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(遺稿)小説『主電源・ロシアン・ルーレット』

2018/07/26 17:57 投稿

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(以下、故人・小説家ともなりたかひろの『遺稿』より抜粋。

この作品には、現在の時局にそぐわない表現が含まれていますが、故人の意向を汲み、『遺稿』通りに掲載致しました。)

ハハノシキュウ君へ捧ぐ

「―――――」

∽ replay (繰り返し)

リモコンがなくなる夢

テレビからは、昨日、録画しておいたドラマではなく、から騒ぎしているバラエティー番組が永遠と流れている。しかし、それを消すリモコンがない。ので、その映像の「うるささ」を止めることが出来ない。かといって、その番組内容の破廉恥さから、窓を開けて、人の助けを借りる気も起きない。

と同時に、CDコンポからは、なぜか、高校野球の実況が流れている。しかも、永遠に9回2死満塁の実況が。それを消すリモコンがない

この2つの「夏のようなうるささ」だけで、もう、気が狂いそうだ。そこにさらに、室内の熱さが加わる。クーラーをつけようとする。だが、やはり、そのリモコンもない

どうしよう、どうしよう、と思い、「音の熱さ」で気が触れそうになっている私の眼は、たこつぼ配線にいく。たこつぼ配線に挿入された、4つのコンセント。4つとも、スイッチがオンになっており、オレンジ色に光っている。

これを押せば、主電源が切れて、この「音の熱さ」は静まるはずだ。

しかし、その配線自体が複雑に絡み合っており、どのコンセントが、どの電気機器と繋がっているのか、分からない。そんな状態。

そして、そのうちの1つは、パソコンと繋がっている。引き抜こう、と思うが、ふと、迷いが出る。もし、そのコンセントのうちの1つがこのパソコンと繋がっていたならば、このパソコンのデータは消えてしまう。そう思うと、怖い。

――ああ、この主電源の全てのコンセントを抜いてしまったら――

■Stop (停止)

議長さん「――抜いてしまったら、……」

副議長さん「抜いてしまったら、なんですか? ――秘密事は、だめですよ?」

司令塔さん「そうですよ。『夢』で見たことを、つまり、潜在意識に隠している、【邪心】を、打ち明け合い、【浄化】することによって、【最終解脱】する、ことに、この【孤島プログラム】の意義があるのです」

議長さん「……そうですね。……抜いてしまったら、パソコンにかき集めていた、エロ画像が全て消えてしまう、と思い、起きたら、……勃起しておりました」

副議長さん&司令塔さん「――そうですか、【邪夢】ですね」

議長さん「……情けないです……、まだ、【俗世】の欲望が消えていないとは……」

副議長さん&司令塔さん「――まぁまぁ、まだ、【時が満ちていない】ということですね」

議長さん司令塔さんは、どんな夢を?」

司令塔さん「……実は、夢を見なかったんです。……なにせ、どうも、この熱さですから、寝むれませんでして…」

副議長さん「……実は、わたしもなんです…眠りが深かったようで…」

議長さん「……そうですか。やはり、我々三人とも、【修行】不足、ということですね。この熱さも、【導師様】の【啓示】なのかもしれません」

▶forward (巻き戻し)

〈登場人物〉

議長さん ……宗教団体〈トイレの底からこんにちは教〉の一員。過去に、娘を■■■されて殺されたことからというもの、自身の【性的なるもの】への【邪念】を【浄化】するため、【信者】として【入信】する。しかし、……本当は……。前述の通り

司令塔さん ……宗教団体〈トイレの底からこんにちは教〉の一員。ずっと小説家としてデビューすることを夢見ていたが、ある編集者の人に、持ち込みの際、「君の小説がどの賞にも引っかからない、っていうことはさ、君に価値がないのではなく、出版して、世間にバレてはまずい、重要な世界の真実が描かれているからだ、とこう、考えられませんか?」と過去に言われ、その言葉に納得し、その後、「出世」から小説を書くことを辞め、宗教団体〈トイレの底からこんにちは教〉に【入信】し、【導師様】の【教え】の通り、ただ自分が「真実だ」と思われる小説(?)を、シュルレアリスム的に書き起こしている。……しかし、本当は……。

副議長さん ……宗教団体〈トイレの底からこんにちは教〉の一員。過去に、ある理由から、ずっと「引きこもり」生活を送っていたが、宗教団体〈トイレの底からこんにちは教〉に【入信】してからというもの、自分では、外の世界へ出れた、と思っている。……しかし、本当は……。

◀ play(再生)

