結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年6月28日 Vol.222
はじめに
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【ブロマガメンテナンス】
2016年7月12日(火) AM 6:00 〜 AM 11:00
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まぐまぐ!で購読なさっている方には影響はありません。
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もう一つお知らせです。
「SBクリエイティブ晴耕雨読キャンペーン」が6月末まで行われています。 結城浩の以下の二冊(電子書籍)が半額セール中ですので、 よろしければどうぞ!
◆数学ガールの秘密ノート/式とグラフ(Kindle版)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00L0PDMIQ/hyuki-22/
◆数学ガールの誕生 理想の数学対話を求めて(Kindle版)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00NAQA33A/hyuki-22/
『数学ガールの誕生』というのは結城の講演集です。 公立はこだて未来大学での講演全文と、 大学の先生や研究者さんとのディスカッションを収録しています。
上記二冊はKindle版以外の電子書籍も半額です。 リンクは以下のページに並べてありますので、 他の電書ストアをお使いでしたら、こちらからどうぞ。
◆「式とグラフ」「数学ガールの誕生」が半額セールです!(結城浩の日記)
http://bit.ly/293hYjx
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『若き科学者へ』の話。
先日もアナウンスしましたが、ノーベル生理学・医学賞を受賞した科学者メダワーの書籍、 『若き科学者へ』が新版となり、みすず書房から刊行されます。本書には、 若い科学者ならびに科学者を志す若者へ向けてのアドバイスが書かれています。 本書巻末に結城が「新版への解説」を書いています。
最近、科学の世界でも「倫理性」が話題になる事件がよく起きます。 本書には科学者の倫理性に関わる部分も実践的に扱われています。
アマゾンでも予約が始まっているようですので、 よろしければどうぞ!
◆『若き科学者へ 新版』(ピーター・B・メダワー)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4622085305/hyam-22/
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ミニマリズムの話。
こんな記事を見かけました。
◆日本のレゴ、美しい「杉のつみき」
http://wired.jp/2016/01/22/japans-minimalist-lego/
隈研吾(くま・けんご)建築都市設計事務所がデザインした 「木のつみき」です。レゴブロックのように組み合わせて立体を作ったり、 小さな建築物を作ったりすることができます。
つみきといっても単純な直方体ではなく、切れ込みの入ったV字型で、 おそらく角度も絶妙に計算されているのだろうと思います。
お高いので購入はちょっと…なのですが、 基本的なブロックをデザインして、 それを組み合わせると無限のものが作り出される、 そういう発想は大好きです。 ゲームでいえば、オセロのようなものでしょうか。
子供の頃、コンピュータが好きで本をいろいろ読んでいました。 その中に、CPUの命令セットを決める本があって、 それを夢中になって読んだのを覚えています。 基本となる命令セットが「たったこれだけ」なのに、 自由にどんな計算でもできる、 という事実にめまいがするほど感動しました (当時はチューリング完全という言葉は知りませんでしたが)。
数学でもそういう場面がよくありますね。 いくつかの公理を使うことを認めるだけで、 複雑で豊かな世界がそこから生まれ出す感動の場面です。
『数学ガール/フェルマーの最終定理』でテトラちゃんが、 「要素数が2個の群は必ずアーベル群になること」や、 「要素数が素数の剰余環は必ず体になること」に感動します。 あの感動には結城も非常に共感しますね。
その感動というのは、ひとことでいえば、
こんなに複雑な・美しい・豊かなものが、
こんなに単純なものから生まれてくるのか!
とそういう感動だと思います。
そしてその感動を契機として、進む道は二つあります。
・もっと他に豊かさを生み出すものはないか
・もっと複雑で豊かなものを作れないか
という二つです。 この二つはもちろん排他的なものではありません。
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アプリの話。
結城はiPhoneでもMacでも、 新しいアプリやサービスを使ってみるのが大好きです。
たとえばiPhoneのEvernote関連アプリでも何十個も試しました (というのは少し大げさかな)。無料・有料を問わず、 自分の仕事によい影響を与えるものを探しています。
そんなふうに多数のアプリを試していますが、 ずっと使い続けるものはめったにありません。 それはそうですよね。 使い慣れているEvernoteアプリがあるのに、 よっぽどの優位性や特徴がなければ、 他のアプリに乗り換えることはありません。
最近「どういうアプリなら乗り換えるかな」と考えました。 まず思いつくのは、
デフォルトが大事
ということです。デフォルト、 つまり初心者がそのアプリを使い始めるときの設定です。 デフォルトの設定は、 使い始めたときのインプレッションを決めます。 使い始めたときに「使いにくそう」や「わかりにくい」 と感じさせるのはよくありません(当然ですね)。
アプリ作成者側は、 「設定を自分好みにすれば使いやすくなるのに」 といいたくなるかもしれませんが、 使用者の側にしてみれば、 正直「そこまでの義理はない」わけです。 また、設定項目がたくさんあふれていると、 それだけでいやになる場合もあります。 その意味では、
設定項目に何を提示するかも大事
といえますね。アプリを使っていて、
・けっこう使いやすいな……
(デフォルトがよい)
・ここさえ調整できたらいいのにな……お、できるじゃん!
