オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第81回 秋風に謎めく過去のウラガワ【3】


岩井さんの自伝的小説を原作とした映画『チャイ・コイ』で主演なさった川島なお美さんが24日、お亡くなりになりました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
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「私の代表作は『ぼっけぇ、きょうてぇ』だとされている。それ以前にも少女小説でデビューはしていたが、ぼっけぇによって再デビューでき、念願だったホラー小説の書き手となれた。
その次に転機となったのは『trai cay チャイ・コイ』だ。こちらは自分でも思いがけない結果をもたらした。この作品によって、ホラーだけではなく性愛を書く作家、という位置づけも与えられたのだ。
ぼっけぇもだが、チャイコイも映像化された。チャイコイの方は主演が川島なお美さんで、こんな華のある美人女優に私を演じられるなんて、うれしさより気恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいになったのだが。
華やかなスクリーンを見て、本当に川島さんに演じてもらえてよかった、書いた甲斐があったと感激した。
その川島さんが、亡くなられた。闘病されていたことはもちろん知っていたが、それでもまさか、と茫然とした。信じられないという思いも強いが、ああいかにも彼女らしい、潔くかっこいい引き際だったと感嘆もした。
なお美さんはこの世の舞台からは降りたが、女優は引退していない。彼女の美しい姿は数々の名作に残されているし、これからも新たな彼女の物語は生まれていくと思う。

岩井志麻子
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◆もくじ◆

秋風に謎めく過去のウラガワ【3】

・最近の志麻子さん
 10/12定例トークイベント「オメ★コボシ32」開催
 11/14(土)「LOFT MUSIC & CULTURE FESTIVAL」に出演決定
 カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
 MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中

・著者プロフィール

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秋の夜長を彩る、もの悲しくも怪しい過去の記憶をつづる今月。
今回は、不思議な追憶をたどってくれた女達の話です。

母、父、次々と行方が知れなくなった一家で残ったのは……
帰国子女のギャル系モデルの、幼い頃の姿がなぜか映っているエログロ映画があって……
飲み屋のママが語る、故郷でOLしてたときの派手な先輩の不倫の顛末とは……
怖い思い出のかけらは、そこかしこに転がっています。


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2014年11月「「そんなプロもありか」な人達のウラガワ
12月「「殺人者」たちから聞いたウラガワ
2015年1月「
「大人の冬休みの日記」なウラガワ
2月「「大人の冬休みの日記のつづき」なウラガワ
3月「ベトナム愛人との旧正月のウラガワ
4月「春の喜怒哀楽のウラガワ
5月「韓国人夫の失踪届けを出したら……のウラガワ

6月「ホラー作家まわりの怪異のウラガワ
7月「異国の夏休みのウラガワ
8月「そろそろ怖い目に遭う予感のウラガワ

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2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ​/ソウルの新愛人のウラガワ​/風俗嬢の順位競争のウラガワ​/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ​/「大人の夏休みの日記」なウラガワ​/その道のプロな男たちのウラガワ​

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 秋も深まってくると、夜長といわれる時間帯だけでなく、晴天の真昼でも何やら物悲しい追憶にふけってしまう。そんな季節だからか、歳を取ったからか。

 ともあれ私の場合、思いで話をたどっても怖い話に沈んでしまいがちだ。思い出はきらめくものではなく、謎に満ちている。それは私だけではない。

 今月は、秋の夜長を彩る不思議な思い出、について綴ってみる。一回目は私自身のそれを、二回目は妙な思い出話を聞かせてくれた男達のことを記した。
 三回目は、不思議な追憶をたどってくれた女達の話だ。

                    ※

 うちの親くらいの年齢だというが、まだ色香のある彼女は、現役で店のママさんをしている。先日ふと店内で二人っきりになったとき、何かの流れで「一家の不思議な死」の話になった。

 奇怪な死に方をしているが、そもそも死ぬ理由がない一家の話だ。

 水が足首までの深さしかない用水路で、一家が次々に溺れ死んだ。
 一家そろって神隠しにあったと騒がれていたが、一年後にダムから引き上げられた車の中で全員が白骨化していた。車内からは愛犬の骨も見つかった。

 特にこの二つの事件は有名だし、私も何ともいえない怖さを感じる。どちらの家族も平穏な幸せの中にあり、悩みや問題を抱えた人もおらず、誰も他人の恨みを買うようなことをしていないという共通点があった。

「私の故郷にも、そんな一家がいたわ。その二つの家族の話とは一緒にできないね。全員が『連れていかれた人』じゃないもの」
 ママは、志麻子さんが生まれる前の話よと前置きし、ため息をついた。