 荷物を運んでいる途中、足場の不安定さから、【副議長さん】が、よろめき、すべり落ちそうになった、が、【司令塔さん】が、とっさに、手を差し伸べた。

 助けられた【副議長さん】は、少し頬を赤らめて、こう言った。「――あ、ありがとうございます」

 しかし、【司令塔さん】は、安らかな顔をして、「――【反省は敵】ですよ。今日も【われらのために修行しましょう】」と言った。

それを見ていた【議長さん】は、複雑な顔つきになり、二人にこう提案した。

「――今、【副議長さん】が倒れたのって、もしかして、最近、あまりモノを食べていないからではありませんか?」

「……それもあるとは思いますね、確かに」と【副議長さん】は真顔で答える。「それに、――あまり言いたくないことですけど、この、……なんていうんですか、天災レベルの酷暑が続いたせいもあるかと思われます」

「おそらく……」と【議長さん】は深刻な顔で、「……おそらく、導師様】がついに【】になられたからですよ。まったく、【向こう側】の世界は、酷いものです」

=pause (一時停止)

――そうだよ、次は、【司令塔さん】のターンだよ、君の想像力の通りさ、ああ。

≧rewind (早送り)

(食料倉庫にて、の一幕)

副議長さん「――なぜ、無人島なのに、こんなにも、ゴミだらけ、なんでしょう?」

議長さん「…おそらく、潮の流れで、【向こう側】から、流れついているんでしょうね」

副議長さん「――しかし、【われら】の【本部】が、【向こう側】にも残っているんですよ?まったく、【東端列島】は、どうなってしまうのでしょうね」

(そう二人が話している間、【司令塔さん】の目に、流れ着いたごみの中から、『スパゲティーの紙袋』があることを発見する)

議長さん「お湯、もう、ダメですね。臭いです。腐ってます。捨てるしか、ないですね」

副議長さん「ここのところの、【ポア】レベルの、殺人的な暑さのせいで、雨が全く降りませんでしたものね」

司令塔さん「今日から、風呂なし、ですね」

≧rewind (さらに早送り)

(カセットデッキを中心に、三人、足を重ねて、【瞑想】という【修行】をしている。カセットデッキから、【導師様】の【御声】が流れてくる。そして、それを三人は、復唱する)

――太陽が近づいてきている

二重の闇に気づくべし。二重の闇、ということは、闇を闇だと知らない状態のことだ。極端な話、闇を、バラ色だ、と勘違いしたまま、ということだ。

夢は最後の個人情報である。》

――ガリガリな亡者たちが集まる《バビロン》から《最終逸脱》し、《われら》は《バビロン》から《箱舟》に乗り、《約束の地》を目指し、出発する、そんな《太陽の季節》が、近づいている。

=pause (一時停止)

◀ play(再生)

(【導師様】の【御声】を聞いて、泣いている【司令塔さん】)

副議長さん「――はは、やっぱり、【司令塔さん】は、感受性が豊かですね」

司令塔さん「いや、あはは。ぐすっ。やはり、【導師様】の【御声】は、端的に、心に響いてくる言葉ですよね。……全てを書き留めよう、と思っていた自分が、恥ずかしい限りです」

議長さん「――それが出来ていれば、今頃、売れっ子の【小説家】、になっていたかもしれませんね」

司令塔さん「……いや、それでいいのかもしれない。そんな売れっ子の【小説家】になんかなっていたら、【俗世】にまみれていたでしょうから」

(きゅるるるる、という音がする)

議長さん「ん?」

司令塔さん「あ、テープが絡まっているんですね、テープが。伸びてしまっているんですよ」

議長「――これって、どうすれば治るんですかね?」

司令塔さん「……。分かりません。いや、――正確には、思い出せません。昔、教わったような気がするのですが…」

副議長さん「では、【第一本部】に【要望】を出していただくしか、ないですね」

≧rewind (早送り)

(トラックにて、食料倉庫に向かう、一行)

司令塔さん「……やっぱり、食料は、来ていませんね…」

副議長さん「……やっぱり、食料は、来ていませんか…」

司令塔さん「明日から、水だけ、ですか」

副議長さん「その飲料水だって、あと、3、4日ですよ。【第一本部】は、いったい、何を考えているのでしょう? このままだと、餓死ですよ?」

議長さん「これも、【導師様】の【意図】があってのことなのでしょう――」

副議長さん「なんの【意図】ですか? それも、【孤島プログラム】の【一環】ということなのですか?」

議長さん「……そうに違いないですよ。この猛烈な熱さだって、おそらく、【導師様】の【お怒り】、いや、有り難き【啓示】なのですよ、きっと。罪深き【われら】のための……」

