ソーシャルメディアマーケティングの最先端企業として知られる良品計画さん。
Facebookページのファン数は総数98万人を超え、Twitterアカウントも23万人以上のフォロワーを抱えています。
今回は良品計画さんのソーシャルメディア運用のテーマから経営陣へのプレゼン方法・気づいたこと・オウンドメディアとの絡め方まで、様々なお話をお伺いすることができました。
非常に参考になるお話ばかりですので、初心者から上級者まで、ソーシャルメディアに携わる全ての方に是非ご一読いただきたいです!特にB2C企業の方は必見です!
■目次
1.SNS導入の背景
-元々顧客とのコミュニケーションが確立していた
-バズへの第一歩はTwitter限定クーポン
2.運用のテーマ・目的
-とにかく店舗にお客様を送りたい
-アナログとデジタルの融合(KNIT Like COLLECTION)
-オフラインtoオンラインの意識
3.運用していて気付いたこと
-「共感するメッセージ」しか広がらない
-「デジタル」で伝わるのは「アナログ」なこと
4.ソーシャルメディアアクティビティレポート
-ソーシャルメディアのKPIを全て金額換算!
-KPIは企業ごとに設定するべき
お話を伺った方
株式会社良品計画
WEB事業部部長
奥谷 孝司さん
1.SNS導入の背景
ガイアックス :
良品計画さんはソーシャルメディア(Facebook・Twitter)が非常に盛り上がっていますが、ソーシャルメディアが始まる前から何かやっていらっしゃったのでしょうか?また、その導入時期はいつぐらいでしたか?
株式会社良品計画(以下、良品計画)
奥谷孝司さん :
いわゆる「お客様とのコミュニケーションを正式に取り出した」という意味では、2002年ぐらいから空想無印(※1)という形でお客様との「モノづくり」をやっておりました。
※1空想無印は、現在「くらしの良品研究所」の「ご意見箱」に集約されています。
元々顧客とのコミュニケーションが確立していた
Twitterを始めたのは2009年、Facebookは2010年からですが、元々お客様の声プロジェクトやくらしの良品研究所に挙がってくる声を商品でフィードバックしたりしていたので、ソーシャルメディアが始まる前からお客様とのコミュニケーションをする素地はありました。
そういった流れの中でSNSが出てきましたが、SNSは効果が可視化してお客様の声を聞きながらマーケティングが出来ると知り、これはチャンスだと思い「待ってました」という感じで始めました。
バズへの第一歩はTwitter限定クーポン
一番最初にやったのは、Twitterでのタイムセールなうですね。フォロワー数が1万5000人ぐらいになった頃に、Twitter経由だけで入ってこられるURLを設定してタイムセールをやったところ、数十万売れました。
気づけばそういったことをきっかけにメディアがどんどん来てくれて「最先端企業」として知られることになって、やりやすくはなりました。
2.運用のテーマ・目的
ガイアックス :
取り組みの中で、経営陣の方へのプレゼン方法はどういった感じで行われたのでしょうか?
良品計画 奥谷さん :
メディアに取り上げていただいて説得力が増した、というのもありますが、僕らはソーシャルメディアを活用して「店舗送客」をしよう、ということが根底にありまして。
とにかく店舗にお客様を送りたい
うちはネット企業ではなく、お店が90%以上の売り上げを取る会社ですので、「そういったことをやるとお店に良いことがありますよ」ということを伝える方が早いと判断しました。
例えばSNS経由で入手できるクーポンを使ったキャンペーンだと、お客様がどこから来たかがわかるので、SNSを使って売り上げがどれだけ上がった、という小売業にとってわかりやすい数値を用意できました。
アナログとデジタルの融合(KNIT Like COLLECTION)
ガイアックス :
話題となった「KNIT Like COLLECTION(※2)」について、お話を伺ってもよろしいでしょうか?
