結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年1月30日 Vol.305
はじめに
結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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『プログラマの数学 第2版』の話。
先日、編集部から連絡がありました。 『プログラマの数学 第2版』の重版が決まったのです。 発売開始から十日足らずでの重版決定にびっくり! 読者さんの応援には心から感謝です! \重版出来!/
なお『プログラマの数学 第2版』の電子書籍版の方も、 現在編集部で準備中です。編集部からの情報によれば、
『プログラマの数学 第2版』の電子書籍は、
2018年2月上旬には配信される
とのことです。 いつもと同様に、試し読み版も準備中です。
応援よろしくお願いいたします!
◆『プログラマの数学 第2版』
http://www.hyuki.com/math/
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「数学ガールの秘密ノート」は中学一年生で読めるかという話。
質問
『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』では、 三平方の定理を既知としているので中学一年生には厳しそうです。
『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』は、 中学一年生でも読めるでしょうか。
回答
「数学ガール」シリーズでも、 「数学ガールの秘密ノート」シリーズでも同じですが、 執筆者である私の気持ちとしては次のように考えています。
「まったくわからない人はほとんどいない」けれど、 「すべてが初読でわかる人も少ない」ような難易度で書いています。
このシリーズに対して「数学的な内容がわかる/わからない」や、 「おもしろく感じる/感じない」は、人によります。 そしてそれは数学的な知識や理解や能力とは別の話だと思っています。
言われて読んでみたけど、さっぱりわからない。 数式の意味もわからない。 でも、読んでいるうちに「数学が好きになった」 という読者さんが少なからずいます。
逆に、数学のことがよくわかっている人で、 このシリーズのおもしろさがわからなくて、 一冊読んだだけで終わったという人もいます。 人それぞれなのです。
あなたの質問の「読めるでしょうか」にそのまま答えるなら、 「おそらく読めると思います」という返事になります。
でも、私は「読める/読めないをあまり気にしなくてもいいと思いますよ」 と言いたくなります。特に「読んで、わからないところがいくつかあっても、 気に病むことはないんですよ」と言いたいですね。
強制的に読ませるのは良くないと思いますし、 「中学○年生ならこのくらい読みこなせなくちゃダメ」 などとは考えないでほしいと願います。
このシリーズは もしも波長が合う人なら、 小学生でも大学生でも楽しく読み進めると思います。 波長が合わない人は、いまいちピンとこなくて、 読み進めないこともあるでしょう。 それは単なる「本との相性」ですから、 気に掛ける必要はありません。
著者としての親御さんへのオススメの態度は、
うちの子は数学ガールが好きになるかもしれないな。
もう少し大きくなったら、チラッと見せてみようかな。
さりげなくその辺に置いておこうかな。
のような感じですね。 「好きになるかもしれない」や「いつ見せようか」 という判断は、 お子さんのことをよく見ている親御さんにしかできませんけれど。
著者としてやってほしくないことは、 お子さんに義務的に強制的に読ませたり、 放り投げて読まない子を叱ったり馬鹿にしたりすることです。 数学ガールを好きになることと、 数学が好きになることはまったく違いますし。
「数学ガール」シリーズや「数学ガールの秘密ノート」シリーズを通じて、 数学がますます好きになった人や、 嫌いだったのに好きになった人や、 学ぶことが好きになった人はたくさんいます。
数学が不得意なままで成績も上がらないけれど、 数学を好きになった人もいます。 もちろん、学ぶことが好きになった結果、 成績がよくなった人もいます。
「数学ガール」シリーズや「数学ガールの秘密ノート」シリーズは、 おおむねそのような感じの本なのです。
◆「数学ガール」って、どれから読めばいいの?
https://mm.hyuki.net/n/n08807eef9ef9
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「数学的思考力」を鍛える話。
質問
数学が好きで、学校の「数学研究部」に所属しています。
しかし、どんなに好きでどんなにがんばっても、 「数学的思考」や「数学的発想」ができません。
作文や英語の方は好きでもないのに得意のようです。
どうしたら、 数学の「好き」という気持ちに合うだけの 「数学的思考力」を鍛えられるでしょうか。
回答
こんにちは。
「数学が好き」なんて、とてもいいですね!
