今日もキノコ日和

その31:梅雨キノコスプラッシュ

2016/07/20 00:06 投稿

コメント:10

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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。

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 前回の京都遠征の翌日、今度の私は高速バスに揺られて県北に向かっていました。今回の目的は以前から定点観察を続けているキノコの様子見です。以前行ったときではまだ幼菌が出始めていた状態だったので、そろそろ成熟してることかなと会いに行くことにしました。

 と、言いますか、前回幼菌を確認したのはこの日の一か月ほど前の話。相手は子嚢菌の中でも息が長いほうですが、正直そろそろやばいかもしれない頃合いです。この日を逃せばおそらく来週にはもう残っていないでしょう。

 バスから降りて予約していたレンタカーを借りました。この時私の手違いで予約がちゃんと行えていなかったんですが、常連のよしみか代車を回していただき事なきを得ました。二時間かけて何もせずに帰る羽目になるとこだった。危ない危ない。

 車に乗って40分ほどかけて入口に到着。その山自体いいポイントがいくつもあるんですが、とりあえず目当てのキノコまで一直線。寄り道は帰りにすることにしましょう。



 暑さと湿度に辟易しながらも登りきるとまだしっかりと残っていました。なんとか間に合ったようですね。



 数年前から定点観察を続けているシロキツネノサカズキ……の仲間です。






 立ち枯れに群生する本種。ピンク色に見える部分は全部キノコです。


 シロキツネノサカズキというのはシロキツネノサカズキ属のキノコでよく似た仲間にはシロキツネノサカズキモドキというのもいます。春から初夏にかけて出るのがシロキツネノサカズキで、晩秋から早春に出るのがモドキの方。他にもモドキは胞子が小さく、椀の口部分が裂片状になるといった違いもあります。

 時期的に見ればこれはシロキツネノサカズキの方なのでしょうが、図鑑などの写真と見比べると以下の点で相違が見られます。

●群生する
●柄が短い
●毛が荒い
●色が淡い橙色(サーモンピンク?)


 ただこれらに関してはそれほど自信を持って言えるものじゃないんですよね。私自身が本家のシロキツネノサカズキをほとんど見たことがないもので比較ができないのです。とりあえず典型的な表記と照らし合わせるとって感じです。



 胞子を吹き出す瞬間を激写。ちょっとわかりにくいですかね。画面中央やや左よりの白っぽい靄が胞子です。これは動画も撮影できたのでそちらの方を載せておきます。



 とりあえず今年もなんとか成菌の観察に間に合いました。胞子を吹き出す動画が取れたのはちょっとした収穫でしたね。今までデジカメの動画撮影機能はほとんど使ったことがなかったので手間取りましたが。何はともあれ、あとは他のキノコや虫草を探しながら下山することにします。




 粘菌。ペンキをこぼしたみたいに鮮やかです。



 

 サクラタケ。淡いピンク色~赤紫色の可憐なキノコです。柄の部分を指ですりつぶすと大根みたいな臭いがします。しました。



 クロハツから出ているのはヤグラタケ。キノコに生えるキノコで菌寄生菌といいます。この山では毎年見ることができるんですが、こいつはちょっと珍しいやつでした。



 というのもクロハツがまだだいぶ若いんですよね。普段よく目にするのはもっと真っ黒になって半分溶けてるようなやつなんですが。そんな元気な株にも寄生できるのか。



 テングツルタケ。まあここら辺はいいですかね。オッスオッス。




 倒木から何か出てるな……どうせまたコブリノマメザヤだろ? と思ったのですが、どうにも様子がおかしい。ルーペで根元を見ると何かの虫穴から子実体が伸びています。



 で、引っぺがしてみるとこれ虫草だ! 何か甲虫の幼虫(キマワリ?)からVの字状に子実体が伸びています。うーん、なんだお前? 子嚢殻などは見当たらず未成熟個体のようです。ここから特定するのは難しいな……。一応持って帰って追培養してみよう。



 

 オニイグチの仲間。一本だけでまだ若いやつなので変色は見ずにおきました。やっさしー。



 

 崖の壁面に出てるクモ生いろいろ。(画像クリックで拡大)名前はよくわかんないです。
 虫草ではなくてただの虫カビとかも混じってるかも。




 

