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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。
梅雨が明けましたね。こうなるとキノコは少しの間お休み期間に入ります。梅雨時期のキノコがいなくなって、やや間をおいて真夏のキノコが出てくる流れです。
そんな7月の終わり頃、私は一人レンタカーで駆り出していました。向かう先は岡山と兵庫の県境にある国定公園。週の始めに雨も降ったし、標高の高い山なら端境期も少しずれてるだろうと踏んでのことです。ブナ林の有名な場所なのでブナ生のキノコは見たいところですね。
さらに今回のキノコ狩りは裏で話を進めていた森屋さんとの合同観察会です。過去にシイノトモシビタケ観察や京都御苑のキノコ観察会などでお会いしていますが、実際に顔を合わすのはずいぶん久しぶりのこと。森屋さんは植物に精通し、フィールドワークの経験も豊富な方なのでいろいろ教わりながら歩けるでしょう。これは有意義な一日になることでしょう。
前日に森屋さんが風邪をひいてなければ、 きっとそうなったに違いありません。
ということで森屋さん欠席のためソロ狩りということになりました。いつもと変わらねーじゃねーか。いやもちろん仕方ないことなんですけどね。やはり何もこのタイミングで、と思わずにはいられません。この日はむしろ森屋さんとご一緒するのがメインといっても過言ではなかったのに。とはいえ無理をしてこじらせても大変なので、ここはご自愛いただいて私は一人で山へ向かうのでした。
……この山、クマ出るんだよなぁ。
途中で道の駅によって昼食を食べました。賑わう駐車場とはしゃぐ子供たちを見て、ああそういえば夏休みだったなと実感。もっとも目的地に国定公園まで行く人は少ないらしく、現地の駐車場も広々使えました。さすが国定公園だけあって生い茂る木々は見事なもので、遊歩道も整備されているのが助かります。道は森の中を流れる沢沿いに作られているため湿度は十分。これならキノコだけでなく虫草も期待できそうですね。
最初に見つけたのはウスヒラタケ。名前の通り肉厚も色味も薄いヒラタケの仲間です。ヒラタケが冬場のキノコなのに対して、ウスヒラタケは夏のキノコ。ヒラタケ同様食用のキノコですが、季節と肉質のせいか劣化が早いので注意が必要です。
ここまで来たらもう食べないほうがいいですね。びちゃびちゃで虫がたかっていました。
これくらいならまだ食べられるでしょう。私は食べる気しませんが。
それほど珍しいキノコでもなく、低地の里山でも見られるのですがこれはちょっと面白いやつです。右端の一つが中心生になっています。普通ウスヒラタケは側性といって傘の横側に柄が伸びます。うちわみたいな形を想像していただければわかりやすいでしょうか。ところがたまに材の真上に向かって生えるときは、このような傘の中心から柄が伸びる中心生の個体を見ることができます。出会えたらちょっと嬉しい。
サビイロクビオレタケ。今まで未成熟な個体は何度か紹介してきましたが、これは綺麗に子嚢殻ができている成熟個体。子実体がある程度成長してくると途中で折れ曲がり、そこに子嚢殻が作られるのが「首折れ」という名前の由来です。なんでそんなところに作るのかは謎。そのままてっぺんに作ったらいいんじゃねーの? と毎回思います。
子嚢殻のアップ。白い糸はたぶんクモかなんかのです。
なんかのイグチ。ここは国定公園の特別保護区なんで採取はもちろん傷つけるようなことも禁止されているので変色性とかは確認できません。うーん、もどかしい。
倒木に出ていた黒いキノコ。最初はクロチャワンタケか? と思ったのですが違いますね。茶碗型というより皿型、いや大きさ的にビョウタケのほうが近いか……。
ためしにネットで見たまんまの「クロビョウタケ」を検索してみたら出てきました。やってみるもんです。まだ仮称段階のキノコで載せているのは『北陸のきのこ図鑑』くらいなのだそうです。深山の広葉樹倒木上に出るという特徴は一致しますね。これでいいでしょう。
ヒメベニテングタケ。傘開いてるのは見ませんでしたね。残念。小柄ですがきれいなキノコで好きな奴です。こいつもブナ帯で見る気がしますね。
クサハツ。臭い。
マメザヤタケ。まあブナ生のキノコっちゃそうなんですけど……うん。おっすおっす。
シロウロコツルタケかな。変色性見れてないけど。
ヌメリツバタケ。これもブナ生のキノコですね。以前はヒダがまっすぐなものをヌメリツバタケ、しわくちゃになっているものをヌメリツバタケモドキと分けていましたが最近ではどちらも同種として扱うようになっているそうです。モドキの方は日本固有種と言われていたのですが、個体差のうちだったようですね。
ヒキガエル。
