結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年9月24日 Vol.078
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
このあいだまで暑い暑いといっていたのがうそのように冷えてきました。 朝晩はほんとうに「寒い」と言えるくらいの日もありますね。 電車に乗っていてもマスクの人や咳き込む人も多く見かけたりします。 あなたはお元気ですか。
それはそれとして、空が澄み切ってとても気持ちの良い日があるのも事実。 ときおり、
「生きているってなんてすばらしいんだろう」
と言いたくなるときもあります。 秋晴れとはよく言ったものですね。 連休は特にどこに行くでもなく淡々と月曜日に仕事をしていましたけれども……
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刊行された講演集『数学ガールの誕生』の感想がぞくぞくと届いていて感謝です。 「数学ガール」シリーズのファンの方はもちろんのこと、 教育関係の方や、物書きをなさっている方にも読んでいただけているようでうれしいです。 サイン本が、都内に限らず北は北海道、南は福岡にも行ったようで、 ある読者さんからは、サイン本がある書店まで車を飛ばしましたという連絡をいただきました。 恐縮です……
『数学ガールの誕生』の講演のうち、一つは公立はこだて未来大学で行ったものですが、 招いてくださった高村教授からは、
「このような形で講演会の記録が保存されたことが夢のようです」
とのメッセージをいただきました。 こちらこそ夢のようで感謝、感謝です。
恥ずかしながらお招きいただく前は未来大学について何も知りませんでしたが、 キャンパス全体がまさに「未来」という感じであり、 空間をふんだんに使った学びの空間は何ともうらやましいものでしたね……
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別の話題。
CodeIQで公開していたナムドット問題は、この結城メルマガが配送される日(9/24)の 午前10時に締め切られます。おそらく200人くらいの挑戦者になるのではないかと思っています。 火曜日に集計を行い、 解説の文章と挑戦者のメッセージ抜粋をまとめて、 できるだけ早くフィードバックを返したいと思っています。
結城は夜眠るときよくCodeIQの問題を考えます。 目を閉じて、頭の中でデータ構造をいじるのはとても楽しいです。 わざと難しいデータ構造を頭の中に構築してそれを操作していると、 頭のスタックを消費するのか、あっという間にぐっすり眠れるんですよ!
CodeIQで、挑戦者の解答を読むのはとても楽しい仕事です。 結城の出題意図にぴったり沿って解答する方もいれば、 まったく違う発想ですばらしい解答をする方もいます。 解けなくてすごく悔しそうな感想を書いてくる方もいれば、 感想文はすばらしいのにケアレスミスで満点を逃す方もいます。 その何というかワイワイした感じを結城は楽しませてもらっています。
それにしても、プログラミングをする人の中には、 とてつもなく賢い方がたくさんいらっしゃいます。 自分と比べるのはおこがましいですが、 結城が必死に考えてやっと理解したような内容を、 一瞬で見抜いて解く人がたくさんいらっしゃるんですよね……
ともあれ、今回のナムドット問題にはどんな解答が寄せられるのでしょうか。 楽しみ楽しみ!
CodeIQには「ウチにこない?」という分類の問題があり、 それを解くと企業のエンジニアから声がかかるということです。 公式には約48%のエンジニアに声が掛かるということで、 たいへん現代的な就職(転職)活動形態の一つになっています。 「ソーシャル・リクルーティング」などという呼び名があるそうです。
まあ実際、企業さんから見れば 「プログラム(コード)がちゃんと書ける人」が欲しいわけですから、 コードを見て声を掛けるというシステムは意味のあることなのでしょう。
◆CodeIQ
https://codeiq.jp
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別の話題。
先日、財団法人「日本数学検定協会」さんからインタビューを受けました。 日本数学検定協会は、一松信先生が名誉会長になっておられ、 数学検定・算数検定・数学甲子園などを通じて数学・算数の普及につとめている財団法人です。
『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』の第二章にも書かれている 「答案は採点者へのメッセージ」というフレーズを鍵として、 記述式で答えるという意味について、数学を学ぶということについて、 採点者にうまく伝わる書き方について……といった内容のインタビューになりました。
インタビューは、 主に中学生・高校生へのメッセージを送るという形でまとめられると思います。 掲載されるのは協会が出している広報誌「マスマスプラス」(11月発行予定)です。 「マスマスプラス」は数学検定・算数検定の受検者さんや、 受検校の児童・生徒・職員さん向けに発行されている季刊誌です。
インタビュー掲載時には「数学ガール」関連の サイン本プレゼント企画(的な何か)があるはずです。
◆日本数学検定協会
http://www.su-gaku.net
協会の方とおしゃべりしていて、なるほどなと思ったことがあります。 数学検定協会では「数学甲子園」というイベントを開催しているのですが、 決勝では問題を参加者に作成してもらい、プレゼンテーションをしてもらうそうです。 見せ方で工夫が必要ということですね。
実際、スポーツの大会と違って、「数学で勝負」だと、 ヴィジュアル的に見せるのは難しいですからね。 協会の方によれば、
「もしも問題を解いている参加者の頭脳の動きを
可視化できたらすごいんですけどねー」
とのことでした。 それができたら確かにものすごいヴィジュアル効果がありそうですね!
ところで協会さんが行った結城のインタビュー。 結城は「クールにキメる」のにあこがれているのですが、 それがうまくいった試しがありません。 今回も、インタビューの最後には自分で盛り上がってしまって、 熱く語ってしまい、一人で涙ぐむほどでした。 「時間」について語るとき、結城はいつも涙ぐんでしまうんですよね。
問い「数学を学ぶ中高生にメッセージを」
結城「数学は時を越える言葉です。
本屋さんに行けばたくさんの数学書があります。
そこに書かれている言葉は、あなたがそれを開いて理解することを
何百年も待っていたんです…(涙涙涙)」
まったく、もう! 一人でなに泣いてんだよ! と自分に突っ込んでしまいます。
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さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。 今回のメインコンテンツは『数学文章作法』の続編の第一章です。 PDFでお送りしますので、ダウンロードしてお読みください。
それではどうぞお楽しみください!
目次
- はじめに
- 数学文章作法 - 読者の迷い(PDF)
- 本を書く心がけ - レビューをしてもらうということ
- 次回予告 - 再発見の発想法
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