今日もキノコ日和

その30:梅雨キノコダッシュ!

2016/07/17 05:28 投稿

コメント:16

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  • ガガンボ(東方手描き作者)
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≪注意≫
このブロマガはキノコ屋見習いの観察をまとめたものです。実際の同定に利用できるものではありません。
記事内容に訂正・補足がある場合はコメント等でご指摘いただければ幸いです。
なおキノコの正確な判別は経験者でも間違えるほど難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添って
もらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死にます。

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 7月第二週の土曜日、私は始発電車に乗り込み一路京都へ向かっていました。ことの始まりは一週間前、前回の遠征の前日にかかってきた電話からでした。

私「はい、○○です」
青「え!? あーっと……ガ、ガガンボさん? ですよね?」


 あ、しまった。うっかり本名で名乗ってしまった。まあ別に隠すようなものでも相手でもなかったからいいのですが、それよりかける相手を間違えてしまったかもしれない懸念の中、「ガガンボですか?」というすっとんきょうな質問をしなければならなくなった相手の心情が慮られます。

 電話の相手は京都で何度もお世話になっている青fungiさんでした。ブロマガでも度々ご教授いただくキノコ屋さんでツキヨタケの人工栽培を行ったりとかなりハイレベルな方です。その青fungiさんによるとなんと京都でミミブサタケが発生しているとのこと。ミミブサタケといえば子嚢菌の中でも大型になることで知られる珍キノコです。私も今まで見たことがなく、以前から見たいと思っていた相手です。それを以前話したことを覚えてくださったようで、この度ご連絡いただいたわけです。こいつは行くっきゃないね! 翌日の遠征で会ったosoさんにも話し、一週間後の京都遠征が決まりました。

 そして一週間後。また深夜バスで行こうと思ったのですが岡山から京都は近すぎるせいか深夜便はありませんでした。仕方なしに始発電車に乗り込み京都についたのが7時着。電車で2時間くらいか、近い近い。

 ただ心配なのは空模様。京都を含む西日本はこの一週間まるで雨が降らずもう梅雨開けたんですかヤッターってなもんでしたが、よりにもよってこの週末に大雨の予報です。今回は晴れ男のどろんこさんもいないし不安が残ります。京都駅前で合流したosoさんなんてもともと前日の疲れが残っていたこともあって辞退しようかと迷ったほどだそうです。まあ来ちゃった以上はもう仕方がありません。お互い腹をくくることにしましょう。

 休日とはいえ朝早くということで道路は空いていたのでスムーズに目的地へ到着。青fungiさんと合流しました。顔を合わせるのはけっこう久しぶりな気がする。地元民ということもあってすごいラフな格好で来られてました。

 軽く挨拶を済ませてから、というか挨拶をしながら山へ向かって歩き始めました。最初に見えてきたのは苔むした石垣で、ここにはクモタケがよく出るのだとか。



 というかいました。石垣の間やその上の地面からそこかしこに顔を出しています。このひょろっと伸びた薄紫色のがクモタケです。地面に穴を掘って巣を作るトタテグモに寄生しています。図鑑などでは斜面から顔を出す写真で知られていますが、このような直立しているものもいくつも生えていました。


 このくらいの大きさ。色が薄紫なんで湿った地面に出ていると目立って見つけやすいです。


 根元のアップ。白い蓋のようなものがわかるでしょうか。これは宿主のトタテグモが作った巣の蓋の部分ですね。トンネル状の巣の入口に扉をつけるので戸立蜘蛛。

 何気にクモタケは初だったのでいきなりテンションが上がりました。いるところにはいくらでもいる普通種なのですが、私のまわるフィールドでは全く見たことがありません。自力で見つけたものを採取させていただきました。



 掘り出したのがこちら。その場では面倒だったので土ごと掘り出しました。


 これを綺麗にするとこうなります。根元の白く膨らんだ菌糸の中に宿主のクモが入っているのですが、さすがにそれを引っぺがすのは手間なのでこのまま乾燥させて標本行きです。菌糸を取り除いた写真は図鑑などを買えば見れますよ。(ステマ)

 この後クモタケはいくらでも見つけることができました。こんなに生えてたらトタテグモ全滅するんじゃないかと思いましたが、青fungiさんによれば毎年このくらい出るのだそうです。クモも虫草も大した繁殖力だと感心しきり。