クチベニタケ。いつも古くなった残骸を見ることが多いのですが、これはまだ鮮やかな色合いが残っていますね。こうして見ると本当に一部だけ真っ赤で名前の通りのキノコです。
さてさて、ここまでの収穫はまずまずといったところでしょうか。ただブナ生のキノコもそこそこ見れていますが、なんというか見知ったやつが多いですね。せっかくなんだからもうちょい珍しいやつにも出会いたいところです。なんてちょっと欲張りなことを考えながら歩いていると、道からそれた先の倒木に何やら出ていました。
なんだろ? 側性で傘裏はヒダになっている。何となく革質系の雰囲気ですが、カイガラタケ系とはちょっと違うような……。いや待てよ。もしかして……。
出ました! ムカシオオミダレタケ!
やったー! 前々から見たかったんですよこいつ! そういやこいつもブナ生のキノコでしたね。まさかここで出会えるとは! これは嬉しい!
傘の表面には羽毛状に分岐した毛に覆われてボサボサしてます。
傘裏は放射状~迷路状のヒダを持っています。「大乱れ」の名前はこのわちゃわちゃしたヒダからついたのでしょうが、こいつらはちょっと素直な個体ですね。
そして念願の確認作業。傷つけないくらいの力加減で触ってみると……、
ブニブニしてるー!!!
指を押し返す弾力はゴムのようで実に柔らかい。これが本種の最大の特徴です。というのもこのキノコ、こんななりをしていますがキクラゲ類の仲間です。そのため全体がゼラチン質でできていて色味もやや半透明がかっています。形はホウロクタケ属などに似ているのに、胞子を作る担子器はヒメキクラゲ属のものに近いという非常に特異な存在です。これらの特徴が進化的に古いものであることから「ムカシ」という名前が付けられました。
まだまだ続くブナ生ラッシュ、こちらはクチキトサカタケです。クチキトサカタケ属のキノコで一属一種。要するにこの属のキノコはこいつだけです。その上日本特産なのだそうです。この何とも言えない渋い色彩はどう表現したものでしょうか。図鑑では灰緑黄色と書かれていました。たぶん写真見てないとなんのこっちゃわからんでしょうね。
お次は倒木から出ていた虫草です。この周りに群生していて、おそらく10本以上出ていたと思います。ただどれもこれも未成熟で子嚢殻の観察はできませんでした。
宿主はコメツキムシの幼虫みたいですね。しっぽの先の二つに分かれた突起が特徴です。採取はできないのでこの後また埋め戻しておきました。
帰ってからosoさんに聞いてみたらブナ帯に出ることや宿主がコメツキムシの幼虫であること、未成熟の子実体の様子からおそらくクチキツトノミタケだろうと教わりました。クチキツトノミは自力発見がまだの相手なので成熟個体に出会えなかったことが悔やまれます。
……いや、成熟してたら採取できずに歯噛みしただろうし、これはこれでよかったのかも。
タケリタケ。東屋の近くに生えてましたけど倒れちゃってました。心無い人に蹴られたのかな? 自分がされたらどうなるか考えてみてほしいものです。タマヒュン。
オオツルタケ。名前の通りでっかいツルタケです。柄にだんだら模様があったりしてけっこう絵になるキノコです。一応毒キノコらしいんですけど、詳しいことはよくわからないです。まあ食べないほうがいいでしょう。
最後に見つけたベニタケ科のキノコ。なんでしょうね。傘表面が粉っぽい感じ。
といった具合でこの日のキノコ狩りは終了しました。ブナ生のレアキノコも見れたし、虫草も見れた。上々の成果と言えるでしょう。惜しむらくは歩きなれない山だったので時間配分を上手くできなかったことですね。怪しいところをもう少し集中して探せば朽木生の虫草なんかはもっと見つかったんじゃないかな、と思います。そういう意味でももう一人分の目があればまた結果は違ったんじゃないかなぁと思います。
あーあ、もう一人いたらなぁ。
コメント

No.15
(2016/08/07 22:38)
ガガンボさんかと思ったらガガンボさんだった
毎回勉強になります
毎回勉強になります

No.16
(2016/08/07 22:39)
>>sui-setzさん
おっしゃる通りクロサイワイタケ科のマメザヤタケです……。たぶん典型的なスリコギ状だなぁと思いながら書いてたんで、それに引っ張られたんだと思います。記事の方修正しておきました。ご指摘ありがとうございます。
おっしゃる通りクロサイワイタケ科のマメザヤタケです……。たぶん典型的なスリコギ状だなぁと思いながら書いてたんで、それに引っ張られたんだと思います。記事の方修正しておきました。ご指摘ありがとうございます。

No.17
(2016/08/07 23:00)
>>11
京都の伏見稲荷行って自分で触ってくれば。あそこはカエンタケのメッカだとか
京都の伏見稲荷行って自分で触ってくれば。あそこはカエンタケのメッカだとか
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