変化のスピードに乗り遅れないように、今のうちに基本的なことを知っておきたい!そんな方のために、ソーシャルメディアとアドテクノロジーの融合によるデジタル広告の今を、改めて整理してみました。
アライドアーキテクツ株式会社でエンジニアをしております金箱です。普段は「アライドアーキテクツ エンジニアブログ」で技術情報などを執筆しているのですが、今回は、近年急速な発展を遂げるアドテクノロジーと、同じく急成長しているソーシャルメディア広告が、今後どのように関わりあっていくのかについて、書いてみたいと思います。
アドテクノロジーは、広告配信にテクノロジーを用いて、CTRやCPCを良くすることを目的としています。
現在使われている主な手法は以下のようになります。
・オーディエンスターゲティング
・行動ターゲティング
−オンサイト行動ターゲティング
−(アドネットワーク上の)行動ターゲティング(BT=Behavioral Targeting)
−リターゲティング
・サイコグラフィックターゲティング
・デモグラフィックターゲティング
・コンテンツ連動型
・地域ターゲティング
・ノンターゲティング
手法は様々ですが、目指すところはターゲットとする個人に最も効果的な広告を配信することです。つまり、個人の趣味趣向に適した広告を配信してあげるということです。
アドテクノロジーでは、オーディエンスデータ(購入履歴など)やアドネットワーク上での行動を、データマネジメントプラットフォーム(DMP)に蓄積し分析することで、個人の趣味趣向を推測しています。
個人の趣味趣向を知る上で注目されているのが、ソーシャルメディアでの行動です。ソーシャルメディアは、ユーザーの交友関係から職歴、居住地、興味、関心などの日々のデータを蓄積し続けています。そのため、従来のインターネットよりも高い精度で個人の人となりを推測できるようになりました。このようにソーシャルメディアのデータとアドテクノロジーは、本来はとても相性が良いはずですが、ソーシャルメディアのオーディエンスデータは既存のアドネットワークの外にあったため、今まではあまり活用されていませんでした。しかし近年、こうした問題を解消すべく、業界編成の動きが活発になってきました。
アドネットワークとの提携を進めるFacebookとTwitter
Facebookは、ユーザーデータを元に外部サイトでの広告配信ができるように、2012年5月に「データの使用に関するポリシー」を改訂しています。つまり、Facebookの保有するユーザーデータを、Facebook外でも利用できるようにしたわけです。
※参考:Facebookが外部サイトでのアドネットワークを開始?
http://blogos.com/article/38980/
さらにFacebookは、2013年2月28日にアドテクノロジープラットフォームAtlasをマイクロソフトから買収しました。今後、Facebookの保有するユーザーデータをAtlasのプラットフォームと接続するのではないかと言われています。
※参考:Facebook buys Microsoft ad technology platform
http://www.gmanetwork.com/news/story/297333/economy/companies/facebook-buys-microsoft-ad-technology-platform
一方Twitterは、2013年6月6日に巨大メディアグループWPPと戦略提携をしました。Twitterの持つビッグデータをWPPの持つメディア&分析プラットフォームにかけて、新たなデータプロダクトを作ることを目的としていると推測されています。
また、2013年9月9日(現地時間)には世界最大級のモバイル広告企業MoPubを買収しました。MoPubのアドネットワークにTwitterがシームレスに接続されると思われます。モバイル広告企業を抑えるところがTwitterらしいところです。
※参考:Twitter、モバイル広告企業のMoPubを買収
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1309/10/news048.html
このように、ソーシャルメディアが、その高い市場評価と資金調達の容易さを武器に、アドテク企業を買収している様子がうかがえます。
買収が行われているものの、ソーシャルメディア→アドネットワークのデータの提供はこれからの領域です。ところが、アドネットワーク→ソーシャルメディアのデータ提供は既に行われています。
このプロダクトは、アドエクスチェンジをもじって、Facebook Ad Exchange(FBX)と呼ばれています。Facebookが提供するRTB市場です。2012年9月13日(現地時間)から始まったこのプロダクトは、Facebook外のユーザーデータをFacebook広告のターゲティングに利用できます。ターゲティングはクッキーベースで行われます。FBXを使うことで、Facebook内でリターゲティングを行ったりセグメントしたりできます。
Facebookは同時期に、カスタムオーディエンスというプロダクトも発表しました。カスタムオーディエンスとはFacebook上のユーザーを既存の顧客データベースからセグメントして、広告配信できる機能です。
現在はFBXでリターゲティングしているユーザーをカスタムオーディエンスに繋ぎ込めるようにもなっています。
Twitterはというと、2013年7月3日にアドネットワーク上の行動を元にTwitter上の広告をターゲティングできるようにするとアナウンスがありました。(米国のみ)
※参考:Experimenting with new ways to tailor ads
https://blog.twitter.com/2013/experimenting-with-new-ways-to-tailor-ads
このように俯瞰してみると、とても速い動きでソーシャルメディア業界とアドテクノロジーが編成されている様子が分かります。
ソーシャルメディア✕アドテクノロジーの融合によるユーザー体験とは?
