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いぬっくす小説っぽ

あまちゃん 80話 ピエール瀧の寿司屋 後編

2013/08/09 14:29 投稿

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「すげー世界にいんだな天野」
自らの虚脱感を表すように種市は座敷の壁を背もたれがわりに体重を預ける格好で溜息と同時に漏らした。

「はい」 アキは正座でショボンと。スパイさながらの盗聴が応えた。

「やっていけんのが。アメ横女学園だってすげー人気だけど、俺ぐれえだど顔わがんの精々七、八人だべ」
アキには無理だと言わんばかりの言い回しだった。

「アメ女八犬伝な。その他にメンバーが四、五十人いるらしい」
こんなすごいところでやっているんだと多少の誇らしさがアキにはあった。

「その下っでことだろ」
突きつけられる現実は先ほどの想いへの恥ずかしさと実情を再確認させる。
努力とはこの認識から始まるのだ。
静かに認識を飲み込んだ。

「まさに下で踊ってる」

「いのがそれで」
気のせいかもしれないが種市が馬鹿にするような半笑いで言ったように見えた。

「いいわけじゃねえが今はそれしか道はねえし、せめてゆいちゃんがくるまでは」
いまはいい。
今ある闘いはまさにこれで。
自分の闘いはもしかしたら後の大スターユイのためのものなんじゃないかと
自分の人生は彼女への橋渡しという意味があるのではないかと思う。
それは妙なもので酷く悲しく。
アキそのものに意味なんかないんじゃないかと心を奈落に落としてしまうものであると同時に誇らしさも芽生えていた。
だってそうなんだ。
太巻がああも褒め称えたんだ。
彼女はきっとスターになる。
数々のスターを生んできた男のお眼鏡にかなったんだから。

「こねんじゃねえがな」

「え?」
驚きはすぐに形へと変化する。
感情は現象へとカタルシスを引き起こす。

「あいつも諦めてんじゃねがな」

アキの脳裏をよぎるのはあの日。
東京へ出発するはずの日にユイの父は倒れ先にアキだけが出発した駅での出来事だった。
「すぐ行くからね。」 「すぐいくからね。」 「すぐいくから待っててね。」 「すぐいくからいぐから待っててアキちゃん」
お互いに何も振り切らないまま離れ離れになった。 今もユイは父の看病をしながら東京へ行く日を夢見ているはずだしアキもまたその日のためにユイが座る席を確保している。 これはイスとりゲームで明日もし太巻がユイより才能があると見知らぬ誰かを連れてきても自分さえ必死に努力をしていればその席はユイのものだと思っていた。明確な想いではなかったが何となくそう信じていた。

「そんな。やめてくださいよ。縁起でもねえ」
アキの中にフツフツと沸き起こる何かがあった。
水が沸騰して上がる蒸気のような

「出鼻挫かれたっつーの?」
「もう遅れとっちゃってるわけだべ。着ても舞台の下からスターとだべ」
「耐えられねえと思うんだ。天野と違ってゆいはプライド高ぇし。エリートだし。この歳まで挫折を経験したこともねぇし」

言われながらアキの目に涙が表面張力ギリギリに溜まっていく。

「やめでよ」

「いっそこのまま田舎で地元のアイドルやってたほうが」

糸は引っ張られれば切れるものだ。
それは感情の糸も同じく。
「わがったようなこと語んな」
溢れ出した感情は叫びとして現れた。

「え?」

「ゆいちゃんは来る。絶対来る。そんな簡単にあきらめねえし、弱くねえし、中途半端なことはしねえ」

※弟子っ子が割って入ってくる。お店としては止めざるを得ない。
「お客様」

慌てた種市が取り繕うように止める。
「落ち着け、天野」

「すっかりすてけろ先輩。こないだまで七十キロのヘルメット被ってしゃんとしてだのに」

※種市は南部もぐりをしていた。
ヘルメット式の潜水技術者で主に水中工事をする。と思う。

種市は痛いところを突かれた。
触れられたくないところだ。
問題を正面から受け止め解決していく田舎の優等生は東京でどんな挫折を味わったのかはわからないが的を首からぶら下げた。
私の弱みはここにあります。と、しかしそれは後輩は射抜いてはならない。
それは彼らの世界は年功序列でできているから。
才能の良し悪しは同じ学年のものだけで語られるものだ。
得手不得手は同じ学年のものだけで語られるものだ。
誰かに足を引っ張られたり身に覚えのない中傷もそうで同じ学年のものだけがしていいことだ。
少なくとも田舎ではそんなルールがあった。
東京ではそんなルールはないらしかった。
アキには同じ田舎の後輩なのだからそのルールを適用していたが自分の傷心が踏みつけた無垢な心はあの頃のまま無垢なままではなく、生きるために闘い今日食べるものは自らが捕食し捕まえられなければ食べないような野生のルールで生きている何者かに変貌を遂げていた。
アキが生きていくために必要なユイという希望を汚すものへの敵意。
ここに惚れた弱みはもう存在しない。

「縮こまって情けねぇ。南部潜りの精神忘れたのか」
アキの放った矢は一発必中が如く 正確に種市の的を射た。

「田舎さいるころは田舎の悪口、東京さ来たら東京の悪口、そういうの一番嫌いだったでねえか」
「なんだよ。」 「エリートでプライド高いのは先輩のほうでねーか」
「なんだよ」 「おらの初恋の相手はこんなにちっちゃい相手だったのかよ」
あの人はああであってほしい。
例えば松本人志にはいつまでも天才であって欲しかったし
例えばマツコ・デラックスにはいつまでも正確にものを捉えていて欲しかったし
例えば庵野秀明にはいつまでも我々が見たかったものをそう気づく10年前に制作して欲しかったし
例えば冨樫義博には年に一度は連載再開して欲しかった。
そんな思いで嘆きと激励を乱射していく。

「お客さん」 大将が止めに入る。 弟子の静止では止まらないからだ。

「自分が挫折して帰るのは構わねぇが、おらとユイちゃんを巻き込むのはやめてけろ」

「おきゃくさん」

「ゆいちゃんは来る。絶対来る」 言いながら表面張力の限界を超えた涙は頬を伝う。

「おきゃくさん」 大将が強めの声で止める

「わがった。わがったから」
種市は根が腐っているわけではない。
言葉は胸に届いていた。

「すいません」
「そろそろ帰るべ」
「これ。持って帰ってもいいですか」 目の前の握りを指差して。
「ん?」
「勿体ねぇから」
「寮の友達さ、お土産だ」

アキにはもう種市の見知らぬ誰かとの友情があった。
それは更に種市に孤独を味あわせるものとして映っただろう。
アキと種市は同じ場所にはいない。

「じゃあお会計」
「もう済んでますよ」
「は?」
「鈴鹿さんからいただいてます」
あの人気づいてたんだ。

※この南部もぐりのくだり実は私があまちゃんハマる前なので見てないのです。
あそこで過去のエピソード入れるべきだとは思いましたが
残念無念

長かった 特にセリフ起こすのが もしかしたらどっかのホムペに載ってるかもと思ったのがセリフおこし終わってからでした。 ┐(´∀`)┌ヤレヤレ


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