結城浩の「コミュニケーションの心がけ」

Vol.097 結城浩/数学ガールの特別授業/確定申告/違いを認めるコミュニケーション/環境改善の基準/

2014/02/04 07:00 投稿

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  • 数学ガールの特別授業
  • コミュニケーション
Vol.097 結城浩/数学ガールの特別授業/確定申告/違いを認めるコミュニケーション/環境改善の基準/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年2月4日 Vol.097

はじめに

おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 いかがお過ごしですか?

 * * *

確定申告の季節です。

フリーで働いている人はもちろんのこと、 最近ではアフィリエイトなどで副収入を得ている会社員などにも 深く関わるイベント(?)ですね。

毎年のことなので、結城の準備は万端……のはずだったのですが、 いざ準備を揃えてみると帳簿のあちこちに漏れがあったり、 誤りがあったりして結局大騒ぎになっています。 困ったものです。

大ざっぱに言いますと、2014年に行う確定申告は、2013年の収入と経費を 計算して必要な税金の額を定める手続きです。 単純ですけれど、一年分の集計というのは意外にたいへんなものです。

会社員ですと、会社の経理の方がすべて計算し、 給料から税金を天引きし、年末に年末調整をしてもらえるので楽といえば楽です。 個人で仕事をしている人は全部じぶんでやる必要があります。

まあ、でも、結城の仕事は特に複雑な仕入れがあるわけでもないし、 在庫管理があるわけでもないですから、文句を言ったら怒られます。 言ってみれば「とっととやればいい」話です。

しかしながら人生はトラップに満ちているもので(大げさ)、 細かい困難があります。

 ・クレジットカードの記録を再確認するために、
  CSVファイルをダウンロードしようとしたら、
  過去3ヶ月しかダウンロードできなくて、
  再度書類取り寄せになった。

 ・取り寄せたものはプリントアウトしたもの(紙)なので、
  そこからCSVファイルを手で入力し直した。

 ・レシートの額を確かめようと思ったら、
  レシートが感熱紙タイプで、黒くなって読めなかった。

 ・入力したはずのファイルが壊れていて、
  一ヶ月分を再入力した。

結城は手間の掛かる処理を行うときには、 PerlやRubyのスクリプトを書いてコンピュータに任せることが多いです。 でも、会計処理の場合はそれが微妙にうまくいかないことがあります。

コンピュータが得意なのは、

 ・一貫した形式のデータを、
 ・一貫したルールで、
 ・大量に処理する

という場合です。しかし、個人で行った仕事の一年分の会計データというのは、

 ・あちこちに例外がたくさんあるデータを、
 ・個別処理を考慮しながら、
 ・たかだか千個くらい処理する

ことになります。なので、スクリプトを書くよりも腕まくりをして、 「よっしゃあ!」と手入力した方が早く済んでしまうことも多いのです。

プログラムを書く身としては、そこに余計なストレスが掛かります。 つい、

 ・このサイトの会計データがそろってさえいれば……
 ・なんで定期的に購入しなかったのか……
 ・ここを境に税率が変わるのか……

などという思いを抱く。 そして、スクリプトを書くべきか手入力すべきかの間で 心が揺れ動くのですね。

一年、三百六十五日というのはちょうど自動/手動判断の臨界点にあるようです。

とはいうものの、落ち着いて考えてみますと、 毎月それなりに「会計の日」を作り、その時点での集計をしていましたから、 それほど焦る必要があるわけではありません。 ただ、ミスが多かったというだけですね。

などといってないで、早く終わらせなければ……

 * * *

ところで確定申告の作業ではたくさんの細かい作業を進める必要があります。 一日では終わらないので何日かに分解するわけですが、 そこで便利になるのが「TODOリスト」です。