 前にサビイロクビオレタケと思われる幼菌を見た場所に行ってみたんですが、こんなのばっかりになってました。子嚢殻らしきものはどれにもついていないのですがどれもボロボロ。気温や湿度が合わずに不稔のまま終わっちゃったのかな。残念。

 この他にもいろいろ見つけはしますが、腐っていたりカビていたりするキノコも多数ありました。やはりこの時期のキノコは劣化が早いですね。イグチやベニタケなんかはすぐに別の菌に覆われてしまいます。どうせならいっそあいつがいないかなぁ、と思ったところ。



 いました、タケリタケ
 インパクトのある名前と見た目ですが、こいつもヤグラタケと同じキノコに生えるキノコの一種。こういう形のキノコなのではなくてテングタケ科、イグチ科、ベニタケ科のキノコの表面を別の菌が覆い成長を阻害された結果が上の形です。言ってしまえばキノコに寄生して奇形にしてしまう現象一般をまとめてタケリタケと呼んでいるわけです。



 拡大すると表面につぶつぶしたものが密集しているのがわかりますね。これは成熟した虫草でも見られる子嚢殻(胞子を作る器官)です。ルーペなどで観察するとよくわかりますよ。

 やましいことは何一つないので見つけた
 ときはじっくり観察してみてください。


 タケリタケを見つけてからしばらく進むとスギ林に出ました。スギの植林がされている場所はキノコ的にはあまり出会いがないのでさっさと通り抜けようと思っていると何か淡い色彩が目に引っかかりました。



 これ、虫草じゃね?

 石段の隙間から顔をのぞかせる子実体。その表面には確かに子嚢殻が確認できます。しかも色の違和感があったとはいえ、立った状態から見つけられるほど立派な大きさ。こいつは名のある虫草に違いありません。この時点では無学ゆえになんなのか見当もついていませんでしたが、宿主を見れば図鑑で調べられるだろうと掘ってみることにしました。

 その結果。

 ギロチンしちゃった……。

 ぎゃああああああああ! やっちまったああああ!

 ギロチンとは虫草観察の際に最もやってはいけない行為の一つであり、同時に最もよく起こる事故。ありていに言えば宿主(寄生されてる虫)と子実体を切り離してしまうことです。地面から生える地生型の場合、ギロチンをしてしまうと宿主を見つけるのが非常に困難になります。実際この時も土に埋もれた宿主にはたどり着くことができませんでした。

 虫草採取を行っていればみんな一度は経験するようなことですが、罪悪感が半端ないです。こんなことなら余計なことせずそのままにしておけばよかった。ああ、いっそ見つけなければよかった。己の未熟さゆえに虫草を何の役にも立たない残骸に変えてしまった申し訳なさが重くのしかかります。名前もわからない虫草よ。すまん。せめて少しでも胞子を飛ばしてくれ。

 私は切り離された虫草の結実部を天高く掲げ、その場でくるくる回りました。いや、こうしたらちょっとでも胞子飛ぶかと思いまして。別に気がふれたわけじゃありません。


 しっかし、結局こいつはなんだったんですかね。まあ宿主もわからない状態ではさすがに判別できないだろうとは思いますが、一応osoさんたちに聞いてみました。


oso「マヤサンエツキムシタケだよ!!!!」
どろ「マヤさんですねぇ」

 わかるんだ。何この人たち、こわ……。

 教わった名前で図鑑を調べたところ確かに結実部の特徴とスギ林に発生するという特徴が合致しました。なんで若干osoさんが切れているのかというと、どうも探している虫草の一つだったみたいです。そういえば京都歩いてる時もそんなこと言ってたような言ってなかったような。それをギロチンしてしまったとなればどれほど口汚く叱責されるのかと底冷えするような恐怖が湧きあがりました。ところが予想に反して返ってくる言葉は優しいもので

oso「だろうね」
どろ「ですよねー」

 あれ? わちき許された? どういうことかと聞いてみたら、このマヤサンエツキムシタケめちゃくちゃ採取難度の高い虫草だったみたいです。手持ちの図鑑で見てみたら全部に「採取が難しい」と明記されてました。どんだけだよ! とにかく地中の菌糸が細く枝分かれして、その一本一本が非常にもろくて切れやすい。思い返せば私の時も掘るのに邪魔な手前の小石を動かしたら、その小石に菌糸が癒着しててあっけなく切れたという終わり方でした。石をどかさなければ掘り出せない、石を動かせば菌糸が切れる。どの道あれは掘り出せない相手だったのでしょう。


