オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第188回 大人になりきれない人達のウラガワ(2)


◆もくじ◆

・大人になりきれない人達のウラガワ(2)

・最近の志麻子さん 
 映画『銀魂2』のスピンオフドラマに出演 9/1から配信中
 角川ホラー文庫より『現代百物語 終焉』発売

 河崎実監督映画に出演予定
 TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中
 「岩井志麻子のおんな欲」連載中
 カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
 MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中

・著者プロフィール

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大人っぽい雰囲気の季節がめぐってきた九月。
でも、人生においては「大人になりきれない」ケースが多々あるものです。
先日岩井さんが会った女性編集者が語ってくれた思い出は、十年ほど前の、世界を旅していたときの話。
ある夫婦の旅ブログにあこがれて、思い立って行き先をあわせることにした彼女。
狙ったとおりに現地で夫婦と知り合いになることが出来たのだが、事態は思わぬ方向に展開し……。

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2014年11月~16年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
2017年1月「自分を重ねてしまう若者たちのウラガワ
2月「冬に聞いた奇妙な怪談のウラガワ
3月「春のさなかに聞いた怖い話のウラガワ
4月「木の芽時な人達のウラガワ
5月「五月だけどさわやかになれない人たちのウラガワ
6月「面識なしでも喜怒哀楽を喚起する人々のウラガワ
7月「ほんのり怖い人達のウラガワ
8月「真夏なのに秋の予感な有名人たちのウラガワ
9月「私が見たテレビの中の人のウラガワ
10月「大人だけど枯れるには早い人たちのウラガワ
11月「年下韓国人夫とのアジア旅のウラガワ
12月「捨ててもいいじゃないかのウラガワ
2018年1月「命や生きることについて考えたウラガワ
2月「人はなかなか変わらないのウラガワ
3月「きれいに卒業できない女たちのウラガワ
4月「新たな出会いの不気味なウラガワ
5月「良い季節でも人は病むウラガワ
6月「『有名な男の女』だった二人のウラガワ
7月「怪談の季節! ゾッとする実話なウラガワ
8月「嘘と本当のあわいの怖い話のウラガワ


※2014年10月以前のバックナンバーをご購入希望の方は、本メルマガ下部記載の担当者までお知らせください。リストは下記です。

2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ​/ソウルの新愛人のウラガワ​/風俗嬢の順位競争のウラガワ​/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ​/「大人の夏休みの日記」なウラガワ​/その道のプロな男たちのウラガワ​

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 真夏の八月は、自分がいくつになっても「お~若者の季節が来たな」と思う。今さらとんでもない冒険なんかしないけど、できるような気がしてしまう。

 そして九月になれば、「あ~大人の季節がきた」と思う。若者の季節は楽しいときめくことばかりではなく、後悔することも失敗することもある。それを九月に噛みしめる。

 といった、「大人にもなりきれない季節」について今月は書いている。

                    ※

 私は確かに若い頃から旅行が好きだが、現地の安い鉄道やバスを乗り継いで見知らぬ人達と同室になるゲストハウスに泊まり、路地の屋台で食べるというような、いわゆるバックパッカーだったことはない。

 旅の目的は、人それぞれ。旅の楽しみ方は、旅人の数だけある。私にとって旅行は冒険ではなく、非日常的な贅沢やゆったりした休息を求めるものだから、普段は縁のない高級ホテルに泊まり、ガイドブックやテレビで見て憧れた素敵な店に行ってみたい。

 なにより、私は臆病なのだ。特に海外では、安全と安心が何より大事。それらに払う金は惜しくない。だからセキュリティのしっかりした高級ホテルに泊まり、衛生管理のちゃんとしてあるレストランに行くのだ。

 そして今は、もう貧乏旅行をする体力がない。それを思えば、若いときに体力勝負の冒険旅行もしておけばよかったかなぁ、と少し後悔してしまう。

 という話を、先日初めて会った一回りほど若い女性編集者にしたら、
「十年ちょっと前になりますが、今の会社に入る前にそういう旅行したことあります」
 と、自身の体験談を語ってくれた。

