結城浩の「コミュニケーションの心がけ」

Vol.083 結城浩/数学ガールの特別授業/本を書く心がけ/アウトラインエディタ/

2013/10/29 07:00 投稿

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Vol.083 結城浩/数学ガールの特別授業/本を書く心がけ/アウトラインエディタ/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年10月29日 Vol.083

はじめに

おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

先週は体調を崩してしまい、 いつもの結城メルマガを発行することができず、たいへん失礼いたしました。

その代わりというわけではありませんが、 企画した拙著の無料プレゼントに多数のご応募ありがとうございました。

今回は五冊のサイン本を用意しましたが、応募人数に大きなばらつきがありました。 特に"Math Girls Manga Volume I"にはご応募が一通もありませんでしたので、 これは次回何かあったときのための(?)プレゼントにさせていただこうと思います。

当選した4名の方には2013年10月27日(月)の午前中にメールを送っております。 メールボックスをご確認いただき、当選した方は折り返し、送付先をご連絡ください。 よろしくお願いいたします。

 * * *

突然ですが、今回から結城メルマガでの新連載、

 ◆「数学ガールの特別授業」
 http://www.hyuki.com/girl/lesson.html

を始めたいと思います。 これは結城が先日高等学校で高校二年生向けに行った授業をベースにした読み物です。 リアルな数学ボーイ&数学ガールへ向けて、

 「フィボナッチ数列の表現」

と題した授業を行った様子をお届けいたします。

「教えるときの心がけ」などという文章を書いているわりには、 結城が高校生に実際に教えるのは今回が初めての経験です。 どたばたしながらも楽しい時を過ごすことができました。 どうぞお読みください。

直前に体調を崩して寝込んだため、 ぎりぎりまでキャンセルするかどうか迷いに迷ったのですが、 リアル高校生に教えるという貴重な機会を無駄にはできず、 何とか無事実施することができました。 たいへんほっとしています。

 * * *

別の話題。

ネットである方から教えていただいたすてきなページをご紹介。

お母さんが、くーくー寝ている自分の赤ちゃんを素材に、夢の大冒険を作ったというお話。 まずは以下のブログの写真を見てくださいな。

 ◆Creative Mom Turns Her Baby’s Naptime Into Dream Adventures (Updated)
 http://www.boredpanda.org/wengenn-in-wonderland-sioin-queenie-liao/

 ・はしごに昇って星を集める赤ちゃん(※本人、眠ってます)。
 ・ピアノの上でダンスを踊る赤ちゃん(※本人、眠ってます)。
 ・ピエロになって象と空中ブランコに興じる赤ちゃん(※本人、眠ってます)。

赤ちゃんの周りの舞台を整え、小道具を揃え、眠っている赤ちゃんをそっと配置。

こんな写真を見ていると幸せな気持ちでいっぱいになり、 思わずにこにこしちゃいますね。

 * * *

別の話。

先日、ネットで「図書館」の話題が出たときに、

 結城さんは自分の書いた本が図書館でただで読まれてしまうことを
 迷惑だと思いませんか?

といった内容の質問を受けたことがあります。 それに対する結城の答えは、

 まったく思いません!
 結城浩の本はどんどん図書館で読んでください!
 そして手元に置いて繰り返し読みたくなったらぜひお買い求めください!

というものでした。

読者さんが本を買ってくださることによって結城の生活は成り立っています。 確かに、誰も結城の本を買わなくなってしまったら私はたいへん困ってしまいます。

でも、だからといって「私の本を図書館で読まれるのは迷惑」とはまったく思いません。 なぜなら、すぐに買うことはなくても、図書館で結城の本を読むことによって、

 結城の本としあわせな出会いをする読者さん

がたくさんいらっしゃるからです。

 いきなりお金を出して買う勇気はないけれど、どんな本か読んでみたい

と思う読者さんにとって(そして結城にとって)図書館はたいへんありがたい施設です。

そして、もしも結城の本がたいへん魅力的で「手元に置いて繰り返し読みたい」 「中に書き込んだり、付箋を貼って『自分の本』にしたい」という人は、 いつか書店で購入してくださるでしょう。

著者としての結城は、読者さんにそのように感じていただけるような 魅力的な本を作ることに精力を注ぐべきだと思うのです。 図書館で読むことを迷惑だと感じるというのは、 何だか少し違う……私はそう思います。

ただし、そのように感じる著者さんがいらっしゃるのは理解できますし、 その著者さんの気持ちを否定したり責めたりするつもりはありません。 私はただ、自分個人としての考えを書いているだけです。

図書館であれ何であれ、読者さんは結城の書いた本としあわせな出会いをしてほしい。 結城が良い本を書き続けていれば、読者さんは(出会ったきっかけが図書館だとしても) 結城の本をいつか買ってくださると思うし、「あれは良い本」だと思ってくだされば、 たとえご本人が買わなくても、他の方に紹介いただけると素朴に信じているのです。

……といった話は、BOOKSCANさんのインタビューでも少しお話ししました。

 ◆結城浩 - BOOKSCAN × 著者インタビュー
 http://www.bookscan.co.jp/interview2.php?iid=257

 * * *

結城は普段の書籍執筆ではLaTeX(らてっく、らてふ)という組版ソフトを使っています。 この結城メルマガでも、毎回のようにPDFのコンテンツをお送りしていますが、 あのPDFファイルはすべてLaTeXで生成したものです。

そのLaTeXの定番入門書の最新版が出ました。

 ◆[改訂第6版] LaTeX2ε美文書作成入門
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4774160458/hyuki-22/