良品計画 奥谷さん :
僕は常に、ソーシャルメディアを活用したマーケティングはコミュニケーションだけじゃなくて、アナログとデジタルの融合だと思っています。
このキャンペーンに関しても、お客様によりリアルで楽しんでいただけるように、いいね!を押すたびに木琴のところにボールが落ちてきて音が鳴るようにしました。
※2 KNIT Like COLLECTIONとは:
凸版印刷さんのリアルいいね!と提携したキャンペーン。店内に展示されているコーデにいいね!すると、各コーデに取り付けられたカウンターの数(写真右)が上昇し、自動で木の球を送り出し木琴がクリスマスソングを奏でる仕組み(写真左)になっている。世界三大広告賞の一つである「One Show」でメリット賞を受賞した。
SNSの複雑な仕組みの説明は抜きに、「音がする」という五感を刺激して、「よくわからないけどいいね!をすると音がする。楽しいな。」と、お客様が思って寄ってきてくれるといいな、と。
その裏に最新のSNSや技術が使われている、というだけです。僕らにとってはお店が最大のメディアですから、FacebookもTwitterもみんな、お店で楽しんでもらうためのツールでしかないと考えています。
オフラインtoオンラインの意識
KNIT Like COLLECTIONもそうですが、僕にとってはO2Oがテーマです。O2Oと言っても、オンラインtoオフラインよりも、オフラインtoオンラインの方が正しくて。
お客様に「オフラインのお店に来たら楽しいんだよ」ということを、店内でいいね!を押してもらってオンラインで伝えてもらうことが目的です。
今はお客様がメディアなので、写真を撮ってネットに上げてもらうとその情報が世界中を駆け巡りますから。MUJIネットメンバーになってほしいのじゃなくて、むしろ出来るならお店で買ってもらいたいですね。
3.運用していて気付いたこと
ガイアックス :
SNSを運用していく中で、顧客とのコミュニケーション方法・意見の流れが変わったことはありますか?
良品計画 奥谷さん :
そうですね…抽象的な言い方になってしまいますが、共感するメッセージしか広がらないのかなということはあります。
「共感するメッセージ」しか広がらない
「こういうの売りたい」と言われたから出しても、それが響くという訳でもないんです。
ついこの間、「蚊帳っていいですよね」というコラムをくらしの研究所で出したのですが、1万いいね!が付いちゃいました。
他にも去年(2012年)の冬に鳩時計の記事をFacebookであげてみたら、やっぱり6000ぐらいのいいね!が付いて、それからバカ売れするようになりました。
売りたいと思って出した商品が売れるとは限らない中でこういった現象を見ると、「共感を得る情報しか届かない」・「こっちが伝えたい情報が伝わるとは限らない」ということをまざまざと感じます。
「デジタル」で伝わるのは「アナログ」なこと
時間なんて携帯を見ればわかる時代に、なんで鳩が鳴く時計がウケるのかと言うと、やっぱり「生活の中が全部デジタルで埋まると息苦しいよね」というのがあるのかも知れないです。蚊帳も同じかなと思います。
結局、伝わること・共感してもらえることって意外とアナログなことなんです。デジタルを使って一生懸命話しても、通じるのは人間が実感できる感情だったり、五感で感じるものでしかないから、やっぱりそういうことなのかな、と常に思わされます。
4.ソーシャルメディアアクティビティレポート
ガイアックス :
ソーシャルメディア運営における数字についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
良品計画 奥谷さん :
僕たちは、ソーシャルメディアアクティビティレポートという、ソーシャルメディアのKPIを金額換算したものを毎週作っています。
ソーシャルメディアのKPIを全て金額換算!
うちの会社で最もコストがかかっているのは、意外にもチラシなんです。チラシ1枚あたりの単価でソーシャルメディアの拡散価値を考えて金額換算して「これだけの人に伝わったよ」ということを経営陣に報告しています。
そうすると社内のみんなに、「これだけの人に情報を伝えられました。でもお金はかけていません」と言えますからね。
KPIは企業ごとに設定するべき
KPIは、企業ごとにみんなが納得できる数値であればなんでもいいと思います。SNSやエンゲージメントにあまり詳しくない人も居るので、より全員が実感できる数字に落としかえてあげるということが一番大事だと思います。
ソーシャルメディアに関しては、これだけの人を店舗送客して、コミュニケーションは双方に取れて、しかもお金をかけていませんよ、といったことを言っています。お客様の意見を聞いてリサーチしたりも出来ますし。
ですから、企業ごとにKPIは設定すべきだと思います。
奥谷さんのソーシャルメディアに対する考えまとめ
- SNS運用のテーマは店舗送客
- アナログとデジタルの融合でお客様にお店で楽しんでもらう
- オフラインtoオンラインで顧客を増やす
- 共感するメッセージしか広がらない
- SNSの数値は企業のみんなが実感できる数値に置き換える
以上、『良品計画さんが考える「ソーシャルメディアはこう使え」|本当のSNS活用のカギは”オフライン”にある【前編】』でした。
次回は、良品計画さんのオウンドメディアの運用方針・ソーシャルメディアとの絡め方をご紹介します。
※元記事 :http://gaiax-socialmedialab.jp/socialmedia/257
GaiaXソーシャルメディア ラボ
">by GaiaXソーシャルメディア ラボ