 近くの倒木から出ていたホオズキタケ。乾くと硬くなるそうですが新鮮なうちは弾力があり、ブニブニしています。クロサイワイタケ科のキノコです。

 この他こっちはこっちでかなり珍しいマユハキタケなども案内していただいたのですが、雨雲がだいぶ分厚くなってくらいのと雨粒がうっとおしいので写真には収めず。後になってもったいないことしたなぁとちょっと後悔しました。

 そこから青funngiさんの後ろに続いて山の中を突き進みます。万が一はぐれたときのために地図まで用意していただきました。もっとも出会うキノコには顔見知りが多く、特に立ち止まることなく歩き続けたので出番は来ずじまいでしたが。こうして歩き回っているとキノコ狩りだなぁ、としみじみ思います。虫草の場合、這いつくばってじっくりじっとり探すのでエコノミー症候群になりそうなくらいですが、それに比べるとさくさくと歩き回って実に健康的です。

 と、さくさく歩いてきたのはいいのですがここで残念なお知らせ。どうやら雨が降るまで続いていた晴天のせいでミミブサタケがダメになっていたようです。もともと子嚢菌類は息が長いものが多いのですが、温度差からの土砂降りにはさしものミミブサもやられたようで、元気な状態なら胞子を飛ばす音が聞こえるくらい立派な子実体がずいぶんと貧相なものになっていました。週の始めの快晴と今日の雨降りが逆ならよかったのに、と嘆いてもこればかりは仕方ありません。キノコは出会いもの、諦めて次へ行くことにしました。

 本命の不発という残念な事態に気落ちする一同。案内役の青fungiさんも申し訳なさそうな顔ですが、そんな中でも目の光を消していない人がいました。osoさんです。というかこの人、実は一人別のターゲットに狙いを定めていたのです。それは虫草のヒメクチキタンポタケ。虫草の中では普通種として知られるキノコですが、地元では全く見つからず私もosoさんも探し回っている相手の一つです。虫草は生えてるとこにはバカみたいに出るけど生えないところには全く生えないという連中なので図鑑にある普通種とかはあんまりあてにならなかったりします。

 そんなヒメクチキタンポタケが京都では多数発見されているということで、osoさん的にこの日の本命はそちらだったようです。それならばと虫草が出ていそうな沢沿いを重点的に探すことになりました。時刻は9時頃、10時をピークに強くなると予報された雨は次第に粒の重さを増やし、厚い陰が周囲を包み込んでいました。

oso「あったー!」

 そんな中に響き渡る歓声。この人いっつも叫んでんな。



 osoさん念願のヒメクチキヤンポタケ発見! これは断面図をあとから撮らせていただいたものですが、寄生されているキマワリの幼虫から分生子(減数分裂をしていないクローン的な胞子。種イモとかムカゴみたいなもの)が出ていることがわかります。材を掘るまで完全に埋まっていた部分ですのでこれは拡散するのが目的ではなく、材の中に菌糸を伸ばし感染確率を上げる狙いなのではないか、と青fungiさんが言ってました。私はへーって聞いてました。

 探し求めた相手に出会えて喜びも一入なosoさんでしたがここで雨脚は最高潮。写真撮影もままならないので、雨が弱まるまで他に出ていないか探すことにしました。



 木の下で雨宿りしてるヒグラシ。奥にいるのは傘をさした青fungiさん。

 結果がどうなったかというとそこはいつものパターンでお察しください。結局生えていたのはosoさんの見つけた一つだけでした。それも少し古くなっていたそうなので時期的に遅く、ギリギリ間に合ったというところなのでしょう。

 待望のヒメクチキタンポタケにも出会えたのでosoさんも満足げ。次は狙いを変えて気生型を探していこうということになりました。

oso「こういう環境ならヤンマタケとかシャクトリムシハリセンボンとか絶対いますよ。……あ、いた



 ええええええええ!?

 あまりのことに何のネタかと思いましたが、指差す先を見ればそこには確かにシャクトリムシハリセンボンの姿が。なんちゅう巡り合わせだ……。物欲センサーどこいった。



 この枝から伸びてるブドウの実をとった残りかすみたいなのがそれです。これは撮影のため下に持ってきましたが、実際はこれが頭上の枝に紛れて生えています。その小ささと保護色に加え、頭上の枝から出るという生態から虫草の中でも発見難度トップクラスの一つ。見つけた人の多くもほとんど偶然見つかったというパターンなのだとか。どろんこさんに標本を見せられた時は(これは自力発見は無理だろうな……)と半分諦めが入ったものです。

 全く予想外の出会いにテンションが上がる私とosoさん。若干置いてけぼり感のある青fungiさん。こうなったら探すっきゃありません。雨も弱まってきたのでもう一度周囲を見て回ることになりました。

 果たして私は自力で見つけることができるのか?
 またいつものパターンで終わってしまうのか?



