岩井志麻子「オンナのウラガワ ~名器大作戦~」

第53回 「殺人者」たちから聞いたウラガワ【2】

2014/12/15 23:00 投稿

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オンナのウラガワ ~名器大作戦~

 第53回 「殺人者」たちから聞いたウラガワ【2】​

 

 

◆もくじ◆

・「殺人者」たちから聞いたウラガワ【1】

・最近の志麻子さん

 出演情報など

 一夜限りの「バー志麻子」開店しました

 「めちゃ×2ユルんでるッ!」矢口真里さんゲストの回に出演しました

 カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中

 怪談えほん『おんなのしろいあし』発売中

 山口百恵「赤いシリーズ」DVDマガジン(解説担当)発売中

・著者プロフィール

 

 

===

今月は、岩井さんが「殺人者」や周りの人に取材して訊いた話から。

世の中には、事件として発覚していない「殺人者」もけっこういるのでは。

そんな「怪しい」人たちが語るのは……

日本に近い某国で、Yくんが見たのは。「蛇の目蝶」にまつわるぞっとする記憶とは。

 

 

バックナンバーはこちらから↓

http://chokumaga.com/magazine/backnumber/?mid=111
http://ch.nicovideo.jp/iwaishimako/blomaga

2013年7月「名器手術のウラガワ

8月「エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ

9月「エロとホラーと風俗嬢のウラガワ

10月「風俗店のパーティーで聞いたウラガワ

11月「エロ話のつもりが怖い話なウラガワ」 

12月「風俗店の決起集会のウラガワ

2014年1月「ベトナムはホーチミンでのウラガワ

2月「ベトナムの愛人のウラガワ

3月「永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~

4月「浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ

5月「韓国の絶倫男とのウラガワ

6月「ソウルの新愛人のウラガワ

7月「風俗嬢の順位競争のウラガワ

8月「夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ

9月「「大人の夏休みの日記」なウラガワ

10月「その道のプロな男たちのウラガワ

11月「「そんなプロもありか」な人達のウラガワ

====

 

 これまで仕事で、二人の殺人者に会ったが。間接的には、もっと会っている。

 たとえば殺人者の身内に話を聞いたり、殺された側の遺族にも会ったことがある。あまり表に出ることのない、というより、関係者以外は目にしない文書を読む機会もある。


 裁判の記録、殺人の罪で拘置中の人が支援者に宛てた手紙、現場の写真など。

 それらは淡々としている部分、事務的な箇所、いっそ気楽、のん気といってもいい表現などが、私の書くものも含め凡百のホラー小説なんかより、ずっと怖い。ありえない超常現象で怖がらせようとしていない、ただ現実をそのまま記述してあるのが怖いのだ。


 たとえば夫が妻を殺した事件の、裁判記録。夫は常に浮気相手がいて、家庭を顧みない。夫婦喧嘩が絶えず、ついに夫は妻を殺害して遺棄する。

 この資料には被害者をかばう箇所の方が多いのは当然だが、「夫婦生活が破綻するに至った経緯には、被告人の責めにのみ帰することができない面もある」ともある。

 妻もヒステリックに夫を責め立て、家事をせず、浪費をしていた、といった場面と状況が淡々と、しかし延々と記されているのだ。


 殺害場面より、夫婦喧嘩の場面の方が生々しく息苦しくなる。それは私にも身に覚えがあるからだ。事件は紙一重であるのを、思い知る。殺人者になるのも、紙一重。


「ことあるごとに憎しみがこみあげるため、なるべく顔を合わせないようにしていた」

 ともある。なぜそこで別れないのか。別れていれば悲劇は起こらなかったとは誰しもが思うが、ある意味では殺意よりも抜き差しならない感情に支配されていたのだ。


 夫は妻を殺した後、風俗店に行って愛人と旅行の予約を入れる。このあたりの夫の心理描写はなく、ただ事実を書いてあるだけだ。きっと小説なら、読者になんとか納得できる、感情移入すらできそうな心の動きを書くはずだ。

 

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