司令塔さん「――とにかく、運びましょう。こんなことを話していても、無駄な時間を浪費するばかりです。――【われら】のためにがんばれなくなります」

「【われら】のために【修行】しましょう」

「【われら】のために【修行】しましょう」

「「「はぁ…。」」」

=pause (一時停止)

「指令がきました」

「本日も【われら】のために【修行】しましょう」

「本日も【われら】のために【修行】しましょう」

(食料倉庫に、行く。〈処理済み〉と書かれたシールが貼ってある、水の入ったタンクと、なにやら砂状のものが詰め込まれてある、3kgほどの袋が2つ)

「食料、ですよね?」

「……小麦粉、でしょうか?」

「……小麦粉と、水、だけでしょうか?」

≧rewind (早送り)

「やっぱり、うどん、でしょう、小麦粉と行ったら)

「でも、しょうゆ、も、だしも、ないのに、うどん、つくっても…」

「じゃあ、パスタは、どうです? パスタなら、塩だけでも、いけますよ」

「うどんとパスタって、作り方、違うんですか?」

「水の分量とか、塩を入れる、とか」

「塩? 潮を入れたら、うどんでしょう?」

「パスタも、塩を入れますよね?」

「卵も、練り込みますよね。昔、テレビで見た記憶があります。」

「入れないでしょう、…入れないはずだ、入れないに違いない! 第一、卵なんて、どこにあるんですか? 否! それより、【導師様】の御言葉をお忘れですか? テレビなんて見ていると馬鹿になるんですよ!」

(かけだす)

「あ、どこへ行くんですか?」

「ど、どうしたって言うんですか?」

「…確か、この辺に…。…あった‼」

(品名:スパゲティー 原材料名:小麦粉 と裏に書いてある)

「は、ははははっ! やっぱり、僕の想像力は、間違ってなかったんだ‼ 小麦粉ですよ‼ 小麦粉だけで、良かったんですよ‼ そうだ、塩も、卵も、要らないんだった…、やっぱり、そうだった」

「――でも、味付けとか、茹でる時は、塩は必要でしょう?」

「(ふふ、と笑って)塩ならば、ほら、いくらでもあるじゃないですか」

(【司令塔さん】、泣き出す)

「「ど、どうなされたんですか、【司令塔さん】…?」

「……すみません、今こそ、わたくしめは、お二人に、【懺悔】しなければ、なりません……。……実は、……実は、わたくしは、夢を見たのです…。しかし、あまりに、情けなくて、今の今まで、言えなかった……。今こそ、お話致します…」

▶forward (巻き戻し)

リモコンがなくなる夢

テレビからは、昨日、録画しておいたドラマではなく、から騒ぎしているバラエティー番組が永遠と流れている。しかし、それを消すリモコンがない。ので、その映像の「うるささ」を止めることが出来ない。かといって、その番組内容の破廉恥さから、窓を開けて、人の助けを借りる気も起きない。

と同時に、CDコンポからは、なぜか、高校野球の実況が流れている。しかも、永遠に9回2死満塁の実況が。それを消すリモコンがない

この2つの「夏のようなうるささ」だけで、もう、気が狂いそうだ。そこにさらに、室内の熱さが加わる。クーラーをつけようとする。だが、やはり、そのリモコンもない

どうしよう、どうしよう、と思い、「音の熱さ」で気が触れそうになっている私の眼は、たこつぼ配線にいく。たこつぼ配線に挿入された、4つのコンセント。4つとも、スイッチがオンになっており、オレンジ色に光っている。

これを押せば、主電源が切れて、この「音の熱さ」は静まるはずだ。

しかし、その配線自体が複雑に絡み合っており、どのコンセントが、どの電気機器と繋がっているのか、分からない。そんな状態。

そして、そのうちの1つは、パソコンと繋がっている。引き抜こう、と思うが、ふと、迷いが出る。もし、そのコンセントのうちの1つがこのパソコンと繋がっていたならば、このパソコンのデータは消えてしまう。そう思うと、怖い。

――ああ、この主電源の全てのコンセントを抜いてしまったら――。

 抜いてしまったら、これまでの文章が全て消えてしまう……。

 そして、もう、自分の想像力では、何も書けなくなってしまうかもしれない。文字一つ、漢字を書き起こせなくなってしまうかもしれない。

■Stop (停止)

