GaiaXソーシャルメディア ラボの井出です。
自分が運用しているFacebookページは、どういった効果が出せているのか?定量的にその「効果」を計測されている企業さんは少ないのではないでしょうか。
リクルート住まいカンパニーさんのSUUMOのFacebookページでは、「SUUMOサイトの利用意向」などの態度変容調査を定期的に行い、定量的なFacebookページの効果算出をされています。
先日の花王さん、ライオンさん、ヤマハさんのFacebook戦略の記事に続き、今回はリクルート住まいカンパニーさんのSUUMOの取り組みをインタビューという形でお届けします。
効果算出の考え方だけではなく、ブランド戦略の中でのソーシャルメディアの位置づけ、TVCMとの連携のさせ方なども伺っています。
皆さんの参考になるお話が一杯ですので、ぜひ最後までご覧頂けたらと思います。
■目次
1.「低頻度高単価商材」におけるSUUMOのソーシャルメディアの使い方
2.TVCMの課題をソーシャルメディアを軸にWEBと連携させることで補完
3.先行者メリットを享受するためにいち早くFacebookページを開設
4.ファン数は多ければ良いという訳ではない。
5.Facebookページの効果測定の考え方:利用経験を上げたい。
お話を伺った方
企画統括室事業推進・事業開発部 ブランドマネジメントグループ
ブランドチームリーダー 田島 由美子さん
1.低頻度高単価商材におけるSUUMOのソーシャルメディアの使い方
GaiaXソーシャルメディア ラボ(以下、ガイアックス)井出 :
SUUMOさんでは、2010年からFacebookを活用するなど、ソーシャルメディアの活用に積極的だと思うのですが、どういった目的で使ってらっしゃるのでしょうか?
株式会社リクルート(以下、リクルート) 田島さん :
住まい探しをする時にSUUMOを利用される方を増やしたいというのが最終目的です。そのために「住まい探し」を考えた時に「SUUMOを使おう」と思ってくれる人を増やす、「SUUMOの利用経験率を上げたい」というのが第一目的です。
住宅は検討頻度が極めて低い商材
SUUMOが扱っている「住宅」は売買経験は一生のうち1.8回ですし、「賃貸」だけで見ても2.3回です。つまり、10年単位でしか「住宅」についての欲求は生まれないのです。
また、購入においては一生分のローンを組むほどの高額商品かつ、一生を左右する決断にあたり関与度が高いため、企業からの一方的な購買促進は消費者に響きにくい傾向があります。
欲求のトリガーが消費者にある
さらに、他の高額商品以上に住まい探しは多様な価値観が反映され個々人で検討するタイミングが異なる傾向が強いため、企業からのプッシュによって「住み替え」というアクションまで推し進めることは難しいのです。
つまり、住宅購入における欲求のトリガーは消費者側にあるのです。
こういった背景があったので、とにかく欲求が起きたカスタマーと少しでも多く接触するために、リスティング広告、SEO対策などの検討層向けの集客施策を数多く行なってきました。
検討層マーケティングから潜在層マーケティングへのシフト
もちろん、今でもリスティング・SEO対策は行なっていますし、今後も重要な集客戦略です。
しかし、
- リスティングのビックワードの単価向上
- SEO対策での主要ワードでの競争激化
などネット上の集客における競争環境が激化する中、検討層との接点だけを考えていたのでは限界があると感じていました。
そんな中、3・11以降急速にソーシャルメディアがインフラ化し、日本でもソーシャルメディアが普及しました。多くの方がソーシャルメディアを利用されるようになり、潜在層の方々と接触する場ができたのです。
さらに、アトリビューションマネージメントの技術により間接効果が測れるようになりました。SUUMOサイトへのラストクリックだけでなく、そのクリックへ影響したソーシャルメディアでの活動が計測できる可能性が出てきたのです。
潜在層へアプローチし、その効果測定の仕組みができたことにより潜在層マーケティングをする環境が整いました。
先にもお話しした通り、欲求のトリガーが消費者側にあるため、いつニーズが高まるか分からないのも低頻度商材の特徴です。
だからこそ、ニーズが潜在化している時も、常に消費者に寄り添い、「スーモくん」のキャラクターをフックにコミュニケーションを取ることで「購入しよう」、「引越ししよう」、と思った時に最初に思い受かべて貰えるブランドにしたいと考えました。
ソーシャルメディアは戦術の一つでしかない
また、SUUMOではブランド戦略は事業戦略の一つと位置づけています。
単にSUUMOを宣伝することがブランド戦略ではなく、「SUUMOメディアを利用してもらう」という事業戦略を遂行するためにブランド戦略が存在しています。
ソーシャルメディアはそのブランド戦略を遂行する戦術の一つでしかありません。ただFacebookが流行っているから取り組んでいる訳ではないのです。
恐らく、なんとなく初めてしまうと、「結局何のためにやっているんだっけ?」となり、ソーシャルメディアでの活動の優先順位が下がり、予算や投下できる工数も減らされていく負のスパイラルに陥るのだと思います。
事業戦略に則してブランド戦略を立案し、その事業目標を達成するための施策として「ソーシャルメディア」を位置づけることで、社内コンセンサスも取れ、他の部署と連携を取りやすくなります。
もちろん、効果測定をして社内にフィードバックをして行くことも重要です。(効果測定の内容については後述)
2.TVCMの課題をソーシャルメディアを軸にWEBと連携させて補完
ガイアックス 井出 :
SUUMOさんでは、CMなどのマス広告も多く拝見しますが、WEBやソーシャルメディアとの連携や位置づけなどはどのように考えてらっしゃるのですか?