 見つけちゃうんだなぁ、これが。
 いざというときはしっかり実力を見せていく、それが私という人間なのです。まあぶっちゃけ本当に見つかるとは思ってなかったので、目に入った時は変な声出ましたけどね。嬉しさのあまりステップも踏みましたよ。ヘイヘイ♪

 のちにosoさんが言うところによると、満面の笑みで相当気持ち悪かったとか。全く失礼なことを言う人です。天真爛漫で無邪気な可愛らしい笑顔じゃないですか。ただちょっと30過ぎたおっさんっていうだけで。



 フラッシュをたいたらちょっとわかりやすいかな。でも実際薄暗い森の中で探したら本当にただの枝ですよ。今回見つけられたのも、直前にosoさんが見つけてくださったおかげで実物を見れたというのが大きいです。キノコでもそうですがやはり実際に目で見るというのが一番の勉強になります。



 下におろして撮影。茶褐色のが寄生されているシャクトリムシ。棘のように伸びている白い菌糸には粒状の子嚢殻がいくつもついていますね。成熟具合もばっちりでベストな個体です。やったね! すごいね!



 家に持ち帰ったのがこれ。気生型の何がいいってクリーニングの必要がないってことです。採取自体もハサミ一本あればいいし、見つけさえすればこんなに楽な相手もいませんね。


 この二つはいつものようにフリーズドライにするのではなく、乾燥剤と一緒にしてゆっくり乾かすことにしました。シャクトリムシハリセンボンの方は立体的な標本にしたいですね。


 本来の目的だったミミブサタケは少し残念でしたが、それを補って余りある大収穫です。ミミブサは来年以降も会えるでしょうが、シャクトリムシハリセンボンは来年も見つかるとは限りません。雨の中を歩き回ったかいは十二分にあったと言えるでしょう。聞けばこのポイントはキノコ的にも腐生菌が多くみられる場所なのだそうで、またじっくり探してみたいですね。


 これ以上ないほど堪能したところで下山することにしました。帰りは来た道を戻るのではなく途中から別ルートへ。雨もすっかり上がったので足取りも軽く、キノコトークに花を咲かせながらの行軍となりました。


私「そういやヒイロタケって染物とかに使えるんですってね」
青「はい。オレンジ色に染まりますよ」
私「鉄腕DASHで見ました」


 折しもこの日の前の週ではテレビ番組「ザ!鉄腕DASH!!」でキノコ特集をやっていたのでした。毎週視聴している身として、何よりキノコ屋として楽しみにしていた内容でしたが……、

青「あれ、番組の中でキサケツバタケって紹介してましたけど、
  
違いますよね」
私「
ですよね!!


 いや、あれは違うだろと見ながらずっと思ってたんですよ。そもそもキサケツバタケのサケツバとは星形に裂開するツバからついた名前です。その特徴的なツバもないし消失跡も見えなかったあれがキサケツバタケとは到底思えません。

私「あと食べごろのオオゴムタケを採取とか言ってましたけど、あれ食べごろ   じゃないですよね」
青「古いですよねぇ」


 これはオオゴムタケを実際に食べたことのある経験者としての意見ですが、番組中に出てきた個体は食べるのには向かないかなりの老菌です。きちんとした若い状態なら外皮をむいた中身は綺麗な白色で全くの無味無臭。しかし番組中でメンバーが食べたのは色も濁ってるし何よりキノコの臭いがするとの感想でした。たぶんあれ、もう腐り始めてるんじゃないかな……。

 その他ヒラタケのことをエリンギの仲間と説明したりするのにもちょっと気になりましたが、まあこれは個人的な感覚ということで置いとくとして、何より気になったのは
「わからないものは採らないようにしよう」
 という松岡くんの英断に対し、「食菌を逃してしまった」と煽るようなナレーション。これはキノコ狩りに置いて非常に危険な考えです。

・せっかくだから
・もったいないので
・ものは試しに


このような考え方はキノコ狩りにおいて禁物です。貧乏根性を出した結果が一家全滅となっては目も当てられません。自然を見直し自然に触れ合おうという趣向がまた増えつつある昨今、同時に自然の厳しさや恐ろしさも広く知っていただきたいと思います。毒キノコによる中毒記事が出るたびに悪役にされるのは物言わぬキノコたち。真に忌むべきは無知無学な素人の採取によるものということを今後も訴えていきたいところです。