 じゃあ仕方ないか。

 いつまでも過去を引きずってくよくよしてはいけません。今回の失敗をバネにして次への成功へ活かせばいいのです。私は気分を一新して次の獲物を探すことにしました。
(この時はまだosoさんたちに名前を聞いてないので、何の理由もなく気分を切り替えてました)


 そうして歩いているとスギ林はヒノキ林へと変わりました。どの道キノコは望み薄だな、と思っていたらまたしても発見。

 我ながら不思議ですが歩きながら見つけることができました。皆さんはどこに何が出ているかわかりますか?



 正解はこちら(クリックで画面拡大推奨)



 もう何度か出たのでおなじみですね。ツブノセミタケです。詳しい説明はその27の記事で行っているのでそちらをご参照ください。上手く見つけることができたのはまだ若い子実体が白くて目立ったのに加え、やはり過去に実物を目にしていた経験が生きたのでしょう。図鑑だけの知識では視界にひっかけてくれなかったと思います。

 しかし……どうしたもんかなぁ。というのが見つけた私の感想でした。実はこの時すでに帰りのバスの時間が迫りつつあり、残りの下山も含め一時間ほどしか猶予がなかったのです。聞いた話によればツブノセミタケは宿主が地中深くにもぐり、細い菌糸が伸びるというこれまた採取難度の高い虫草。osoさんたちも小一時間ほどかけて採取したと語っており、その苦労を私にもぜひ体感してほしいと笑顔で圧力をかけていました。

 帰りの時間を考えれば使える時間は40分。かなりぎりぎりの一発勝負です。しかしここにきて逃げることはできません。曲がりなりにも経験を積んだ虫草屋としての誇りにかけて、私はこの強敵に挑みました。いざ、勝負!



 10分で採れました。
 あれ? え、こんなもん? なんか、さんざん前向上してたけどこんなんでいいの?

 ……。
 …………。
 ……………………。
 楽勝じゃん。なんだよなんだよ、みんなしてさー。プレッシャーかけちゃってさー。ちょっとオーバーなんじゃないの~? もー、ホントやめてよねーそういうの。いやそれともあれかな。これも私の採取力のなせる業かな。ほら、サイヤ人って死にかけたらパワーアップするじゃないですか。一回マヤサンエツキムシタケで失敗したことで私の秘められたパワーが覚醒してウンヌンカンヌン――。

 要約すると運も実力のうちってやつです。日ごろの行いがいいかんね!



 採取の実録動画がこちら。03:12まではカメムシタケ。ツブノセミタケは03:14から。
 自分の声って録音して聞くとすげえ気持ち悪いですね。




 

 イグチの何か。最初はコガネヤマドリタケかと思ったんですが柄の上部に網目ないし、管孔に褐変性があるので違いますね。キニガイグチ、にしては管孔が濃色過ぎる気がします。

 そんなこんなで無事下山できました。時間的にも余裕があり帰り支度ものんびりと行えました。この日登った山はもともとキノコ的にはいい場所だと思っていましたが、虫草もけっこう見ることができたのはよい収穫です。どちらかといえば私はキノコ屋よりなのでついついキノコに目が行ってしまいますが、一回虫草に集中して探すのもいいかもしれませんね。マヤサンエツキムシタケにはもう一度挑戦して、次こそはリベンジ成功してみたいところです。

 ツブノセミタケはもう採ったので挑戦しません。


コメント

森屋
No.9 (2016/07/22 09:02)
例の件、メール送っておきました。
たぶん新しいメアドからになっておりますので
迷惑メール扱いになっていなければ良いのですが。
ガガンボ (著者)
No.10 (2016/07/23 01:04)
>>青fungiさん
自分も正直マヤサンってどんな奴だったっけとほんわかしたイメージしかなかったんですが、あーあれねーわかるーと話を合わせておきました。場の空気を読む大人のスキルですね。

>>森屋さん
確認いたしました。梅雨も抜けて晴れ間ばっかりですし考えなしに動いて失敗しないようにしたいと思います。
中岡ナオキ
No.11 (2016/08/07 01:39)
癒やされました。
キノコ…キノコ…良い…。
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