坪と言います)を見つけると成長段階などの定点観察も行えますね。いえーい。













 前から観察をしているサビイロクビオレタケ。……なんですが、最近になってこれ本当にサビイロか? と思うようになって来ました。どうにも見た感じの雰囲気が違うんですよね。今までみた固体はもっと小さくて華奢なイメージで色味も全体で統一された赤錆色でした。仲間内のチャットでも

私「トカチクビオレタケじゃなかろうか」
oso「アシグロクビオレタケかも」
どろんこ「サビイロクビオレタケの個体差だと思うけどなぁ」

 と意見が分かれておりました。
 なもんで、これなんか別のやつじゃないのかなぁ、と思いながら見ていると。











 本当に違うの生えてた。白い綿棒のようなものは重複寄生菌のマユダマタケです。このサビイロクビオレタケと思われる虫草にさらに寄生して生えています。この倒木に出ているサビイロクビオレっぽいやつは10本ほどいましたが、子嚢殻を作っているものは少なくほとんどが未成熟のままとまっていました。そのうちの数本が白い菌糸に覆われていたので、どうやら成熟前にマユダマにやられてしまったようです。
 こういうきれいな状態のマユダマタケははじめて見つけたので標本を採取しようと持ち帰ってクリーニングしてみたところ、


 これ、アシグロクビオレタケじゃね?
 アシグロクビオレタケというのは名前のとおり柄の株が暗色を帯びるクビオレ型の虫草です。サビイロクビオレタケより大型になるとのことで見た目の特徴は合致します。正確な判断にはやはり胞子の観察が必要ですが持って帰ったのはマユダマに寄生されたこいつだけ。次にいったときに残っていたら、胞子が出ることを期待して採取してみましょうか。そもそも宿主も掘らず胞子も見ずに判断するなんてどだい不可能な話です。



 甲虫の成虫から出た何か。おそらくコナサナギとかそこらへん。コナサナギタケは名前のとおり蛾のサナギに生える虫草ですが、時折こうしてガでもサナギでもないやつからも出るのだそうです。こういうやつは前にも一回見つけましたが、そんなに珍しくないんでしょうか?



 これも虫草っぽいけど、なんでしょうね。まだ未成熟みたいなのでそのまま残してきました。掘れば虫草かどうか位はわかりますが、どの道成熟してないと特定できないですしね。これまた様子見です。



 コナサナギタケ。まあいつも見かけるありふれたやつですが、ちょっといい型の固体だったので標本用に採取してみました。ところがこれをクリーニングしてびっくり!


 マユの中から出てきたのはサナギではなく幼虫でした。どうやら宿主がマユを作って、さあサナギになろうという段階で生えてきたみたいです。コナサナギは稀に幼虫からも出ることがあるそうですが、なかなか珍しいものだそうです。いいものが見られましたね。

 だからギロチンしてることに関しては触れないでください。


これまたクモ生のGibellula leiopus (ギベルラ レイオパス)。
中心の菌糸は黄色で伸びた先の分生子(クローン的な胞子)は紫色なのが特徴。前にクモ生でこれレイオパスか? なんかちげーな、となったこともありましたが、これは典型的な個体なので迷いませんね。こういう素直な子だったらおじさん大好きだなぁ。



 イヌガヤの裏をまた見ていくとカイガラムシキイロツブタケを発見。以前osoさんに見せてもらった種ですが自力で見つけられるとやっぱり嬉しいですね。これはだいぶ古いものらしく色がくすんできていますが、場所は覚えたのでまた旬の時期に見に行って見ましょう。


 こんなところで今回の観察は終了です。初見のハダニベニイロツブタケをはじめ、全方位ノボギネンシスや幼虫生のコナサナギなど面白いものも見れました。何より自分の坪を見つけることができたというのが一番の収穫です。今までosoさんやどろんこさんにはいい坪を案内されっぱなしで、「お前もそろそろどっかいいとこ案内しろよ」と脅される日々でしたがこれでどうにか紹介できる場所が見つかりました。岡山いいとこみなおいで!

交通費は当然自腹だからな?


コメント

ガガンボ (著者)
No.5 (2016/09/04 21:16)
無事に帰りました。

>>アマニタ!さん
キウロコテング! いいじゃないですか。私もきれいな状態のものは見たことがありません。独特なにおいがあったり変色性持ってたりとテングタケ科でも多芸なやつですね。実に羨ましい。

>>いぼがえるさん
カビとキノコの協会なんて人間が勝手に線引きしただけですからね。イルカとクジラ、ワシとタカみたいなもんです。子実体が目に見えるくらい大きいのは基本キノコでそれ以外はカビ(ただし例外は含む)ってくらい大雑把でいいと思います。

>>錦田さん
自分はついて行っただけで何か珍しいの見れるかなー程度の物見遊山でしたが、なかなかどうしていいのが見れました。虫草はセミ生のものが豊富でしたね。八丈島といったら外せない発光菌も見れたので大興奮でした。こちらもまたそのうちにまとめたいと思います。
アマニタ!
No.7 (2016/09/04 21:28)
テングタケ科だけにアマニタ!というユーザー名ですw。(ヴィロサでもよかったかなw。)
るねこ
No.8 (2016/09/05 00:06)
こんばんは。遠征お疲れ様でした。
私は福島でマヤサンに再会しましたがもちろんギロチンでした。4個体発見して2個体チャレンジしたんですが…
八丈島、ヤクシマセミタケとかありましたか?
報告楽しみにしています。
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