オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第206回 
胸に引っかかる人を思う春のウラガワ(2)

◆もくじ◆

胸に引っかかる人を思う春のウラガワ(2)

・最近の志麻子さん 
 4/23(火)「平山夢明と岩井志麻子の大阪艶話」開催
 5/12(日)「オメ★コボシ45」開催

 TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中
 「岩井志麻子のおんな欲」連載中
 カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
 MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中

・著者プロフィール

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春になると、過ぎ去った冬の向こうの人やもの、どうしようもない昔を思い出してしまう岩井さん。
そんな人たちについてのエピソードをお届け。

女優の雪菜(仮名)とは以前からときどき共演する仲。
彼女には同世代の男性マネージャーが付いていたのだが、あるとき雪菜がブチ切れてしまい、交替したのだそうだ。
彼は実はもともとは芸人で……。

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2014年11月~17年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
2018年1月「命や生きることについて考えたウラガワ
2月「人はなかなか変わらないのウラガワ
3月「きれいに卒業できない女たちのウラガワ
4月「新たな出会いの不気味なウラガワ
5月「良い季節でも人は病むウラガワ
6月「『有名な男の女』だった二人のウラガワ
7月「怪談の季節! ゾッとする実話なウラガワ
8月「嘘と本当のあわいの怖い話のウラガワ
9月「大人になりきれない人達のウラガワ
10月「ベトナム旅行チン道中のウラガワ
11月「しみじみしんみりな出来事のウラガワ
12月「来年まで引きずりそうなアノ人のウラガワ
2019年1月「去年に縁があったあれこれのウラガワ
2月「台湾で初めて会った人たちのウラガワ


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2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ​/ソウルの新愛人のウラガワ​/風俗嬢の順位競争のウラガワ​/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ​/「大人の夏休みの日記」なウラガワ​/その道のプロな男たちのウラガワ​

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 物心ついた頃から、春になると新学期や新しい環境にときめくのではなく、不安になるのでもなく、過ぎ去った冬の向こうの人やもの、どうにもならない昔を思い出して悲しみに浸っていた。他の季節には、あまりそういうふうにはならないのに。

 ある種の木の芽時、なのか。わかりやすい心身の不調はないが、私にとっては春の病か。そんなわけで今月は、過ぎ去ったのに引っかかったままの人達を書いている。

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 女優の雪菜とは以前から、ときどき思い出したようにどこかの番組で共演していた。一回りほど年下の美熟女で、さっぱりしたいい女だ。芸人を多く擁する中堅事務所に所属しているが、彼女が稼ぎ頭といっていい。

 雪菜と初めて仕事の場で会ったのは数年前になるが、彼女と同世代の男性マネージャーがついていた。大阪の食い倒れ人形を巨大にしたような見た目だが、どっしり落ち着いた雰囲気で、仕事はできそうだった。雪菜と普通に仲も良さげだった。

 私は彼とは挨拶するくらいで、それ以上の会話をしたことはない。あくまでも雪菜のマネージャー、ただの仕事関係者でしかなく、現場以外で彼について思い出すこともなく、考えたこともなかった。

 雪菜とも私は仕事の場でしか会わず、私的な会話もしたことがなく、当然ながら連絡先も知らなかった。それが去年の暮れ、やはりたまたま同じ番組に出たとき、
「ねえねえ、この後ちょっと二人で飲みに行かない?」
 などと誘われた。そうして初めて雪菜と二人きりになり、私的な話をした。

「志麻子さん、私のマネージャーが替わっているのに気がつきましたか」
 乾杯の後、まずは雪菜はそういった。あ、そうだっけ。しばし、きょとんとしてしまった。いわれてみれば、今日はあの巨大な食い倒れ人形は見てないかもしれない。
 でも、もともと何の興味もない人だったので、いたかいなかったか本当に覚えてないのだった。わかんなかった、と正直に答えたら。
「あれ、ついに私がブチ切れてしまいました」
 と眉をひそめた。彼は仮に長江としておくが、元芸人、いや、今も芸人なのだそうだ。

「芸人としてうちの事務所に所属したんですが、全っ然、芽が出なくて」