 ・自分のやるべきこと(TODO)をリストアップして、頭に□を書いておく。
 ・そしてそれが済んだら□にチェックマークを入れる。

というただそれだけなのですが、とても有効です。 個別に「残っている作業は何かな」を把握するにも有効ですが、 ぱっと見たときに「終わるまでまだまだ作業がたくさんあるなあ」と、 全体の進捗を把握するのにも有効です。

チェックマークを入れるのは、気持ちの「一区切り」としても有効です。 「はい、この作業は終わったよ!」という感覚ですね。

チェックマークを入れたTODOリストがあれば、任意の時点で作業の中断ができます。 「ここまでは終わったから、残りは後でやろう」ということができる。 言い換えれば、スキマ時間を使って少しずつでも作業が進められるのです。 そういう意味ではチェックマークはまとめてつけないほうがいいですね。 一つの作業を終えるたびにチェックマークをつけたほうがよさそうです。

参考までに結城が確定申告で使っているTODOリストはこんな感じです。 いろいろ差し障りがあるのでモザイクを掛けています。 これはEvernoteを使っています。

 ◆確定申告のTODOリスト

2014-02-04_todo.png

 * * *

さて、結城は今年「習慣の力を身につけたい」と思っています。 そのために「インクリメンタルな環境改善」を心がけています。 自分の作業を改善するというのは大きいものから小さいものまで思いつきますが、 やみくもに進めることはしません。 何を改善するかについては、いちおう基準を持っています。

 ・何かがとにかく「改善」されるもの。
  (変えればいいというものではないから)

 ・改善結果が具体的に見えるもの。
  (結果が見えるとさらに改善したくなるから)

 ・改善が大がかりにならないもの。
  (小さい改善を積み重ねたいから)

 ・さらに改善が見込めるもの。
  (一回限りの改善で終わらせないようにしたいから)

 ・過去の環境をうまく生かせるもの。
  (ご破産にしてゼロから始めるのはもったいないから)

 ・自分の習慣を壊さないもの。
  (他の人に良くても、自分に良いとは限らないから)

 ・自分のやる気や記憶に依存しないもの。
  (やる気がなくてもうまくいく、忘れてもうまくいく方向へ向かいたいから)

 ・楽しいもの。
  (楽しさ重要だから!)

おおよそ、以上のようなことを考えつつ改善に取り組んでいます。

 * * *

結城はTODOリストだけではなく、作業の「色つき星取表」も使っています。 「色つき星取表」は前回の結城メルマガでも詳しく書きましたし、 以下のブログでも簡単に説明しています。

 ◆最近の自分がどんな活動に力を入れているのかを簡単に把握する方法(「色つき星取表」を使う)
 http://d.hatena.ne.jp/hyuki/20140118/cal

ここに小さな改善を加えて楽しんでいます。 先週からさらに改善しましたよ。

まず、各作業ごとに「〆切」を入力できるようにしました。 具体的には、セルに -1 を入れたら赤で表示できるようにしたのです。 これで作業を単に記録するのではなく「先を見越した活動」ができるようになりました。

 ◆〆切を赤くした「色つき星取表」

2014-02-04_deadline.png

また「一行日記」を書けるようにしました。自分に無理がかからないように、 「書かなくちゃいけない」とはせずに「書きたければ書けるよ」としてあります。 具体的には、各行の一番右のセルを横に長くしただけですけれど。

 ◆一行日記を付けた「色つき星取表」

2014-02-04_diary.png

ここで行った改善はささやかなものですが、

 ・具体的に改善結果が目に見える
 ・自分のアイディアが形になるので楽しい
 ・毎日の「色つき星取表を更新する習慣」を壊さない

となっており、私の「改善する基準」に合致していますね。

 * * *

さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。 今回は、結城が昨年高校で行った特別授業の様子を文章にした 「数学ガールの特別授業」の最終回をお送りします。 それからコミュニケーションに関して「違いを認める」というお話しをします。

どうぞお楽しみください!

目次

  • はじめに
  • 数学ガールの特別授業
  • 違いを認める - コミュニケーションについて
  • 次回予告
 

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