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【モバイルアプリデータ】エンタープライズ市場もAppleが優勢か。Andoroid失望感は下げ止まり、MSはタブレット普及が逆転の鍵。

2012/08/30 12:30 投稿

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お世話になっております。

ループス直人です。 

 

2011年-2012年、スマートフォンの出荷台数がデスクトップとノートを合わせたPCの総出荷台数を上回り、今後ITの中心はますますモバイルにシフトしていくことが予想されます。

 

 

モバイルプラットフォーム市場の支配権を握るべく Apple, Google, Microsoftなど各陣営がしのぎを削っている状況ですが、開発者の見方はどのようなものでしょうか。 Appcelerator が発表している最新のサーベイBusiness Insiderのレポートなどを参考に探ってみたいと思います。

 

 

まとめ

現在のモバイルプラットフォーム概況は、今回調査した内容を包括すると以下のようにまとめることができると思います。

 

  • コンシューマー市場ではAndroidはAppleと並ぶ。マルウェアや断片化といった課題もある一方、低価格で多様といった強みを併せ持つ。マーケットプレイスの洗練と開発メーカーの同調が鍵を握るだろう。
  • エンタープライズ分野のモバイル端末ではAppleが先んじてその支配に王手をかけている。
  • WindowsとOfficeに強みを持つMicrosoftが勝つためには①モバイルWindow系端末、特にWindows8 Tabletの普及、②異なるアーキテクチャ(x86/ARM)間のトランスレーションを支援すること、③クラウド分野の競争でAzureが勝利することの3つが重要だろう。

 

 

開発者の期待値では、iOSがAndroidを引き離す

Appceleratorの調査に回答した3,632の開発者は、「エンタープライズ分野において、長期的に見て優勢なOSはどこだと思うか」という質問に対して53%が iOS と回答し、2位のAndroid(37%)と大きく差をつけました。両OSは、2011年3Qに行われた調査ではそれぞれ44%と拮抗していただけに、iOSにとっては大きな躍進といえます。

 

 

このような状況になった要因として、AppceleratorとIDCはエンタープライズにおけるiOSの成長と強さに加え、以下のような要因に言及しています。

 

  • iPadの人気
  • Andoroid OS上のマルウェアに関する頻繁な報告
  • アンドロイドOSのフラグメンテーション(分割)

 

 

深刻なAndroidの断片化問題

「Androidのフラグメンテーション」については、記事中に具体的な記述がないのですが、要するにオープンソースであるAndoroid OSを搭載するメーカー側のカスタマイズその他によって亜種が大量に生まれているという点が考えられます。スマートフォンに搭載されているAndroidのバージョンがアップデートできないケースがあるのもこのためです。また、WIREDの「機種数3,997:「断片化」を続けるAndroid」という記事にもある通り、搭載機種が多様であるために画面サイズや端末ごとの固有機能も多岐に渡り、個別の対応コストがかかることが多いというのもあるでしょう。

 

出典 : OpenSignalMaps 

 

私も数年前まで携帯アプリの開発に携わっていましたが、端末固有の不具合対応や膨大な実機テストは開発側にとって大きな負担になるものです。

 

出典 : OpenSignalMaps

 

わずか1年でマイナーバージョンが複数でるのは仕方がないとしても、メジャーバージョンが3つ無視できない割合で混在しているというのは困ったものです。個人的にもガラケー開発の際、HDML(HTMLではなくて)のシェアが5%以下になるまでサポートし続けなければならなかった苦労を思い出します。

 

 

 

補足:Appceleratorについて

上記調査データを提供しているAppcelerator は、Titanium Mobileというモバイルデバイス向けのソフトウェア開発環境を提供する米国の企業です。

 

通常、モバイルのネイティブアプリ開発ではiOS端末(iPhoneやiPad)であればObjective-C、AndoroidであればJavaといったようにOSに依存した言語で開発をする必要がありますが、Titanium Mobile では、JavaScriptを利用して、iOS/Android端末どちらでも動作するネイティブアプリケーションを開発することできます(OSに依存した一部の機能を利用する場合などの例外もあり)。

 