「――という夢を見ていたのです。……ですから、先ほど、【うどん】と【パスタ】の区別に関してや、あるいは、【パスタ】は、どうやって作るものなのか、あるいは、【パスタ】の【原材料】はなんだったのか、等について、そもそも自分の想像力で構築できなくなってきた気がして、あれほど、取り乱してしまったのです……。……いいえ、それだけでは御座いません……。引いては、カセットテープの治し方に関しても、覚えていたはずなのに、自分の想像力で構築できなくなりつつある自分に気づいた時から、わたしの困惑は始まっていたのです……。ぐす、ぐすっ」

「――そんなに泣いて食べては、もっとしょっぱくなってしまいますよ、あはは」

「…す、すみません。――それにしても、うまい、ですね」

「まさに、海のあじ、ですね。海そのもののあじ、といいましょうか。――まぁ、貝の味が、ちょっと、じゃり、っときますし、見た目は、どちらか、と言えば、焼うどん、ですけど」

「……あはは、すみません。包丁で切ったもので

「そうだ、今度は、シーフードパスタを、作りましょうよ。周りには、タコとか、ウニとか、いっぱいいますし」

「野菜を採って、練り込めば、ヘルシーかも。裏の斜面には、ヨモギとかがありますし」

「しかし、【導師様】の身体を通して【浄化】されていないものを食べては、【ドグマ】に触れることになりはしませんか?」

「そんなことはないですよ。忘れたんですか? 【われら】という【種】は、彼ら生き物という【種】を食べてあげることによって、つまり、【種】と【種】が交わることによって、彼らと【われら】は【同化】し、新たな【類】へと進化するのではありませんか。これがイニシエーションであり、【われら】の【ディープエコロジー】なのです」

∽ replay (繰り返し)

――遠く、浜辺から、熱い、熱い、と言って、【侵入者】たちが、【上陸】してくる。そりゃ、そうさ。……起承転結で言えば、そうなるだろう、――そうだよ、次は、【副議長さん】のターンだよ、君の想像力の通りさ、ああ。

▶forward (巻き戻し)

リモコンがなくなる夢。

テレビからは、昨日、録画しておいたドラマではなく、から騒ぎしているバラエティー番組が永遠と流れている。しかし、それを消すリモコンがない。ので、その映像の「うるささ」を止めることが出来ない。かといって、その番組内容の破廉恥さから、窓を開けて、人の助けを借りる気も起きない。

と同時に、CDコンポからは、なぜか、高校野球の実況が流れている。しかも、永遠に9回2死満塁の実況が。それを消すリモコンがない

この2つの「夏のようなうるささ」だけで、もう、気が狂いそうだ。そこにさらに、室内の熱さが加わる。クーラーをつけようとする。だが、やはり、そのリモコンもない

どうしよう、どうしよう、と思い、「音の熱さ」で気が触れそうになっている私の眼は、たこつぼ配線にいく。たこつぼ配線に挿入された、4つのコンセント。4つとも、スイッチがオンになっており、オレンジ色に光っている。

これを押せば、主電源が切れて、この「音の熱さ」は静まるはずだ。

しかし、その配線自体が複雑に絡み合っており、どのコンセントが、どの電気機器と繋がっているのか、分からない。そんな状態。

そして、そのうちの1つは、パソコンと繋がっている。引き抜こう、と思うが、ふと、迷いが出る。もし、そのコンセントのうちの1つがこのパソコンと繋がっていたならば、このパソコンのデータは消えてしまう。そう思うと、怖い。

――ああ、この主電源の全てのコンセントを抜いてしまったら――。

 自分の想像力は去勢されてしまう。忘れた記憶を思い出してしまう。

「……誰?」

「あ、申し遅れました、ワタシ、アケル窓、という者です、あ、本名なんですよ、今、流行りのハーフタレント的な、アレで、ああ、引きこもりの方には、分からないかもしれませんよね、失礼致しました、ええっと、ですね、漢字で書くと、『アケル間戸』、です、この、名刺通り」

「――知っているわよ、テレビはつけっぱなしにしてるから

「それはそれは、失礼致しました、ごめんなさい、――窓、開けましょうか? ちょっと部屋の空気がかなりこもっているみたいですし。あ、ダジャレじゃないですよ」

「……」

「外はすごくいい天気ですよ?」

「……何しに来たの?」

「『支援』ですよ、ええ」

「……もしかして、国の人? あんた」

「――そうですね、ええ」

「…あれでしょ、国が、引きこもりを更生させる、ってやつでしょ? そういえば、この前、テレビでやってたわ。……帰って。余計なお世話だから」

「説明だけ、させて下さい、ね?」男は、窓を勝手に開ける。「私どもは、サッコンノシャカイモンダイデアル、引きこもりの方々が、少しでも社会適応できるよう、お手伝いさせて頂きたい、という、支援団体でしてね――」