 なお誤解なきように申しあげておきますが、鉄腕DASHは大好きで長年見続けている番組です。毎週欠かさず見てるのはこれくらいじゃないかと思います。なのでキノコに関してはもう少しちゃんとしてくれたらなぁというボヤキでした。ダッシュ海岸みたいに専門家を呼ぶとかしてくれたほうが安心ですね。
 
青「でもそれじゃあ誰呼ぶんだよって話になりますけどね」
私「あー、まあねぇ……」


 専門家もピンキリな界隈です。




 

 帰り道で見つけた変な奴。モモイロダクリオキンとかそこら辺と思ったのですが、柄ができているように伸びています。まあ不定形なやつだし、たまたま妙な形になっただけかもしれません。




 

 キアシヤマドリタケ。ヤマドリタケの仲間は若いとき管孔を白い菌糸で覆っているのが特徴ですね。これは柄の網目もしっかり見えたいい個体。ヒュー、かっこいい!





 青fungiさんが見つけたツブノセミタケ。尾根筋なんて湿度なさそうな場所に生えてました。こいつの出る場所ってあんまり虫草に向いてなさそうな気がするんですが、多年生なんで湿度のある時期にゆっくり成長して、そうじゃないときは休眠でもしてるんでしょうか。

 自分でも探してみましたが他の個体は見つからなかったので採取はしませんでした。osoさんや青funngiさんはどうにか私に掘り出させたいようでしたが、それなら私より先に見つけないでください。悔しいでしょうが。



 アカハテングタケ。正式な和名はタマゴテングタケモドキと言いますが、ぶっちゃけこの名前はキノコ屋からは大変不評なのでアカハと呼んだほうが通りがいいです。アカハって言い続けてたら和名変わんねえかなぁ……。変わんねえだろうなぁ……。



 そろそろ山の出口、というところで出会ったのは何とも美しいトキイロヒラタケ! この淡い赤色のなんと優美なことでしょうか。名前の通りヒラタケの仲間で食用のキノコ。ただ美しい色合いは退色が早いので新鮮なうちでしか見れないこと、すぐに硬くなってしまうこと、粉っぽい風味があることなどから養殖などはされていないようです。


 魔理沙も乗ります。材はフジの木ですね。osoさんによるとフジから出ていることが多いのだそうです。



 ローアングルから。色調補正したように見えるでしょう? どころか生で見るともっと鮮やかです。ここら辺は写真の限界というか、単純に腕前の問題です。


 トキイロヒラタケをカメラに収めて登山道の出口に到着しました。まだ昼を過ぎたばかりで時間的には早いのですが、今日はこここまでということになりました。こんだけ見られたらもういいでしょう。キノコ的にも虫草的にも大満足の一日でした。やはり神社仏閣が多い京都は鎮守の森も保存され、街中の里山でもいい環境が残っているのでしょう。全くうらやましい限りです。

 その後は近場の喫茶店で昼食をとって解散となりました。山装備の三人組にはそぐわないようなおしゃれな店内でしたが、気にすることなく舌鼓を打ちました。
 そういう人の目を気にする段階はとうの昔に過ぎています。


コメント

青fungi
No.14 (2016/07/18 21:04)
 ギャップ萌えかー。動画にとってMADにでもすべきでしたかね?曲はごちうさOPあたりで。
 トキイロヒラタケの生えていた蔓は一昨日見に行ったら地面に倒れていました。アレがクライマックスだったみたいですね。
 ともあれ天気悪い中お疲れ様でした。
ガガンボ (著者)
No.15 (2016/07/19 03:42)
>>Pixiさん
順番が前後しまして申し訳ありません。図鑑を眺めるというのはある意味一番安全で健全な付き合い方かもしれません。移動費や装備品にお金もかかりませんしね。ただちょっとした公園とか近所の里山みたいな身近なところにもキノコは顔を出しています。生キノコを見つけてそれを図鑑で調べてみるというのも面白いですよ。ズバリ判別できた時の快感ときたら。全く分からなくて、なんでこんなの見つけちまったんだとイライラすることも(よく)ありますけど。

>>青fungiさん
その節はお世話になりました。ミミブサタケは来年お願いします。(厚顔無恥)MAD作ったらミリオン余裕です。
青fungi
No.16 (2016/07/20 06:52)
 ミミブサ、来年はもっと出始めで見つけて連絡できるようにしますね。今年は予想よりはやくて、下見が追いつかなかったですし。
 あとは、なんかまたレアいの発見できたらですかね。
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