(設定項目がよい)
アプリ使い始めの段階でこういう体験をすると、 そのアプリへの期待感や信頼度が高まるように思います。
ちなみに結城が現在おもに使っているEvernoteのiPhoneアプリは、
・Evernote純正アプリ
・SmartEver
・TagEver,MoveEver
の三種類です。
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予算消化の話。
以前から不思議に思っていることです。 年度末になると、あちこちの組織では「予算消化のための出費」を行うと聞きます。 つまり、年度初めに確保した予算が思ったよりも余ったとき、 それを特に必要でもない活動に振り向けて使ってしまうという行動のことです。
それは、なぜだろうとよく思います。
いや、通りいっぺんの答えは私もわかります。 予算が消化できず、余ってしまったら、その部署は次期予算を減らされる。 なので予算を減らされたくない部署は使い切ろうとする。 そういうロジックがあることはわかります。
でも、どうも納得がいかないのです。
実際、予算が消化できなかったということは、 それだけの予算は要らなかったわけですよね。 じゃあ、なぜ予算を減らされるのがいやなんだろう。
予算を闇雲に確保したいと思うのは、なぜだろう。 自分の権限を拡大したいから? 大きな顔をしたいから? やりたいことができなくなるから? あるいはまた、 不測の事態に備える余裕がなくなるから?
個人で仕事をしていると、 「予算が消化できないから何かを買わなくちゃまずい」 という方向には考えが進みません。 それは、組織で仕事をしているわけではないから、なのでしょうかね。
確かに、個人で仕事をする場合でも、 自分の仕事を確保し、生きていくための努力はしています。 営業努力というのは、組織でいえば予算確保と似ているようなもの。 そこは同じだと思います。
よくわからないのは、組織における予算消化(といういわば無駄)は、 個人で仕事をしているときにはまったくないのかな、ということ。 組織で予算消化をすることが当然と思われているように、 個人で仕事をしている自分にもそういう盲点があるのでしょうかね。
気になっているけれど、答えは特にありません。
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新刊執筆の話。
秋に刊行予定の「やさしい統計」の本を書いています。 「数学ガールの秘密ノート」シリーズ第8弾となる、 『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』です。
先日は、第1章本文をレビューアさんに送信しました。 ほんとうは先週末に第2章も送信する予定だったのですが、 執筆進行上の都合で、もう少し先になりそうです。
「やさしい統計」をWeb連載していたのは、 ちょうど一年前、初めてニューヨークに行ったころですね。 旅行のばたばたの中でちゃんとWeb連載が継続できるのか、 どきどきしていたのを思い出します。
(旅行に行く前に書き溜めておけばよかったではないか、 という正論はあります。それは確かに正論ですが、 いえ、その、正論です)
Web連載を書籍化するときには、 Web連載のときとほぼ同じ内容で書籍化できる章と、 構成を大変更しなくてはいけない章とがあります。 Web連載のように毎週届けるものと、 書籍のようにひとまとまりでぜんぶが届くものとでは、 構成が変わるのは当然のことですからね。
そして、その構成を変更するのはとても難しい。なぜかというと、 Web連載の時点でそれなりにまとまっているからです。 再構成するためには、その「まとまり」をいったん壊さなければいけない。 タンパク質をアミノ酸に分解して、 別のタンパク質を作りなおすようなものです (これは適切な比喩なんだろうか)。
まとまりを壊すのは勇気が要ります。 でも、しっかりと壊さないと再構成が中途半端になってしまう。 やるなら、バッサリです。 なので、判断がとても難しいですね。
そのときに書き手は「判断基準」を問われることになります (問われるといっても、自分自身で問うわけですが)。 つまり、
・いまのままでは、どこがなぜまずいのか。
・再構成によって、そのまずさは改善するのか。
・再構成によって、別のまずさは発生しないのか。
そのような問いかけにしっかり答えなくてはいけない (答えるといっても、自分自身に答えるわけです)。
その自問自答のプロセスというのは、 煎じ詰めれば、
・この本は、どういう本なのか。
という問いへの解答を探すプロセスです。
・この本は、どういう本であり、
・誰が読む本であり、
・その目的達成のためにどう構成するのか。
それへの解答を探すのは著者の仕事です。 そしてその解答は、著者が読者に説明して回るものではなく、 著者が書く「本そのもの」によって描かなければなりません。
この本の読者が、読み終えたときに、
ああ、なるほど!
この本を通して私はこういうことを知った。
こういう知見を得、こういう体験をした。
と実感してもらうことが大事。
そんなことを思いつつ、 毎日こつこつと言葉を並べる。
それが、著者の日常なのです。
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では、今週の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
- はじめに
- あふれでる中から選ぶ - 文章を書く心がけ
- フラグメントと業務分析 - 本を書く心がけ
- 数学の問題を出す楽しみ
- おわりに
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