リクルート 田島さん :
おっしゃるようにSUUMOはTVCMも打っていますが、WEBとソーシャルメディアを有機的に連携させる「統合ブランドコミュニケーション」が大事だと思っています。
統合ブランドコミュニケーションを主力の戦術としているのにはいくつか理由があります。
理由1:CMだけでの認知は一過性
理由の一つが「CMで上げられる認知度は一過性」ということです。以下のグラフに示すように、CMを投下すれば認知率は上がるのですが、投下していない時は下がってしまいます。
継続的にCMを投下していかれることができれば、認知率を向上させるのにはTVCMを出稿し続けるだけで十分かもしれません。しかし、冒頭にもお話ししたとおり低頻度商材かつ欲求のトリガーが消費者側にある商材では継続的にTV CMを打ち続けるのは非効率的なのです。
CMを放送すると、その時に「検討層」であった方はSUUMOに来ていただけます。
しかし、世の中の大多数でいらっしゃる「潜在層」の方々にはそのコミュニケーションが刺さらず水漏れを起こしています。そこをソーシャルメディアで受け止めようと考えました。
そして、潜在層の段階から寄り添いながら関係性を温め、検討層に移行したタイミングでSUUMOを一番に想起、利用してもらうことを狙います。継続的にカスタマーと接触する手段としてFacebookページやtwitterを活用しているのです。
理由2:TV、WEB、ソーシャルメディアに強み・弱みがある
認知効果が一過性とはいえ、TV CMにおける影響力が大きいのは事実です。TV CMは多くの方々に「リーチする力」が高い一方、放送時間が限られているため「体験してもらう力」は弱いです。
その点WEBはその表現力の高さからカスタマーに「体験してもらう力」があります。一方で体験したことを「拡散・浸透」させることはできません。そこが強いのはソーシャルメディアです。TV CMにより多くの方々に「リーチ」し、WEBを通した「体験」をソーシャルメディアを介して「拡散・浸透」する。
3つのメディアには各々に強み・弱みがあるからこそ、補完し有機的に連携させた「統合ブランドコミュニケーション」を行うことでSUUMOのブランド体験を積んでもらうことが可能になるのです。
3.先行者メリットを享受するためにいち早くFacebookページを開設
ガイアックス 井出 :
SUUMOさんでは、Facebookページの開設が他社さんよりかなり早いタイミングだったと思います。それはやはりソーシャルメディアは先行者メリットを得やすいと感じてらっしゃったからですか?
リクルート 田島さん :
はい、その通りです。twitterがブームになった時から、ソーシャルメディアは早く始めるほど、先行者メリットがあると感じていました。
メリット1:ナレッジの蓄積
まず先行者メリットの1つ目が「ナレッジの蓄積」です。ソーシャルメディアは自分達で運営しないと知見が貯まりません。
書籍やネット上などで公開されている情報を得るのも良いですが、そこに出ている情報が全てではないですし、特に本だとどうしても出版のスケジュールから見ても、最先端の情報が集まっている訳ではありません。ですので、自分達でやってみて、試行錯誤を繰り返し、効果を検証しながら戦術をブラッシュアップしていくことが知見をためる上では必要です。
ソーシャルメディアを自分で体感しないと分からない事も沢山あります。カスタマーがどんな内容に反応してくれるのか、どんなコミュニケーションなら返事をくれるのか、などインタラクションを生み出す細かいノウハウは自分たちで体験しているからこそわかる内容です。こうしたノウハウを他社より多く蓄積できるのが先行者メリットの一つではないでしょうか。
メリット2:ファン数の伸び
また、「ファン数の伸び」という点でも先行者メリットが大きくありました。
早く始めるほど、そのソーシャルメディア(今回で言うとFacebook)の成長に合わせて、ファン数も自然と伸びて行く傾向があるかと思います。
Facebookにおいては企業ページの事例として様々なメディアでも自然と紹介されやすくなりましたし、他企業ページが少ない状態でしたので一人ひとりのファンの方々とリーチしやすく、結果的に自然とクチコミでのファン増加につながりました。
以上、インタビュー前編『リクルートSUUMOから学ぶFacebookの使い方5つのポイント|Facebook戦略策定の押さえ所。』でした。
続いてインタビューの後編をご覧下さい。
※元記事 :http://gaiax-socialmedialab.jp/facebook/137
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