結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年12月23日 Vol.143
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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まずは嬉しいニュース。
この「結城メルマガ」が、 まぐまぐ大賞2014の有料部門(恋愛・心理)に入賞しました!
◆まぐまぐ大賞2014有料部門(恋愛・心理)
http://www.mag2.com/events/mag2year/2014/pay/ren.html
恥ずかしながら「まぐまぐ大賞2014」を開催しているということ、 結城は気付いておらず、運営さんから入賞の連絡をいただいて、 はじめて知りました。
ご推薦くださったみなさま、ありがとうございます!
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英語版「数学ガールの秘密ノート」の話。
"Math Girls Talk About..."シリーズを翻訳出版している Bento BooksのWebサイトでは、PDFでサンプルチャプターを読むことができます。 つい先日、第三巻の"Trigonometry"(三角関数) のサンプルチャプターが公開されました。 ぜひご覧ください。もちろん無料、登録不要で読むことができます。
◆"Math Girls Talk About..." (Bento Books)
http://bentobooks.com/math-girls-talk-about/
アマゾンにもページはできていますが、12月22日現在、 まだ購入可能な状態にはなっていないようです。
◆"Math Girls Talk About Trigonometry" (アマゾン)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1939326257/hyuki-22/
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仕事したくないときの話。
結城はたいてい嬉々として文章を書く仕事をしているのですが、 そんな私でも「何となく仕事がしたくない」ときがあります。 そういうときに口ずさむお気に入りのフレーズは、
「さて、だらだら仕事しよう」
です。「だらだら仕事する」というのは良くないイメージがありますけど、 なぜか、こんなふうに口で言うと、仕事に取りかかりやすいのです。
結城が想像するに「しっかり仕事しよう」という表現は、 自分が元気に満ちているときにはいいけれど、 何となく仕事がしたくないときには向かないのかもしれません。
「だらだら仕事しよう」だと、何だかやってもやらなくてもいいから、 気楽に始められるみたいです。そして実際仕事に取りかかってしまえば、 いつものように楽しく執筆が進む。
「だらだら仕事しよう」という表現によって、 自分の「何となく仕事したくない」という無意識クンを、 うまく出し抜くことができるのかもしれませんね。
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もう少し真面目に話してみよう。
本を書いていると、こんな気分になることがある。
大きな波が自分に押し寄せて来る。 ゆっくりゆっくりやって来る。
それを受け止めるのは自分一人だ。 自分は両手を上げて、大きな波に対峙している。
私は、その波を防ごうとしているのだ。 その波を防ぎ、押し返そうとしているのだ。
……そういう気分になることがある。
でも、実は、それは単なる錯覚である。
大きな波が押し寄せるように感じるのは、 実は睡眠不足が理由かもしれない。 押し寄せてきているのは波ではなく、 ただの低気圧なのではないか。
大きな波を一人で防ごうとしているなんて、 そんなふうに劇的に考えるもんじゃない。
自分の仕事を必要以上にドラマティックにするな。
淡々と今日の作業をしよう。
仕事は、呼吸である。
劇的な呼吸など、ない。
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さて。
本の紹介で思うこと。
結城は毎日のように自分の本の書名で検索をしています。 いわゆる「エゴサーチ」ですね。
いろんな方が、いろんな表現で結城の本を紹介してくださっているのを見ると、 とてもうれしくなります。
結城は自分の本を書くときに、
「教師や先輩や親が、生徒や後輩や子供に紹介したくなる本」
を目標の一つにしているようです (「ようです」と書いたのはそれほど意識してねらっているわけではなく、 自然とそうなっていると感じるからです)。
「紹介したくなる本」にはいくつかの意味が含まれています。
・内容的に良い本
・形式的に良い本
・当たり前のことを紹介者がわざわざ伝えなくても、
これを読んでもらえれば伝わるという本
(「まずはこれを読んでごらん」と言える本)
それに加えて「紹介することで世界が広がる本」という意味もありますね。 ここでいう「世界」というのは、 紹介する人と紹介される人の間にある世界のことです。
つまり、紹介することで、人間関係によい刺激が生まれ、 相互に深い知的対話が生まれるような本。 そのような意味で、
「紹介したくなる本」
を書きたいと思っているのです。
望みすぎかしら?
