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ゴースとらいあんぐる 3話「そして、彼女はそんなことをのたまった」

2014/03/14 22:05 投稿

コメント:1

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坂崎家の朝食は和食である。食卓を両親と子供が挟むようにして囲むのが、この家のルールであった。
「あふ……」
俺は味噌汁を手にしながら欠伸をかみ締めた。寝不足のせいで目がしょぼしょぼしている。それをみた母が、
「和也、あんたパソコンで夜更かししちゃ、ダメって言ったでしょう」
「そうだぞ、あれは勉強に使うために買ったんだからな」
厳格な父も威厳たっぷりと言った。
「いや、パソコンで遊んでたんじゃないよ」
「じゃあ、何してたの?お兄ちゃん」
「………………」
美樹の言葉に俺は黙り込んだ。そして、ちらりと上を見る。そこには幽霊少女り瀬川日向がぷかぷかと浮いている。坂崎家の朝食を見て「わー、おいしそー」などとのたまっている。
美樹にも日向の姿は見えなかったが、やはり両親にも見えていないらしい。
もちろん、寝不足の原因はコイツだった。幽霊であるところの日向には睡眠欲求というものが存在していないらしく、一晩中話しかけられていたのだ。
初めは懐かしさもあってた俺も付き合っていたのだが、いよいよ眠たくなってからも日向は一向に話しを止めなかったのだ。しかも、大半はどうでもいい話だった。
「いや、勉強をしていたんだよ」
「あら、そうだったの、珍しいわね」
のんびりやの母がおっとりと言った。嘘を吐くのは心苦しいが、他にどう言えばいいのかもわからないので仕方が無かった。
「ごちそうさま、じゃあ行って来るよ」
これ以上突っ込まれてもマズイので俺は早々に朝食を終え、鞄を手に取り学校に向かうことにした。
今日は見事な快晴で本来なら気分のいい朝なのだろうが、寝不足の目に太陽の光が染みて、俺は顔をしかめた。
ちなみに、俺が通う高校、開南高校は住宅地の真ん中にあり徒歩10分という最高の立地条件だった。さらに言うと妹が通っている中学も隣にある、開南中学校だ。
それほど早くも遅くも無く家を出たせいで、それほど学生の姿は多いというわけではなかったが、俺はハラハラしていた。
その原因は俺の上に浮かびながらついてくる日向のせいであった。もし、誰かに姿を見られるかと思うと気が気ではない。
「お兄ちゃん、待ってよ!」
後ろから美樹が追いついてくる。
「置いていくなんてひどくない?」
「悪かったよ」
いつもは一緒に通学していたのだが、やはり俺は日向のせいでいつもとは違う精神状態のようだ。というか、幽霊に憑かれて平静でいられる高校生は漫画かアニメのキャラクターだけだ。
「やあ、2人ともおはよう」
角まで来たところで現れたのは、俺と日向の同級生にして幼馴染の少年、青井涼だった。
俺よりも頭ひとつ大きなすらっとした体格にすっと通った鼻筋に、名前の通りの涼しげな目に少し茶色がかった短めの髪。
青井涼は所謂イケメンという部類の人間である。高校ではクラスは違うが俺は、クラスの女子が何故、涼のような格好いい人間が、野生児のような俺とつるんでいるのが、不思議でならないと話しているのを聞いてしまって、地味にショックを受けたことがあった。
ま、涼自身には怨みも含むところも無いし、親友だし、何よりも涼はいい奴なのだ。
「よっ、おは、よっ…!?」
涼に返事をしようとして俺は目を剥いた。
日向が涼の眼前でぱたぱたと両手を振っているのだ。無論、涼はそれには気付いていない。涼に日向が見えないのは、彼女自身が言っていたことだ。
「どうしたんだい?和也」
俺を心配してくれている涼の顔は俺には見えなかった。何故なら間に日向がいたからだ。
「兄はちょっと寝不足なんですよ、青井先輩」
美樹が少し頬を染めながら言った。妹はちょっと涼に憧れているところがあるのだ。涼よお前になら俺は妹を任せられる……。しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。
「ははは、そうなんだよ、ほら早く学校に行こうぜ」
俺は急いで歩き始めた。2人が慌てて着いて来るのがわかった。しかも日向は涼の目の前に浮かんだまま着いて来ている。
全てが見えてしまっている俺にはシュール過ぎる光景だ。一刻も早く学校に行かないと日向に怒鳴りそうになってしまうので、俺はとにかく急いで歩き続けた。