同社では、3,000を超える開発者に、今後の開発計画やOS毎のプライオリティをヒアリングしています。調査の詳細はレポートの「About the Appcelerator / IDC Q2 2012 Mobile Developer Report 」をご覧ください。

 

 

iPhone vs Android 開発プロジェクトのトレンド

グローバルなオフショア開発を支援するプラットフォーム oDesk では、開発言語やプラットフォーム毎の募集プロジェクト動向を公開しています。Windows系モバイルOSのカテゴリはないため、AndroidとiPhoneでそれぞれ比較してみます。

 

 

米IDCが8日に公表した4~6月期のスマートフォン市場調査によると、Android端末の出荷台数は1億480万台になり、iPhone出荷台数の4倍となったそうです。iPhone5の発売に関する買い控えがあるとは家、アンドロイド端末の市場全体に占めるシェアは前年の46.9%から68.1%へと急拡大しています。

 

一方、oDesk募集されているプロジェクト数では、iPhone系がAndoroi系の2倍と以前大きな差が開いています。今年3月にも米Mika Mobileが収益性を理由に撤退を表明するなどのニュースもありましたが、ビジネスとしてのポテンシャルを反映しているのかもしれません。

 

※oDeskの数値は、あくまでもoDeskのカテゴリに基づいた「JOB」数であるため、プロジェクトの規模や市場の実態を正確に反映したものではありません。

 

 

モバイルエンタープライズ向け市場

続いて、モバイルエンタープライズに関するサーベイを見ていきたいと思います。Business Insiderにて「BII REPORT: How iOS Is Winning Mobile In The Enterprise」という記事が掲載されました。

 

 

同社によると、企業で利用されているモバイル端末の勝者は、今のところiOSと言えるようです。その背景には企業が推進するBYOD活動が大きな鍵を握っているようです。

 

BYODとiOS浸透関係

BYODとは、「Bring your own device」、直訳すると「所属企業への個人所有端末持ち込み」という感じでしょうか。

 

これまで、企業は従業員の利用するPCに監視ソフトのインストールを強制することで情報漏えい対策や情報統制を行って来ました。ところが持ち込み可能な情報端末、つまりスマートフォンの台頭でその努力が無駄になろうとしています。例えば、私が知っているある企業では「Google」は「業務に関係のないサイト」としてアクセスできないよう規制しているのですが、スマートフォンがあれば簡単にGoogleにアクセスできてしまいます。

 

前述の問題以外にもコスト面やもっと前向きな理由が色々あるとは思うのですが、ともかくこういった状況に対処するために、様々な認証やセキュリティソリューションを組み合わせて従業員の私用端末を業務で活用しましょう、というのがざっくりしたBYODの目的になります。

 

従業員所有のモバイル端末管理ソリューションを販売する Good Technology社によれば、同社クライアントの72%以上は形式上のBYODプログラムを持っていました。その中で、企業は従業員の個人的なデバイス上から企業情報にアクセスするための正式なサポートを提供しています。さらに、BYODプログラムで選択の自由を与えられた従業員の多くがiOSを選ぶという統計が出ているそうです。Good Technology社によると、新たにアクティベートされたスマートフォンの半分はiPhoneだったそうです。更に、新たにアクティベートされたタブレット端末の90%がiPadと、企業の選択・判断に関わらずビジネスの現場にiOSが取り込まれていっていることがわかります。

 

一方、Androidはスマートフォン以外でも様々なデバイスで活用されているため、徐々にIT部門にも受け入れらているようです。

 

ビジネス向けプラットフォームの期待値

 

 

Appceleratorの調査でも同様に、ビジネス向けアプリ開発者の関心はiOSの方が高くなっています。

ビジネス向けアプリ開発者の間で、iOSを支持するのは53.3%、Androidは35.5% です。また、コンシューマー向けアプリ開発者の間で、iOSを支持するのは53.6%、Androidを支持するのは37.9% iOSとなっていました。

 

 

 

開発者の関心はAndroidからHTML5へ

以下のグラフはAppcelerator調査で、開発者が強い関心を持っているプラットフォームを尋ねたものです。

 

 

