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【ケーススタディー】ヴァージンアメリカに見るユーザーエクスペリエンス戦略【btrax】

2013/06/03 09:37 投稿

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先日、L.A.に出張に行って来た。アメリカ国内の出張や旅行には出来る限りヴァージンアメリカ (Virgin America) 航空を利用する様にしている。一番の理由は彼らが提供するユーザーエクスペリエンスが大好きだからだ。シリコンバレーに本社を置くヴァージンアメリカ航空 (以下VA) はシリコンバレーに本社を置く航空会社。リチャード・ブランソン率いるヴァージングループの一つである。リチャード・ブランソンといえば、その破天荒な考え方とユニークな経営スタイルが有名で、最近も罰ゲームでスチュワーデスのコスプレをして話題をよんだ。そんな彼がプロデュースする航空会社がヨーロッパを拠点とするVirgin Atlanticとアメリカ国内向けのVirgin Americaである。

 

リチャード・ブランソンによるコスプレの様子

彼らはその他の航空会社を寄せ付けないユーザーエクスペリエンスを顧客に提供し、他に類を見ないブランディング戦略を展開している。ブランディング=企業のイメージ/価値の向上と定義されるが、彼らの場合、下記に説明する優れたユーザーエクスペリエンスを通して企業価値の向上を達成している。

 

ヴァージンアメリカが提供する総合的なエクスペリエンス

 

スムーズで使いやすいWebサイト

まずは何より彼らのヴィジュアル・レプリゼンテーション(視覚的表現)が卓越である。全体を通して赤と白をテーマにデザインされている。これは、広告、 Webサイト、安全のしおり、搭乗券、ビルボード、名札、ナプキン等どれをとってもブランディングが共通で、デザイナーの目から見ても一切に抜かりは無い。また、視覚的マテリアル全体を通し、洗練されたデザインとカジュアルな雰囲気のイラストやアイコンを兼ね合わせる事により、先進的でありながらも人間的なやわらかさを共存させる事に成功している。Webサイトはシンプルで使い易さ重視。それに加え、全体的にソフトな雰囲気も醸し出している。結果的に、チケットをその他の代理店等のサイトで購入する気が無くなる。

 

 

空港でのチェックインもスムーズ&スタイリッシュ

空港についてからもユーザーはVAが提供する優れたエクスペリエンスを体感する事が出来る。チェックインは明るい雰囲気のタッチパネル型キオスクを利用して瞬時に可能。このキオスクのUIもとても分かりやすくオシャレ。搭乗券の大きさやデザイン/形状もなかなか素敵。また、スマートフォンアプリでQAコードを表示すれば、搭乗券代わりに利用する事も可能。

 

 

クラブ感覚のラウンジ

彼らが提供するエアラインラウンジもひと味違う。Loftと呼ばれる彼らのラウンジはとことんスタイリッシュな雰囲気を追求し、まるでクラブに入ったような感覚。飛行機に乗る前のワクワク感をよりいっそう演出してくれる。中のバーではオシャレな各種カクテルも取り揃えている。

 

 

機内でのクールなユーザーエクスペリエンス

上記のWebサイトにも見られるユーザーエクスペリエンスだが、実際に搭乗してからも卓越している。機内に入るとまず驚くのが、機内灯のピンク・パープルのネオン色。場合によっては常軌を逸するようなこの色が、座席スクリーンの赤と相まって、なんとも不思議な雰囲気を醸し出している。離陸前の機内ではスローテクノがBGMとして流れる。これは、視覚・聴覚共に完全にナイトクラブ状態。また、離陸してからは機内でWi-Fiを利用する事が可能になり、これもまた最先端のイメージ作りに一役買っていると言える。

 

 

驚異の機内安全ビデオ

安全説明のビデオである。旅客機に乗った事のある人であればおなじみの、見飽きたお決まり映像を想像していたのだが、これがめちゃくちゃエンターテインメント性が高くなっている。映像は全て手書きのアニメーションで構成されて、ナレーションもかなりファンキー。これでよくFAA (連邦航空局)の審査をパスしたなと思える程の代物である。しかしながら、その話題性からYouTubeにもアップされている。これにより、ユーザー生成型のバイラルキャンペーンが自ずと展開される。これも遊び心を大切にするヴァージングループらしい演出である。

 

 

先進的なタッチパネルスクリーン

VAの機内には全ての座席にスクリーンが標準装備されている。また、数年前よりタッチパネルが採用されており、映画や音楽の他、ゲーム、機内でのお買い物も全てこのタッチパネルスクリーンを利用して行う。ちなみに、$6のランチセットをオーダーしようとスチュワーデスに声をかけた際に、「お手元のスクリーンからオーダー下さい」と言われ、画面に表示されている商品をショッピングカートに入れ、チェックアウト、クレジットカード番号を入力してオーダーした。まるでECサイトで買い物をした感覚になったが、その直後に横に居たスチュワーデスさんからランチが支給された。

 

 

エアラインクレジットカードもかっこ良い

同航空会社ではelevate!と呼ばれるマイレージカードに加え、利用額に合わせてマイレージが加算されるクレジットカードも発行している。早速入会してみたのだが、そのカードのデザインがものすごくユニークだ。背景には機内の写真が使われ、表面はピカピカに光るホログラム加工がされている。そのおかげで利用時にものすごく目立つが、実は表面の番号が読みにくく、意外と苦戦する時もある。それでもやはりかっこ良いので、利用頻度は高い。

 

 

優れたエクスペリエンスから得られる効果とその結果

こんなにもエクスペリエンス面で攻めているVAだが、実はアメリカではTravel & Leisure Best Awardsにて3年連続No.1を獲得している。なぜなら、ここまでの洗練されたブランディングと顧客サービスをを施しながらも、驚くべき事に航空券の値段はかなり安い。多くの場合同じ路線の航空会社よりも安いのである。その理由として考えられるのはコストの削減にある。VAは比較的少ない従業員数で、需要の多い路線にフォーカス。また、話題性を高める事により、ソーシャルメディア等を活用したユーザー主導によるバイラルによる”クチコミ”戦略に成功している。それによって広告費用を抑えているのだ。例えば、僕自身のように、乗客が飛行機に乗って機内の写真を撮る。そして機内Wi-Fiを利用してリアルタイムでTwitterとFacebookにアップする。それにより、多くの友人が”これはどこの航空会社?”と話題になる。といった仕組みである。これにより、大きな広告予算を投じずして、ユーザー生成型コンテンツによる自発的なマーケティングを達成している。この辺も、新時代のブランディング・マーケティング戦略と言えるだろう。

 

 筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.


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