結城の家にはこの「美文書」のいろんな版が転がっています。 私の長男はこの第4版と第5版を読んでLaTeXを覚えたと思います。

この「美文書」は三年ごとに改訂版が出ているそうで、 たいへんなロングセラーということですね。 以前も書いたかもしれませんが、 このLaTeXというシステム自体がたいへん長生きであることにも注目すべきでしょう。

実際、理数系の論文を書く際にはLaTeXを使うのが事実上の国際標準です。 ということは言い換えると、 このシステム自体がたとえば一社の都合でなくなったりする心配はほとんどないということ。 何しろ全世界に膨大なユーザがいるからです。 ですから結城は安心してLaTeXで書かれたテキストを生成できるのです。

そうそう、先日の高校での授業に使ったスライド(プレゼンテーション用のPDF)も、 このLaTeXで作りました。

「美文書」は定番入門書なのですが、 ちゃんとその都度その都度の最新情報が盛り込まれています。 どうしても自分の仕事に使う部分しか定着しないものですから、 三年に一度、こういう定番入門書で自分の知識をリフレッシュするのは 良いことだろうと思っています。

 * * *

別の話題。

iPad mini Retinaが出ました。

結城はiPad miniが出てからずっとiPad mini Retinaが出るのを待っていました。 iPad miniが出たとき、店頭で何度も何度も「うわ買いたい」という気持ちを抑えてきました。 手になじむ感覚はとてもよかったのですが、一点「画像が粗い」と感じたからです。

iPad miniを結城が使う目的はほぼ一つ。それは読書です。 いわゆる小説を読んだりするのもそうですが、 すでに自炊なども含めて数百冊あるPDFを参考書として随時参照したい。 そういう気持ちを持っています。

もちろんPCやMacでもPDFは読めるわけですが、 タブレットの距離感はコンピュータとはまた違うんですよね。 特に電車に乗ったときに大きくノートPCを広げるのにちょっと抵抗があります。

iPad miniを見て「画像が粗い」と感じたのは、 普段iPhoneのRetinaな画面を見慣れてたからだと思います。 そんな中、待ちに待ったiPad mini Retinaが出た!

ところが。

iPad Airという新しい製品が出て迷いが増えてしまいました。

うーん、iPad AirとiPad mini Retinaどちらにしようか!

迷う日々はまだ続きそうです。

 * * *

Mac OSがバージョンアップしたので、インストールしました。

 ◆OS X Installing.
 http://instagram.com/p/f0xxgejSoN/

 ◆OS X Installed.
 http://instagram.com/p/f06iJQDSlP/

夜中にOSをダウンロードし、朝方インストーラを走らせて小一時間で無事終了。 特にトラブルや問題は発生しませんでした。

OSをバージョンアップして、速くなったり機能がアップしたりという点はさておき、 結城が感心するのは「何も特別なことが起きず、 バージョンアップした日も昨日と同じように仕事が継続できる」という点ですね。

新しいOSになってすごい!のもいいんですが、 それより大事なのは、昨日の続きの仕事が問題なく進められるかという点。 その点で、今回のOS Xのバージョンアップはすばらしいと思いました。

 * * *

次の話題。

結城は毎朝の「ひげそりタイム」で長い本を少しずつ読んでいます。

最近の「ひげそりタイム」での読書は Donald Knuth先生の "3:16 Bible Texts Illuminated"という本です。

 ◆3:16 Bible Texts Illuminated
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0895792524/hyuki-22/

これはTeXを作ったコンピュータ科学者+数学者のKnuth先生が書いた聖書の本です。 キリスト教の聖書というのは、創世記から黙示録まで66巻からなっています。 そのそれぞれの巻の「3章16節」にフォーカスを当てて読み込むという独特の本。

つまり、とても長い聖書に対して「ランダム・サンプリング」の手法を使って、 要約を試みているともいえるでしょう。

 ・各巻を1ページに要約
 ・その巻の3章16節を美しいカリグラフィーで表現
 ・その巻の3章16節を原典まで遡りつつ2ページで解説

という構成になっています。

結城は毎日4ページずつ(つまり聖書の1巻分)読みながら、 その形式と内容の両方を味わっています。 たくさんのインスピレーションが与えられますね。

ちなみに、聖書で最も有名な「ヨハネによる福音書3章16節」の美しいカリグラフィー(by Hermann Zapf)が、 Knuth先生のWebサイトから入手できます(PDF)。 以下のページの一番最後、Addendaと書かれた部分の下にある以下を参照してください。

 I am pleased to share this artwork by making the PostScript file john316.eps.gz (75140 bytes) freely available.
 (Also in Acrobat form.)

 ◆3:16 Bible Texts Illuminated (Don Knuth's Home Page)
 http://www-cs-faculty.stanford.edu/~uno/316.html

 * * *

お仕事の話。

現在結城は年末刊行予定の『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』の仕事をしています。 最近のイベントとしては、表紙の打ち合わせと入稿がありました。

現在は初校が印刷所から帰ってくるのを待っている状態です。 このへんのエピソードや裏話は、後ほど詳しく。

 * * *

さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。

今回のメインコンテンツは新連載の「数学ガールの特別授業」です。 あとは「本を書く心がけ」そして「Q&A」です。

それではどうぞお楽しみください!

目次

  • はじめに
  • 数学ガールの特別授業
  • 本を書く心がけ
  • Q&A - アウトラインエディタ
  • 次回予告 - 再発見の発想法
 

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