「……別に、『支援』なんて、要らないって。……つーか、『外』に漏れるように、わざと大声で言うんじゃねぇよ

「――いや、別に、そんなつもりは、……でも、そうですよね、急に、『外に出ろ』なんて、さすがに、私も思っていません。……かくいう私も、元・引きこもりですから。あはは」

「……」

「――では、こういうのは、どうでしょう? 次、私が『訪問』する約束として、じゃんけんでも、しませんか?」

「…じゃあ、私が勝ったら、二度と入ってこないでね」

 ――ジー、ジー、ジー、ピンポーン。

「? 御両親ですか?」

「……あんた、早くこの場から去った方がいいよ。――殺されるから」

「え?」

「……そういう男が帰ってきた、ってこと」

「――そりゃ、まずい。じゃんけんしてる場合じゃないですね、鬼ごっこだ、ちょっと隠れさせてもらいますよ、すみません」

 ガチャ。

「ふぅ、熱い、熱い。もう、『真夏日』を超えて、『危険日』的な熱さだ。……今、男の声、しなかったか?

「……テレビの中の音でしょう……」

「そうか。――ん? 珍しく、窓を開けてるな。おい、俺の命令なしに、開けるな、と言ったよな。こりゃ、キョウイクテキシドウが必要だな」

 ぐちゃ。

「――やっぱり、濡れてるじゃないか。スケベな娘さんだよ、君は」

「……ち、違う、汗よ、汗…。あっ、久しぶりに、窓、開けちゃったから…」

「君のことを思っている、ぼくがいる、だから、きみは、なにもきにしなくていいんだよ、ひきこもりだなんだって、いろいろいってくるやからなんて、なにもわかっちゃいないんだ、しゃかいにでて、はたらいているか、はたらいていないか、なんかより、必要とされているひとがいるか、いないか、のほうが、むしろ、じんせいにとっては、だいじなんだからね、ああ、――ほら、きょうもいっちゃいなよ、じゆうな、まっしろな、ひらかれたせかいへ、さ、きみは、とじこもってなんてないじゃないか、ああ、」

「……いいよ、中に出しても

(隠れる場所は、至るところにあるさ、そりゃ、引きこもりで、オベヤだからね、ああ)

「――ありがとう、凄く良かったよ、おこづかい、ここに置いておくよ」

「……」

「――もう、いいですか」

「……もういいよ」

「――それじゃ、私は、もう帰りますね」

「……」

「……」

「……本当はさ、今日、バイトの面接に行くつもりだったんだ…」

「なんだ、そうだったんですか、じゃあ、今から、行きましょうよ、私も、外出するお手伝いをいたしますから」

「……もう、遅いよ」

「何時なんですか? そのバイトの面接の時間は?」

「――14時。」

「あら、それなら、十分、間に合いますよ、私の車で行けば」

「……だめ」

「なんで?」

「……電車に乗んなきゃ、いけない場所だから」

「そこまでは、お運びしますよ、それじゃ、――その前に、このコンセントの主電源を、全部、抜いていかなきゃ、ですね

「…あっ」

■Stop (停止)+ ◀ play(再生)

 白線の内側におさがりくださいがー、がー、がー、

「――電車に乗れなかった、ことぐらいで、落ち込むことないですよ。
しょうがないでしょう、だって、五年ぶりでしたっけ? 
――僕も、今も電車は、苦手でしてね、できれば乗り込みたくないんですよ。とりあえず、外に出れただけでも、凄い進歩ですよ。――まぁ、良い天気過ぎて、人がバタバタ倒れてますが」

「……あんたの仕事、少しだけ、興味があるわ…、なにせ、引きこもり経験者だし…」

「――ははは。そうですね、こういう仕事は、女性の方が向いているかもしれない。なにせ、他人とのコミュニケーションを扱う仕事ですからね、…」

「……でも、あんたも、他の男とおんなじね」

「え?」

「……わたしが、あの男とヤッているときに、服の山に隠れてたでしょ? すぐ、このスーツを手渡してくれたじゃん。……色目で、物色してたんでしょ、わたしの服」

「……」

「……」

「――じゃんけんでも、しますか?」

「……じゃあ、勝った方が、ここから、飛び降りる、ってのは、どう?」

「――面白そうですね」

「……勝った方が、だよ?」

「――分かりました。勝った方が、飛び降りるんですね?」

●off(電源終了)

……このあとのオチ、どうなるんだっけ?

ん? 

どうなって、めでたし、めでたし、になるんだっけ?

「―――――」


(作成日不明)

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