ソーシャルメディアとアドテクノロジーが融合すると、これまで分断されていた両者の情報がシームレスにつながるようになります。つまりそれは、ソーシャルメディア上のオーディエンスデータが、DMPに提供されるということです。
ソーシャルメディアとアドテクノロジーの融合は、ユーザーにとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。
一例を紹介します。
Aさんは今年の夏は東北へ旅行に行きたいと考えています。
Aさんはウェブ上で旅行についての検索をします。様々な情報を得ることができますが、よく利用する宿泊予約サイトで、友達のBさんがとある東北の旅館にいいね!しているという広告を発見します。
早速Aさんは広告をクリックしてその旅館のFacebookページを見てみました。
ウォールには食事や旅館のとても素敵な写真であふれていました。女将さんの対応もよさそうです。
Facebookページにいいね!を押して、Bさんにメッセージを飛ばして旅館について聞いてみます。
すると、Bさんが1年前に両親に温泉旅行をプレゼントしたときに利用した旅館だとのこと。両親にもとても喜ばれたこと、サービスが良かったことなどが聞けました。
AさんはFacebookの右カラムにふと目をやると、先ほど閲覧していた宿泊予約サイトがこの旅館の格安プランの広告を出しています。
Aさんはこの広告をクリックして、無事に宿泊予約をすることができました。
この一例から以下のようなユーザーメリットが発生することがわかります。
今までは、インターネットで情報を検索することと、ソーシャルメディア上で情報を得ることには隔たりがありました。「検索する→ソーシャルメディアを見る→ブラウザバックで戻る→検索する→・・・」この隔たりがシームレスにつながり、広告が最適なタイミングで表示されます。また、ユーザーが何をしたいのかがわかるようになり、最適な広告を配信できます。
・宿泊予約サイトで、Bさんとつながりのある旅館が見つけられなかったら?
・Facebookの広告で、利用したことのない宿泊予約サイトがレコメンドされていたら?
Aさんは宿泊予約にもっと時間をかける必要があったはずです。
最適な広告が最適なタイミングで表示されることは、ユーザーにとっても、そして有限なインターネットリソースにとっても、メリットのあることです。
近い将来、上記のようなユーザー体験が現実化します。
ソーシャルメディア上でのエンゲージメント醸成がますます重要に
Facebookでだけ利用されていたデータがインターネットに解放されるということは、ソーシャルメディアでたくさんのエンゲージメントを積み上げるメリットが、2つの理由でこれまでより増します。
1つは、ソーシャルメディアのオーディエンスデータをターゲティングに活用しやすくなること、2つ目は新しいユーザー体験のネットワークの中に企業自身が参加できることです。特に2つ目が重要です。エンゲージメントを醸成出来ていないと、“つながり”による信頼度の高い口コミ・伝播を発生させることが出来ません。(「○○さんがいいね!と言っています」という形の広告は、とても効果的です)
上記の例をとれば、Aさんが旅館を決めた最大の理由はBさんから聞いた口コミです。いくら効果的にターゲティングできても、ソーシャルメディア上から孤立した広告であっては効果が薄いのです。こうした意味でこれからは、人間らしい温かみのある取り組みをしてきた企業が、利益を上げやすくなる環境になっていくことでしょう。一方で、行き過ぎたターゲティングは、ブランドイメージの毀損につながるというリスクもあり、実際の運用では自社のブランディングを考えながら慎重に活用していくことが必要です。
■元記事
http://smmlab.aainc.co.jp/?p=26023
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