顕著なのは、2011年後半から2012年初頭にかけて「Android Phone」に対しての関心が10ポイント近くも下がっていることでしょう。また、Windows Phone7.5に対する関心もこの四半期で大きく下げています。

 

昨年依頼求心力を失い続けていたAndroid Phoneの関心がここに来て下げ止まる動きを見せ、Android tabletの関心が上がってきた理由について、Appceleratorは以下のような点を挙げています。

 

  • Android端末出荷台数・シェアの伸びに対する期待は、OSの断片化に対する懸念を上回った。
  • iPhoneに比べて安いAndroid端末の小売価格が、幅広い市場創出の期待を生んでいる。
  • Android搭載携帯の急速な成長がグローバルなアプリ戦略の重要性を実証していると受け止められた。
  • AndroidをベースとしたAmazonのKindle Fireの成功が低価格で小型のタブレット市場を実証した。
  • Androidマーケットの Google Play への統合がAppleのiTunesのようなネットワーク効果を生み出すと期待された。

  

一方、Windows7 Phoneに対する開発者の関心は2011年1Qの37.0%から25.0%へと急激に落ちました。これは、期待されたNokia端末の売上不振が影響しているのでしょう。Nokiaが販売するLumiaシリーズの売れ行きについては、同社が2012年4月に行った業績予想の下方修正の発表の際、1-3月期の販売台数が推定200万台強となり、アナリストらの予想していた300万台を下回ったと伝えられています

 

 

エンタープライズ分野で競争力のあるMicrosoft

一方、開発者はWindows8 Tablet に対しては楽観的な期待を寄せているようです。中でも、マイクロソフトのメトロUIが特に開発者の心を掴んでいるようです。

 

 

Metro は、マイクロソフトによって Windows Phone 7 のために開発されたタイポグラフィを基調とした UI 設計言語の内部コードネームです。国内では、Microsoftが2011年8月に発売した「Windows Phone」(au「IS12T」)で採用されました。パソコン、スマートフォン、タブレットと複数端末間で、操作の一貫性を持たせることができるそうです。

 

 

Appceleratorのレポートでは、マイクロソフトがGoogleのAndroidを押さえてモバイルプラットフォーム市場で2番手に踊り出るためには、OfficeとWindowで強みを持つエンタープライズ市場での躍進が鍵を握ると見ています。また、開発者が、Windows8 Tabletのx86ベースのアーキテクチャにスマートフォン向けARMベースのアプリを移植することがMicrosoftを前進させるだろうと分析しています。そのためには、Microsoftが一貫したユーザー・エクスペリエンスをサポートし、コードの再使用を可能にし、またアーキテクチャー間の翻訳を支援するツールを提供する必要があるでしょう(Window8 RT タブレットはARMアーキテクチャ)。

 

Windows8を搭載したタブレットが2012の後半および2013の前半に市場へ導入され始めると、企業でのモバイルのOSの潮流を劇的に変更する可能性があります。開発者のAndroidに対する関心が(またはiOSの侵食)が一段落した今、Microsoftには逆転のチャンスもありますが、まずはいかにWindows系OSを搭載した端末を普及させるかが鍵になると思われます。

 

 

以上です。 

最近はマーケティングや戦略系の本や記事ばかり読んでいたのでこういう記事を書くのは久しぶりになります。何かヘンなところ、ございましたらご指摘いただけますと非常に助かります。

 

あまり触れていないのですが、エンタープライズ向けモバイル端末の普及にMSのクラウドソリューション、Windows Azureは大きな影響を及ぼすと考えられます。PHPやJavaといったはやりの言語やEclipseベースでの開発など、細かい市場ニーズにも対応してきた感のあるAzureですが、やはりWindows系、.NETが強いということもあってエンタープライズが主戦場になっていると思います。そうなると「トップダウン系での普及経路(会社でまとめて買って配る)」 vs 「ボトムダウン系の普及経路(BYODで社員が持ち込む)」の戦いになるかと思うんですが、どちらが合理的なのかなぁ、なんて。Azureというある種裏方ソリューションが、表側の戦略に睨みを効かせるためにどんな手を打つのか、年末に思い出したら注目したいと思います。

 

それでは、よろしくお願い致します。

 

 

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