ところで、あなたのいう「数学的思考」というのは、 具体的にどういう意味でしょうか。
あなたは質問の中で「数学的思考」や「数学的発想」 ができないと書いていますが、 それは具体的に「何ができない」と言ってるのでしょうか。
いくつか列挙してみますね。
・計算ができない
・数式の変形が苦手
・計算や数式の変形に時間が掛かる
・方程式が解けない
・証明を読むことができない
・証明を思いつくことができない
・思いついた証明を書き表すことができない
・抽象的な概念がなかなか理解できない
・たくさんの定理や公式が覚えられない
・公式を覚えても適用ができない
・解法を適切なときに引き出せない
・そもそも、論理的な考え方ができない
・文章から数学的関係を取り出せない
・場合分けができない
いま思いつくまま列挙してみましたが、 もちろんこれで「数学的思考ができない」 ことを網羅しているわけではありませんし、 各項目をさらにブレークダウンすることもできるでしょう。
自分が学校にいた時代には、 クラスメートが解ける問題を自分が解けなかったり、 誰かがすばやく理解することを自分が理解できなかったり、 そういう経験が多々ありました。 あなたもおそらく、そのような経験をする出来事があり、 今回の質問を送ってくださったのだと想像します。
そういう「自分にはできない」経験をしたときには、
自分はいったい《何が》できなかったのか?
を注意深く考えることをお勧めします。
つまり、 「私には数学的思考力がないから問題が解けなかったのだ」 のような極端な抽象化はやめましょうということです。 そうではなく、自分が経験した出来事にもっと密着して、 自分が解けなかった理由をぐぐぐっと考えるのです。
極端な抽象化は無意味です。 簡単な例でいうと、計算ドリルでミスをしたときに、 「私には計算力がないからミスをしたのだ」 と考えても何の役にも立ちませんよね。
そうではなくて、自分のミスを注意深く観察して、 繰り上がりをミスするのか、数字を読み間違えるのか、 プラスマイナスの符号を間違えるのか、 という具体的な原因を確かめるでしょう。 その上で、同じミスを繰り返さないための練習をします。
この計算ミスの話を一般化すると、 あなたの場合への答えになるのはわかりますね。
「数学的思考力」と呼べるものは存在するでしょう。 でもそれは、非常に多くの構成要素から作られているはずです。 それは、ちょうど人間の筋肉のようなものです。 「筋力」を鍛えるために「筋トレしなくちゃ」と考えるのは、 悪いわけではありませんが、とても大ざっぱです。
筋肉はたくさんあるのですから、 どの筋肉の筋力を鍛えるかを考える必要があります。 「数学的思考力」についても、 自分が体験したことから、
・どんなことを考えればよかったのか、
・何を見落としたのか、
・単に何かを記憶すれば解決するのか、
・練習が必要なのか、
のように考えを進めることが大事ではないでしょうか。
「筋トレしなくちゃ」みたいに大ざっぱな話ではなく、 具体的な問題を通して、 少しずつ自分の思考力を鍛えるのです。
問題を解く力は問題を解くことで養われ、 証明を考える力は証明に取り組むことで養われます。 いろんな問題を解き、証明に取り組み、 そしてそこで得られた経験を自分の次の学びに生かすのです。
数をこなすことも必要ですが、 やみくもに数をこなすだけではなく、 問題を考え、解き、うまく行っても行かなくてもしっかり振り返る。 その繰り返しが肝心だと思います。
以上のような態度は「数学的思考力」に留まらず、 もっと広い「思考力」を鍛える方法ともいえるでしょう。
あなたには大きな武器があります。
それは「数学が好き」という気持ちです。
あなたが学んでいく上で「数学が好き」 という気持ちは、とてつもなく大きな力となるはずです。
少しずつ、たゆみなく、学んでいきましょうね!
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それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
- はじめに
- 数学を楽しむということ
- 新規性のある研究をするにはどうすればいいか
- Nintendo Labo(ニンテンドーラボ) 初公開映像の魅力
- おわりに
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