結城浩の「コミュニケーションの心がけ」

Vol.062 結城浩/「数学ガールの誕生」(7)/レビューア/一日何文字書く?/

2013/06/04 07:00 投稿

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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年6月4日 Vol.062

はじめに - 一日何文字書く?

おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

梅雨に入ったそうですが、さわやかだったり、暑かったり、 急に寒くなったりと変化する毎日を感じています。

今週は水曜日に書籍『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』の初校読み合わせ があるので、ばたばたと忙しい毎日を送っています。脱稿したあと、 初校の読み合わせ、再校の読み合わせという区切りがありますので、 そこに合わせてきっちりと品質アップにつとめたいと思っているのです。 区切りをつけるというのは気持ちがいいですからね。

 * * *

先日、勝間和代さんのトークイベントのツイートまとめを読んでいました。

 「個人出版」を語り尽くす!
 『Amazon Kindleダイレクト出版 完全ガイド』出版記念トークイベントのまとめ、
 これが勝間無双か!
 http://togetter.com/li/511592

文章を書く身として興味深く読んだのは、インプットとアウトプットの部分です。 正確な文脈はわかりませんが、 文章がうまくなりたければ、一日に10万文字インプットして、一日に5千文字書く という話が出たようです。

この数字はなかなかリアルですごいなあと思いました。 インプット一日10万文字…結城はとうていこんな分量は行かないです。

アウトプットはどうかしら。 この結城メルマガはどのくらいあるか計算してみます。 この5月に配送した分の合計では…

 ・PDFとして配送したテキストは約18000文字
 ・PDFを除いたメール部分は約30000文字

合計すると、約48000文字。31で割ると約1548文字。 オーダーは合ってますが、一日に5000文字書くにはまだまだですね。

まあ数で追いつこうとするわけではありませんが、 なかなか刺激的な内容でした。

数字はさておき、一般論として、 文章を書くために「習うより慣れろ」の部分があるのは否めません。 とにかく何かを書き続けていることは大切です。 自分の頭で考えている状態と、 それを文章にした状態というのはまったく違います。 特に「人さまに読んでもらう文章」を書くことはたいへん勉強になります。

人間誰しも「いいとこみせたい」という気持ちがありますから、 あまりにも恥ずかしい文章は書きたくないですよね。 その仕組み(?)をうまく使うのは文章上達に良さそうです。

 * * *

ぜんぜん違う話ですが、子供の声を録音する話。

うちは男の子が二人います。 ちいさいときから知り合いに「子供は大きくなるのが早いよ〜」 と言われていたのですが、最近ほんとうにそれを実感しています。 子供が中学高校になっちゃうと、 あの愛らしかった子たちはどこへ……という気持ちになります。

もちろんいまでも愛らしいのですが、 幼稚園児や小学生の愛らしさとはまた違うんですよね。

いま小さなお子さんがいる方にお勧めなのが、子供の声を録音しておくこと。 ビデオは多くの方が撮っていると思うんですが、 「声」だけをきちんと録音することは意外に少ないと思います。 子供がお気に入りの本を朗読してもらったり、 「お父さん大好き!」と言わせたり(苦笑)した録音は、宝物です。

ビデオを撮るときにもちょっとコツがあります。 どこかにお出かけしたときや、 入学式卒業式のような特別なイベントでは多くの方がビデオを撮ると思いますが、 「日常生活」も撮っておくといいですよ。 ふだんのバタバタした生活、散らかっている部屋。 そういう「日常生活」こそ、あとで思い返したくなるんじゃないかな…… そんなふうに思っています。奥さんからは強い抵抗にあうんですが。

我が家のホームビデオは、すべてデジタルに切り替わりました。 以前8mmビデオで撮っていた磁気テープも、 DVDに移した後に再度リッピングして、単なるファイルになりました。 しょっちゅう見るわけではないけれど、たまに見る大切なファイルですので、 HDDとクラウドにバックアップを取っています。

ああいうビデオって見ていると、懐かしいという思いとともに、 ほのかな寂しさ、切なさを感じます。

どうしてでしょうね。

 * * *

結城は、自分が書いた本やWeb日記などをときどき読み返します。 むかし自分が書いた文章の中には、今ではもう書けないものもあります。 知識として書けないというよりも、文章として書けないものですね。

結城は文章を書くとき、読者のことを考えて書きます。 特に「ここまで説明すれば、読者はわかってくれる」という感覚を 大事にしています。 自分が持っている読者のイメージに合わせて書くわけですが、 そのイメージがむかしといまではずいぶん違っているようなのです。

むかしの文章の中には読者の読解力に頼って、 大きく跳躍している部分があります。 つまり、説明をざっくり省略して、 大づかみに先に進むような説明をしている部分ですね。

いまの自分がむかしの文章を読んでいると、その跳躍に驚くのです。 「おお、この説明を省略するのか!」という具合に。

その跳躍はどこから生まれるのか。 半分は読者を信頼していることから、 もう半分は自分の理解が狭いから生まれているようです。 その跳躍の結果として、若々しく勢いのある文章ができあがる。 これは(書いた自分にとっては)なかなか勉強になります。 むかしの若い時代の自分から文章を教えてもらっている感覚に近いですね。

家内は、自分の文章を読み返すのは好きじゃないそうです。 文章がへたというわけではないと結城は思うのですが「読み返すのは嫌」だそうです。 あなたはいかがですか。

 * * *

さて、それではそろそろ今回の結城メルマガに入りましょう。 先週予告した通り、今回も講演「数学ガールの誕生」をPDFにてお送りします。 今回は少し軽めの内容で《コミュニケーション》が話題になっています。

それから、Q&Aのコーナーでは結城が書く本の「レビューアさん」を 選ぶ方法についてのご質問がありましたのでそれにお返事しています。

では、今回もお楽しみください!

目次

  • はじめに - 一日何文字書く?
  • 本を書く心がけ - 講演「数学ガールの誕生」(7)
  • 本を書く心がけ - 紙での校正と電子メディアでの校正
  • Q&A - レビューアの決定方法は?
  • 次回予告 - 再発見の発想法
 

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