学校そばで美樹と別れ、俺と涼は学校へと入っていく、2年生の2人は4階建ての校舎の2年生フロアーの3階へと向かう。
階段を3階分上りきり、俺は右に涼は左にわかれる。階段を真ん中に左右に5クラスづつあって、俺と日向は3組で涼は8組だった。
それまで涼にまとわりついていた日向だが、意外にも別れると俺と共に3組の教室に入ってきた。
「あー!お花が飾ってあるよ!カズ」
真ん中の席に花瓶があるのを見て日向はうれしそうに叫んだ。
こいつ、こんなに能天気で、バカだったっけ? それとも幽霊になると知能が落ちるのだろうか? 俺は窓際最後尾の自分の席にカバンをかけ、椅子に腰を降ろして、額を手で押さえた。
ふよふよ、と空中を漂い近づいてくる日向に小声で言った。
「お前の席だろ、お前に供えられているんだよ」
教室にはもう半分くらいクラスメートが集まってきている。万が一にも聞かれるわけにはいかないのだ。
「あっ、そっかーあたし、死んでたっけ、あははー」
我慢…我慢だ坂崎和也、ここでキレたら俺は変人のレッテルを貼られてしまう。俺は深呼吸をしてなんとか叫びたいのを堪えた。
「それよりも、カズ……昨日の相談覚えているよね?」
成仏するためのお願いというヤツの事だろう。確か学校で言うと言っていたっけか。
「後にしよう、飯の時間になったら中庭に行くから」
「えー、長いよ、今でいいでしょ」
「カンベンしてください日向様。お願いです」
「うわっ、超卑屈だ……!仕方ないなあ」
「頼む、それまでどっかで暇つぶししてくれ」
じゃないと俺の神経が持たない。
日向はぷくっと頬を膨らませて、
「わかった、涼の所に行って来るわ」
と、壁を突き抜けて8組の方へ向かっていった。俺は日向が壁を通り抜けることが出来るのを知らなかったので、驚いて椅子から落ちそうになった。ガタンっと教室の後ろでした大きな音にクラスメート達が何事かと振り返ったが、俺がすまんと手を上げると、みな思い思いの用に戻っていった。
別に俺がクラスで浮いているとか相手にされていないとかではない、クラスメイト達は日向のことがあったので未だに俺に気を使っていてくれるのだ。それほど俺と涼と日向の仲の良さは有名だったから。
きっと涼も自分のクラスでは俺と同じような扱いを受けているだろう。
「取り敢えず、昼休みか………」
朝の授業の準備をしながら、俺は一人ごちた。

「すまん、もう一度言ってくれ」
昼休み、中庭のベンチで弁当を食べながら俺は目の前の幽霊に聞き返した。
まわりには同じように昼ごはんを食べている生徒たちがかなりいたが、幸いなことに俺のいるベンチの近くにはそれほど人がいなかったので声は日向にしか聞こえないはずだ。
麗らかな初夏の昼下がりに、日向は幽霊らしく青白い顔で宙に浮いている。
「耳悪いのあんた」
「いや、意味がわからんかっただけだ」
「だから、言ってるでしょ」
日向はぐっと両の手を握り締めて、力強く言った。
 
「私、涼が好きだから、告白してこの身を捧げたいのよ!!」

どうやって? 俺が思ったのはただその一つだった。しかし、この言葉こそ俺の災難の幕開けとなるのである。

おかげで俺はこの日の弁当の味を覚えていない。



コメント

マサックス (著者)
No.1 (2014/03/14 22:07)
遅々として話が進まなくて申し訳ありません。そんなに深く考えずにやってますんで。
次回からは一応ストーリーが動き出す予定です。
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