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次は、インタビューの話。
先日結城は、「千葉県高等学校教育研究会数学部会」さんからインタビューを受けました。 千葉県の高校数学の先生ですね。
その結果が「部誌」という形にまとめられ、 ネットでも読めるようになりましたのでご紹介いたします。
結城が話した内容を担当の先生がまとめて文章にしてくださったものです。 この結城メルマガをお読みの方には既知の内容もあると思いますが、 よろしければお読みいただけると感謝です。
◆数学部会誌「α−ω」 - 千葉県高等学校教育研究会数学部会(第52号)
http://math.sakura.ne.jp/index.php?key=joh18kzt3-27
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「因果関係の錯誤」について。
結城は「因果関係の錯誤」を見つけるのが好きです。 因果関係の錯誤というのは、
AとBが同時に起きている
ことから、
AがBの原因である
と決めつけることです。 でも、もしかしたら「AはBの結果」なのかもしれないし、 「AもBも、全く別のCの結果」かもしれませんよね。
例を挙げましょう。
満員電車の中で、マスクを着けずに咳をしている人がいます。 咳をするならマスクを着けなくちゃ。 「咳をする人に限って、マナー悪い!」 ……でも、それは「因果関係の錯誤」かも。 「咳をする人に限ってマナー悪い」のではなく、 「マスクを着けていないから咳が出る」のかもしれませんね。
別の例。 「カフェにいる人を観察していると、 太っている人ほど、甘ーいスイーツを大量に食べてるみたい。 太っている人は甘いもの好きなんだね!」 ……それは「因果関係の錯誤」のような。 「太っている人ならば甘いもの好き」なのではなく、 「甘いものが好きだから太っている」のではないでしょうか。
雑談レベルの話ならば問題はありませんが、 自分の意志決定や重要な判断のときに 「因果関係の錯誤」をしていないかどうかは要注意ですね。
つまり「○○が足りないのが●●の原因だ」と判断して、 ○○を増やすという行動を行う場合、 本当に原因と結果(因果関係)を正しく把握しているかは、 大事なポイントになるでしょう。
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『数学文章作法 推敲編』の話。
おかげさまで、『数学文章作法 推敲編』は、 多くの方に楽しんでいただけているようです。
ある日のランキングではアマゾンの「ちくま学芸文庫」で、 第1位、第4位、第7位に「数学文章作法」シリーズが入っておりました。 みなさんの応援に感謝します!
◆『数学文章作法 推敲編』
http://mw2.textfile.org/
「数学文章作法」シリーズはまだ基礎編と推敲編の二冊しか出ていないのに、 どうして三つにランキング入りするかと言いますと、 基礎編は文庫版とKindle版の二種類があるからですね。
「数学文章作法」シリーズは、 執筆途中からこの「結城メルマガ」で連載をしてきました。 いわばこの結城メルマガの読者さんに育てていただいたようなシリーズですね。 このようにして多くの方にお届けできるようになったこと、 本当にうれしく思っています。
また、今年結城は2014年度の数学会出版賞をいただきましたが、 その受賞理由の中には『数学ガール』だけではなく、 『数学文章作法』についても触れられていました。 多くの方からの支援ならびに評価を感謝します!
◆2014年度日本数学会賞出版賞(日本数学会)
http://mathsoc.jp/publicity/pubprize2014.html
◆2014年度日本数学会出版賞受賞者のことば(「数学通信」第19巻第2号)
http://mathsoc.jp/publication/tushin/index19-2.html
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さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
今回は「数学ガールの特別授業(教師編)」の第6回をお届けします。 数学の先生向けに結城が行った講演会の様子です。 今回で講演はいよいよ最終回。 最後にクイズが出ますので、考えてみてくださいね。
それから「学びについて思うこと」という読み物。
「Q&A」のコーナーでは、「本との付き合い方」についてお答えします。
では、お読みください!
目次
- はじめに
- 数学ガールの特別授業(教師編)(6)
- 学びについて思うこと
- Q&A - 本との付き合い方について知りたい
- おわりに
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