「ぎりぎり二十代のとき、前の会社を辞めました。いろいろ仕事の悩みもありましたが、ぶっちゃけ同じ会社の男との不倫が破綻したってのが大きかったです。
 その頃の私は独身だったけど、彼は妻子ありでした。二十代も終わるのに、みたいなあがきと焦りもありました。だからありがちな気分転換とリセットですけど、会社辞めて放浪の旅に出ようと思い立ちました。
 そんな退職金も貯金もなかったけど、節約すれば三か月くらいぶらぶらできるかな、と。

 計画性はなく、近場の韓国から中国、そして東南アジア。行きあたりばったりの旅。それなりに危ない目にも遭い、楽しい思いもしました。暇だし小遣い稼ぎにもなるかと、広告料がもらえるブログを始めました。

 そんな大したお金にはならなかったけど、ブログを通した友達もできました。旅行しながら小遣い稼ぎにブログやってる人、いっぱいいたんです。

 そのお仲間でかなり人気のあったのが、『ヒデミとアツシの旅メロディー』ってブログでした。私より二つほど上の、まぁ同世代といっていい、子どものいない仲良し夫婦。
 二人は職場結婚したけど揃って辞めて、世界一周の旅に出るんです。美男美女ではないけど、どちらも愛嬌があって人好きするっていうのかな、親しみと好感を持たれる見た目だし、すごく仲良しなのがどの写真からも伝わってくるんです。

 文章もすごく上手いんじゃないけど、変な気取りも主義主張もなくて、素直に旅を楽しんで驚いて感動してて、こちらもそっくりそのまんま感情移入できる。
 安い航空券や鉄道切符の買い方、安いけど安心なホテル、安くておいしい食堂、どのガイドブックにも書かれてない穴場のおもしろいところ、おもしろい写真も満載でした。
 これから旅に出たい人にも、私みたいにリアルタイムで参考にしている人も、すごく楽しみに読んでて。コメントつけたらいちいち律儀に親切にていねいに返してくれて、ちょっとしたアイドルでしたね、この夫婦は。

 あーあ、私もこんなアツシくんみたいなダーリン欲しいな、とうらやましかったです。
 アツシくんその人が欲しいんじゃなく、あくまでもアツシくんみたいなダーリン、が理想の男性になったわけです。もう、不倫はこりごりだったし。

 だから、アツシくんが書いてる『ヒデミとアツシの旅メロディー』にはあまりコメント書きこまず、ヒデミさんがやってる『たびログ!』にもっぱらメッセージ送ってました。

 こちらも旅メロディーほどのアクセス数はないけど、熱烈なファンがついてました。ヒデミさんもコメントに、どこかで会いたいね、といつも書き添えてくれました。

 それで私、ストーカーってつもりはないけどどうしても憧れのご夫婦に会いたくなって、二人が南米のあまり治安が良くない国に渡ると書いてあるのを見て、よしっ、次の行き先はここだと決めました。

 もともと私も目的のない旅だったんで、憧れの夫婦に会う、できればこの夫婦と一緒に旅をする、というのを目的と目標にしました。ううん、もっと正直にいえば夫婦にというより、アツシさんに会いたかったんですよ。

 二人は交通手段も行き先もホテルも滞在している街も、みんな画像付きでアップするから、簡単といえば簡単に追えたんです。

 そうしてある日、ついに南米の某国で会えました。大感激、むちゃくちゃ気分アガりましたよ。ヒデミさんもキュートだったけど、思った以上にアツシさん素敵で。
 あっ、いつもブログ見てくれている人だね。君も世界一周してるんだね、みたいに私のこともわかっててくれて。私はまだホテル予約してないといったら、夫婦の泊まっているホテルに連れてってくれました。