結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2020年10月27日 Vol.448
目次
- 学んだことのまとめ方 - 学ぶときの心がけ
- いつどのように数学の勉強をしたのか - 学ぶときの心がけ
- 今年関わった五個のこと(ナラティブ、音声入力、作業ログ、Hey、Substack)
- 大学生、恋愛で悩んだとき、どのように自分を見直すか
- プロキシー - 再発見の発想法
はじめに
結城浩です。
いつもご愛読ありがとうございます。
新刊の話。
『数学ガールの秘密ノート/確率の冒険』の再校ゲラを読み返しています。もうだいたい作業は終わっていて、あとは今週水曜日までに編集部へ修正を戻せば、私の手から離れることになります。
今回の本は、いつもよりも前倒しで推移した感覚があります(おっと、これはあくまで著者の主観であって、編集部では別の考えを持つかもしれませんが……)。本文脱稿までにはかなり難産な部分がありましたが、そこでよく練ったおかげで、初校・再校ともにいつもよりスムーズに進んだのかもしれません。
刊行は2020年11月。確率は現代社会で広く使われているものですが、数学で苦手意識を持っている人もたくさんいらっしゃるでしょう。そのような方にもお役に立つ本になったらうれしいなと思っています。
刊行までもう少し。応援よろしくお願いいたします!
◆『数学ガールの秘密ノート/確率の冒険』
https://note14.hyuki.net/
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時間を掛ける話。
プログラミングでも、文章書きでも、あるいはまた数学の勉強でも、「時間を掛ける」というのは本質的に重要だと思います。時間を掛ければいいというわけではありませんが、時間を掛けずに何かを身につけるというのは、ほとんど不可能じゃないかと思います(一部の天才を除く)。
昔から「好きこそものの上手なれ」といいますが、その背後には「好きなことには時間を惜しまず掛けるので上手になる」という理由がいかにもありそうです。
技能をどう身につけるかの大前提として、そのための時間の確保と維持という課題がある。そのように言い換えることもできるでしょう。
結城のところには、社会人の方から「数学を勉強し直したいがどうするか」や「プログラミングを身につけるコツは何か」という質問がやってきます。
それに対して結城はしばしば「まずはそのための時間を確保しましょう」とアドバイスします。社会人にとってはそこが非常に大きなネックになるからです。日々の仕事とは無関係な活動に対する時間を継続的に確保することは困難なものです。「おもしろさ」や「何の役に立つか」という情報は、大量の時間を掛けるために必要な要素かもしれません。同じことが「文章の上達」にもいえるでしょう。
私が知っている「プログラミングが上手い人」「文章を書くのが上手い人」のほとんどは、よく読み、よく書きます。仕事でプログラムを書いた後、自分の時間ができたらそこで自分のプログラムを書いていたりします。「いま書いているもの」をいつも持っています。
ここで大事なポイントの一つは、書くプランだけがあるのではなく、時間を使って実際に書いているという点です。仮に「いまはどんなものを書いていますか」と尋ねたら、高い確率で「いまはこれこれこういうものを書いています」と返事が来ることが想像できます。
新しいものを書く場合もありますし、いったん書いたものを直したり、読み返したり、気に掛かる部分を改良したり……たくさんの時間を掛けて書いています。そして必要に応じて自分が書いたものや人が書いたものを読み返す。そのために時間を使う。
時間を掛ければ済むわけじゃないし、方法論を考えずに闇雲に時間を掛けるのも良くありませんが、時間の継続的な確保はとにかく重要です。そして時間を掛けることで、多少の能力差は埋められるし、方法論の差もある程度までは埋められるのではないかと思います。
あなたにとって大切な活動は何ですか。そのために必要な時間はどのように確保しているでしょう。
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独学の話。
結城メルマガの読者さんの中には「独学」している方が少なからずいらっしゃいます。
つい先日刊行されたばかりの『独学大全』をご購入なさった方も多いのではないでしょうか。
もちろん結城も買いました。まだあちこちをパラパラ見ただけですけれど、これは確かに買って損のない一冊だと思います。
たとえば先ほど「時間を掛ける話」を書きましたが、この『独学大全』の第4章には「時間を確保する」という章がちゃんとありますね!そこでは「行動記録表」「グレー時間クレンジング」そして「ポモドーロ・テクニック」が紹介されています。
◆読書猿『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』
https://www.amazon.co.jp/dp/B08DR7YL5J/?tag=hyuki-22
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それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞごゆっくりお読みくださいね。
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